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広報誌「ほうてらす」インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.16 春号  インタビュー

優しさの時代のはじまり、日本も捨てたものじゃない。

聞き手 法テラス理事・草野満代

歌手・俳優 美輪明宏さんのインタビュー風景
「冬のソナタ」ブームは時代の変化の象徴
草野
今日はお忙しいところ時間をいただいて有難うございます。本当に幸せです。
美輪
あなたこそ私のためにお気の毒ね。私と理事長(当時)の寺井さんが同じ長崎出身で古くからの付き合いということがあって駆り出されるなんて。
草野
早速ですが、今の日本は不況からなかなか脱出出来ず、未来を描けない中で沈うつな空気に覆われたままです。美輪さんご自身はどう受け止めていらっしゃいますか。
美輪
誤解されちゃ困りますが、日本も捨てたものじゃないなと思ってきています。私はメディアに踊らされませんのでね。メディアは、人の不幸は蜜の味で、とにかくマイナスの記事を大きく書き立てて騒げば視聴率も伸びて売り上げも上がると錯覚を起こしてネガティブなことばかり強調しているんです。でも、最近はそういう時代じゃなくなった。一人ひとりが自由に生きられる優しさの時代がはじまったのに、そのことに気付こうとしない。
草野
マスコミの情報を見た方も読んだ方も、そのたびに嫌な気持ちにさせられるということの繰り返しですね。
美輪
タイトルを見ただけで胸が悪くなるようなものに、みんなうんざりしているんですよ。現実がそうだから疲れ果てています。それで、雑誌が売れないとか言うけどニーズと合っていないんだから当たり前ですよ。以前、松下幸之助さんが「うちはお客様が今何を必要としていらっしゃるかを考え提供しています。欲しがっているものを作るから売れるに決まっているんです。」とおっしゃっておられた。自分がいくら良しと思っても、ニーズを捉えるという方がとても大切。
草野
本当にそうです。今のニーズはどこにあるとお考えですか。
美輪
まがまがしくない優しいものをみんな求めていると思いますよ。だって、草野さんもよくご存知だと思うけど、NHKで、それもBSの真夜中で、韓国のものといった当たらない条件が全部そろった「冬のソナタ」があれだけのブームになったでしょう。それだけ待たれていたということなんですよ。分析すると、美しい男女、色彩の美しさ、静かなメロディックなきれいな音楽とかね。攻撃的ではないんです、すべてが正統派。今年の斎藤佑樹フィーバーもそこから始まっているわけですよ。
絶望するか、希望を持つかは見方次第
草野
今日、実を言うと、この世の中を嘆くというお話を伺えるのではないかと思っていました。10人のうち9人ぐらいは悲観論者じゃないけど、マイナスの方に捉えがちです。
美輪
それは残念でした(笑)。日本人の95%は悲観論者なんですって。でも、私は常にプラス・マイナスを平等に秤のように見ていますからね。今の日本は、半世紀以上積み重ねてきたごみ屋敷を片付けている最中。ここ数年で片付くわけないでしょう。白髪三千丈のスタンスで物事を見ると、むしろ昔に比べ今は極楽だなと思いますよ。
草野
極楽ですか?
美輪
そう、人類は進化しているなと。終戦後まもなくまでは自分の名義で土地や家屋を持つなんて夢幻の話。サラリーマンが靴を3足も持ってたらムカデじゃあるまいし贅沢だと叱られて、すき焼きなんて食べたら3年ぐらい近所のうわさでしたよ。
草野
今は何もかもが便利になってきたけど、見たくないものまで見させられている気がします。
美輪
これまで政治家や霞ヶ関やメディアまでが一切かん口令で見せないようにしていたことまでもが明るみに出て大騒ぎしているけど、逆に秘密がなくなるのは結構じゃないですか。
草野
私たちには一方的な情報に踊らされることのない識見を持つことが求められますね。
美輪
そう、それさえ持っていれば、非常に健全な世の中になると思いますよ。日本は経済的に駄目だけれども、変わってきた。いいなと思ったのは、衣食足りて礼節を知るじゃないけれど、空疎で中身が全部空っぽだってことにみんなが気付いて来たこと。私たちもホームレスをやって、灰の中から食べ物やら着るものやらをあさって焼け跡から生き抜いてきた。金、金、とにかく物欲、性欲、食欲、名誉欲を手に入れるのが目的で、後から来たものを突き落とせって走ってきた。肉体を維持するためのビタミンは過剰なくらい摂取したんだけど、実は、心とか精神とか、常識とか、教養とかが空っぽだったわけ。だから自殺がどんどん増えてきちゃう。とにかく心がかさかさに乾いちゃったんです。心の栄養失調。
草野
そういうことを忘れてしまうくらい、私たちは単視眼的なものの見方に踊らされてしまいます。
美輪
日本は国土が狭いから昔から近視眼的にものを見るけど、過去を振り返って比べてごらんなさい、っていうのです。そうすると、大きな希望を持てるではありませんか。
法テラスも、幅広い世代の文化や生活を学ぶ努力を
草野
最後になりますが、法テラスは国民に司法を身近なものにするべく設立されました。まだ5年と若い組織ですが、国民に真に親しまれる存在になるためには何が大切でしょうか。
美輪
象牙の塔では困るということですね。私は、司法関係の人には3年間、水商売でバーテンダーでもホストでもいいからやらせるべきと言ってるんです。水商売には不特定多数の多種多様な人間が来て本性を現す。そうすると、こんな立派な人がというのにとんでもない悪癖があったり、世の中の裏の裏には骨の髄まで悪い奴がいることとかが五感に染みて分かりますから、頭だけではなくて。
草野
机上論では駄目ということですね。
美輪
そう。自分たちの茶わんの中の嵐で、コマネズミみたいに走り回っているようでは仕方ない。若い中学・高校の子供たちからお年寄りまで、すべてに情報を張り巡らせて、文化や生活を学ぶこと。裁判官も検察官も、弁護士もそのことを常に努力し続けないと恐ろしいことになりますよ。だから、法テラスもグローバルな考えを持って、国民に優しい組織になることがとても大事です。
草野
本日は貴重なお話をありがとうございました。美輪さんが幅広い年齢層に支持され圧倒的な人気がおありだという理由が本当によくわかりました。

歌手・俳優
美輪明宏さん

1935年、長崎市出身。
国立音大付属高校中退。17歳でプロ歌手としてデビュー。57年「メケメケ」、66年「ヨイトマケの唄」が大ヒット。67年、演劇実験室「天井棧敷」旗揚げ公演に参加、「青森県のせむし男」に主演。68年、「紫の履歴書」を執筆。以後、演劇・リサイタル・テレビ・ラジオ・講演活動などで幅広く活動。97年「双頭の鷲」では、読売演劇大賞優秀賞を受賞。現在、携帯サイト「麗人だより」がアクセス数??1。
ゲスト:歌手・俳優 美輪明宏さん


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