ホーム > 法テラス概要 > 刊行物 > 広報誌「ほうてらす」インタビューバックナンバー一覧 > 広報誌「ほうてらす」インタビュー 夏号

広報誌「ほうてらす」インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.9 夏号  インタビュー

聞き手 法テラス理事 草野 満代

北村 晴男さんのインタビュー風景
法解釈の多様さを知らしめ 法を身近にしたテレビ出演
息子さん、プロゴルファーだそうですね。
北村
プロ宣言して1年、今年は1年限りのライセンスで試合に出ています。私はハーフで4・5ハンディをもらって真剣勝負しながら、ショットを教わっています。
息子さんは高校球児で甲子園に行かれましたよね。北村先生も元高校球児で、大のゴルフ好き。息子さんがお父さんの好きなことをやられているなんて幸せですね。
北村
幸せですね。最初は先輩弁護士に怒られたんですよ。「息子がゴルファーになるなんて言ったら止めるのが親の仕事だろう」って(笑)。
こうしてお話させていただくと、テレビの印象と全然違いますね。こちらが本当の姿でしょうけど。
北村
どちらも本当です。
テレビでは「笑わない弁護士」と言われていますけど。
北村
私の実感では、『行列のできる法律相談所』に出た弁護士のなかで、私が一番明るいと思っていますよ。
『行列』は何年になりますか。
北村
レギュラー番組になったのが2002年ですから、丸8年です。
弁護士さんがバラエティ番組に出るようになったこの8年間の功績はなんだと思われますか。
北村
弁護士仲間によく言われるのは、法律家でも一人ひとり意見が違うということを一般の人に知らしめてくれた、ということですね。
たしかに、一つのテーマで4人の弁護士の判断がこも分かれるのかと、素人としては驚きでした。
北村
法律は一般論で、事実は具体的だから、当てはめたときに多少ズレがでてきます。社会が複雑になっていますから、すべての具体的な現象について法律には書けないんです。
もう一点、法律、あるいは法曹の世界を身近にしてくれたことも大きな功績だと思います。
北村
それは一般の方に言われます。
法テラスに相談に来られる人のなかにも、緊張で手が震えて自分の名前を書けない人がいるのです。それだけ法曹界はハードルが高いんですよ。それを身近にしてくださいました。
自衛隊違憲判決で知った法律家の社会的な影響力
そもそも、弁護士になろうと思われたのはどうしてですか。
北村
自分の性格では、組織ではやっていけないだろうと思ったんです。ものの良し悪しとか正義とかをものすごく真剣に考えるタイプで、そのうえ我が強いので会社に入っても上司とケンカしてすぐに辞めることになるだろう。自分はどこでも生きていけないんじゃないかと悩みました。
会社に入れば、気に入らない上司もいますからね。
北村
でも、いきなり社長にはなれない。どう生きていけばいいのだろう。そんなときに、衝撃的な事件がありました。高校2年のとき、札幌地裁で自衛隊の違憲判決が出たんです。判決自体より、一人の裁判官が書いた判決でこれだけのニュースになるということに驚きました。
社会を変えられる仕事だと。
北村
少なくとも議論になる。しかも、少年の眼から見ると、血縁も人脈も金もいらない。ただ勉強だけして試験に合格すればなれる。これは自分に向いているなと思いました。自分では頭がいいと思っていましたから。
資料には高校の成績はよくなかったと書いてありましたけど。
北村
中学までは頭がよかった(笑)。野球をやめてから勉強すれば十分に間に合うと思っていました。
それから一浪して早稲田大学法学部に入学。司法試験を目指されるわけですけど、生活費を自分で稼ぎながらですよね。
北村
父親には大学を出るまでは面倒を見るけど、卒業後は援助しないと言われましたが、大学出てすぐに司法試験に受かって弁護士になるのはさすがにムリ。大学を卒業したとたん、収入がゼロになる。だから、大学2年から塾を始めたんです。
何年くらいそういう生活をしながら勉強されたんですか。
北村
司法試験は結局8回受けましたね。2年間は短答式試験で落ち、3年目から論文まで行けるようになり、30歳でやっと合格しました。
その間にご結婚されてお子さんも生まれて・・・。家族を抱えながら勉強なんて、ドラマみたい。
北村
こればかりはしょうがない。
試験に受かり、法律事務所に入られ、3年で独立。早いですよね。
北村
早い方でしょうね。私は気が短いんですよ。ボスが個性的だったこともあって、かなりぶつかって。独立してからは順調ですよ。
裁判員に求められるのは法律より事実を認める常識
この5月から裁判員制度がスタートしましたが、北村先生はどのようにお考えですか。
北村
何としても定着してほしいと、心底思っています。
制度に反対する声も根強くあって、素人に裁判なんてできるはずがない、これまで専門家しかやってこなかった領域に入っていくのはムリという主張もあります。
北村
裁判で裁判員が行うのは“事実認定”で、これは普通に社会で生きている人であれば誰でもできます。たとえば、セールスマンが車を売ろうとしたら、相手の気持ちを考え、何に興味があるのかと、考え方とか行動を分析している。裁判も同じです。証拠を見て、容疑者が何を考えてどう行動したのかを推測すればいい。そこには法律なんて関係ない。論理的に説明できなくても、容疑に疑問を提示することはできるはずです。
たぶん実際の評議の場ではそういうやり取りになるんでしょうね。
北村
もちろん、とんちんかんな疑問も出てくると思いますよ。その人の社会経験が限られていることもあるから。でも、それを言ったら裁判官も同じなんです。誰もがみんな限られた経験をしている。そういう経験を議論の中で合わせて、修正していくことが大切なんです。
事実認定さえできれば裁判員としては充分だと。
北村
充分です。法律を知らなくてもまったく問題ないです。
そう言われると安心します。日本の社会が独特なのかもしれませんが、市民意識が希薄な文化、社会ですよね。だから裁判員制度でも時間がとられる、わずらわしいという抵抗感が強いように思います。
北村
それは当然だと思います。しかし、ことの本質は、自分たちの社会、自分たちの自由は自分たちで守るということなんですよ。
そうですよね。
北村
裁判というのは、冤罪の人を救い出すという側面があります。裁判がなければ警察が捕まえて即処罰ですから。で、そのような権力から身を守るのは本来、一般市民がやるべき仕事。「税金を払っているんだから裁判官がやればいい」という気持ちもわかりますが、国まかせでは私たちの自由は守られないんです。
裁判員制度が始まったことで、そういうことに気付くきっかけになるでしょうね。本日はありがとうございました。

北村 晴男さん

1956年、長野県生まれ。
早稲田大学卒業後、86年に司法試験合格。92年に独立して北村法律事務所(現・弁護士法人北村・加藤・佐野法律事務所)設立。
保険法、交通事故、債権回収、医療過誤などの一般民事が専門。日本テレビ系『行列のできる法律相談所』にレギュラー出演中。まじめに熱く語る姿で人気を博している。
ゲスト:北村 晴男さん


このページに関するアンケート

Q1:このページの情報は役に立ちましたか?

Q2:このページの情報は見つけやすかったですか?

Q3:ご意見があればお聞かせください。

[お願い]
寄せられた個別のご質問等についてはお答えいたしかねます。従って、個人情報は入力しないでください。