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広報誌「ほうてらす」インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.7 冬号  インタビュー

聞き手 法テラス理事 篠塚 英子

夏樹 静子さんのインタビュー風景
就職経験がないから あえて「社会派」作家に
推理小説を書くには調べることがたくさんありますよね。お子様もいらしてたいへんでしたでしょう。
夏樹
それで子どもが小さいときは子どもを題材にした話ばかり書いていました。当時の女流作家は、奔放に生きる自由な女性を書く方が多かったので、福岡在住の2児の母が育児の話をミステリーで書くと珍しがられたんですね。雑誌などからどんどん注文がきて、書くことが何より好きでしたから、子育ての合間を縫って寸暇を惜しんで書いていました。
その後は社会問題を扱う作品が増えますね。
夏樹
子どもの話を3年くらい書いたら、もう種が尽きちゃって。私は大学を出るときには結婚が決まっていたので、就職の経験が全くない。だから社会勉強のためにも、意図的に「社会派」になろうと思って、企業のことを聞きに行ったんです。
取材に行かれたんですか。
夏樹
そう。何も知らないから飛び込みで。初めは水をかけられるように追い返されましたよ。そのうちに出版社の方が企業を紹介してくれ、取材ができるようになりました。例えば生命保険会社が舞台の話も書きましたが、生保がどんなものかも知らない。それが3時間も話を聞くと、本社ビルも違って見えてくる。
他にはどんな分野を取材されたのですか。
夏樹
スーパー業界や航空業界、鉱山や人口宝石の関係などいろいろです。自分が何も知らないから聞くことすべてが新鮮でおもしろい。自分が啓蒙される楽しさというのでしょうか。その一方でミステリーを書くと、どうしても法律が絡んできます。それで六法全書を読むと、法律ってこんなにおもしろいものだったのかと。なんで自分は法律家にならなかったんだろうとさえ思いましたね。
その夢を作品で弁護士・朝吹里矢子や検事・霞夕子に託されたと。それらの作品では法律関係のことをかなり詳しく書かれていますが、不明な点を聞ける親しい方がいらっしゃるのですか。
夏樹
朝吹里矢子を書いたときから、そのためだけの顧問弁護士をお願いしています。その後、検事ものを書き始めて東京地検の検事の方と知り合うことができました。そのお一人が福岡地検に転勤されて、私の本をよく読んでくださっている方だったので、いろいろ教えてくれました。『量刑』という作品で裁判官の内面を書こうと思ったときには福岡地裁の部長さんを紹介してもらいました。裁判官なんて別世界の人のように思っていたのですが、その方はとてもフランクにいろいろ教えてくださいました。今は法律が関係する作品の大半はその方に見ていただいています。
裁判員制度の模擬裁判で量刑の難しさを実感
今福岡にお住まいで、裁判所関係のいろいろなお仕事もされていると伺いました。
夏樹
最初は「福岡地方裁判所委員会」ですね。2003年に制度がスタートして2期4年やらせていただきました。それが終わるころに受けたのが最高裁判所の「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」です。
またずいぶん難しそうな名前の委員会。
夏樹
私も最初は意味がわかりませんでしたね。下級裁判所って何だろうって聞いたら、最高裁判所以外は全部、高等裁判所も下級裁判所なんですね。
すると、下級裁判所の裁判官として指名された方々が適切かどうか判断する委員会ですね。
夏樹
裁判官は10年の節目ごとに審査されます。もう一つは弁護士任官、つまり弁護士が裁判官になるときにその方を審査する役目もあります。
人を評価するというのは重い仕事ですよね。
夏樹
そうなんですよね。以前は最高裁の中だけでやっていたことを、司法改革の一環として民意を反映させようということらしいです。
2006年には福岡地裁で開かれた市民参加による裁判員制度の模擬裁判にも参加されたとか。
夏樹
福岡では最初の模擬裁判でしたね。そのときに先ほどお話した地裁委員会の委員をしていたので、そのご縁で参加しました。
新聞報道によると、「いい制度ではあるけれど、量刑の判断は専門家に任せようかなという気持ちです」とコメントされていましたが。
夏樹
新聞にはそうありましたね。でも、私が言ったのは量刑を全部専門家に任せようという意味ではないんです。「強盗殺人は死刑」というように極刑レベルの事件であれば、小説にも出てくるのでだいたいわかりますよね。ところが模擬裁判で扱うのは殺人未遂とか傷害致死のような事件なので、そうなると上限も下限もわからない。まず、それを教えてもらわないと判断のしようがないという話をしました。その幅があって、そのなかで情状はこのくらいとか、計画性があるからこのくらい加重してとか判断ができると思うんです。
今は模擬裁判も検討を重ねて、いくらか基準もわかるようになってきたようですね。それでも裁判官が考える量刑が自分で考えたものとずいぶん違うので、判事さんに聞いたら「厳密な基準はなく、判例を参考に」とのことでした。
法テラスの知名度アップには裁判員制度の周知も参考に
私たち法テラスもようやく3年目。東京の新聞でさえ何をやっているかわからないと批判されることもありますが、福岡ではいかがですか。
夏樹
同様に知られていないでしょうね。すごくいい制度だと思うんですよ。皆さん、知ったらすぐに電話しますよ。安心して相談できるし、場合によっては弁護士さんも紹介してくれる。弁護士なんか、自分で探してもどんな人かわかりませんし、料金が高いって意識もありますからね。
知名度を上げていくことが今の課題です。
夏樹
私が地裁委員会に参加していたころ、よく議題に上ったのが裁判員制度をどうやって周知させるかということでした。マンガにしてもらって当たればいいとか、裁判所の上に大きな看板をつけろとか、いろいろ考えましたよ。今、裁判員制度は誰でも知っていますよね。結局いちばん効果的だったのは新聞が書いてくれたことですね。
やはりマスコミの力は大きいですね。
夏樹
新聞に大きな広告を出されたりしていますよね。でも広告は意外に見られていないんですよ。やっぱり記事にしてもらえるといいんですけどね。法テラスを利用してこんないいことがあったとか、困った人がこうやって救われたとか。
法テラスがもう少し有名になったら、夏樹さんにはぜひ法テラスを題材にした壮大な小説を書いていただければと思います。今日はお時間をいただき、ありがとうござました。

夏樹 静子さん

東京都出身。
慶応大学在学中に書いた作品が江戸川乱歩賞候補に。1970年、『天使が消えていく』が再び江戸川乱歩賞候補になり、作家デビュー。
1973年には『蒸発』で日本推理作家協会賞を受賞。代表作には、テレビドラマ化された「女検事・霞夕子」シリーズや「女弁護士・朝吹里矢子」シリーズ、映画化された『Wの悲劇』など。ミステリーの枠を越えた社会派作家として活躍中。2008年10月、日本司法支援センター顧問に就任。
ゲスト:夏樹 静子さん


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