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広報誌「ほうてらす」インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.20 春号  インタビュー

個人が抱える同時多発的な問題には、チームを組んでサポートを!

聞き手 法テラス 広報室 室長 相原佳子

精神科医 立教大学教授 香山リカさんのインタビュー風景
被災者をサポートする支援者へのケアがますます重要に
相原
宮城県における被災者支援のための出張所「法テラス東松島」の開所にあたり、香山さんには「いま、一緒に考える心のケア」と題する講演を行っていただきました。その節は、ありがとうございました。
香山
講演会にお集まりの皆さんは、福祉など地元で支援に携わっている方が中心でしたが、今そういった方々の疲弊がものすごく大きな問題になっています。例えば自治体職員の方は、自身が被災者でもあるにも関わらず、その場を離れずにずっと頑張っている。時間が経つにつれ、住民の皆さんの不満や悲しみが、「何やっているんだ」とか「早くやれ」とか、職員に対して憤りとしてぶつけられるといったことも出てきています。
相原
被災しているのに、サポートし続けなければならないのは、かなりの負担ですね。
香山
「支援者も二次的な被災者である」というのが被災者ケアの常識になりつつあります。支援者自身が「私も傷つき、疲れているんだ」ということをまず自覚し、休養を取ったり支援から離れる時間をつくるなど、物理的にそこから身を離して休むことが必要です。
 私は、重要な役割を担い、他の人のために頑張っている人には、莫大な報酬と休暇を与えたほうがいいと思っているんです。そうすれば、(お金目当てではないにしろ)支援活動を目指す人がもっと増えるでしょうし、支援者がケアされることで、良いサービスを継続できる。善意で頑張っている人に負荷がかかりすぎ、途中で燃え尽きてしまうことは、市民にとっても大きな損失ですよね。講演の時、「1カ月ぐらい休んで、エーゲ海とかに行ったほうがいいですよ」とお話したら、皆さん苦笑していらっしゃいましたけど(笑)。
現実的な問題解決に向けてできるところから始める
相原
3・11から1年経ちましたが、被災者の皆さんはどのような状況なのでしょう。
香山
皆さんが「この1年は時計が止まっていた」とおっしゃるように、とにかく1年、1周忌まではと気を張ってやってこられた。本当の意味での喪失感や疲れが出てくるのはこれからでしょう。
相原
そのような方々をサポートするには?
香山
例えば、家族をなくされた方の場合、どんな名医でも、その悲しみを一瞬で解決することはできません。その人が悲しみとゆっくり直面し、自分なりに受け入れて、立ち直っていくという、その人自身が持っている力を発揮できるような場をつくることですね。
相原
場をつくる、というのは?
香山
環境調整です。その方が「1日2時間でも一人になって、一人で悲しみたい」とおっしゃったら、家族に話をし、その人を家事から解放して一人になれる時間や場所をつくる。精神科医の役割としても、悲しみの中にある人に対しては、心の話を聞くよりも周辺を整える仕事のほうが多いですね。それは、心のケアじゃないかもしれないけれど、家を直すとか手続きを手伝うとか、現実的に手を付けられるところからやっていくことです。
心の悩みと現実的な問題がリンク 相談サービスはもっと連携を
相原
ご専門の心の病についてお聞かせいただきたいのですが、私が日々の弁護士活動の中で実感しているのは、うつの問題が非常に増えていることです。離婚問題でも、うつ状態という診断書が提出されたりしています。
香山
精神科医側からすると逆で、これまでは病気としてのうつ病だったんですね。ところが最近は、うつ病の背景に今おっしゃった離婚問題やDV、多重債務など、現実的な問題が関係している人が増えています。おそらく、どちらかの問題が始まると、もう片方の問題も起きてしまうのでしょう。実際、精神科を受診される人の中には、「それは心の相談ではなくて、実は法律的なトラブルなんじゃない?」という方も少なくない。法テラスさんに関わっていただければ、その重荷の7割ぐらいは消えてしまうということも多いんですよね。
相原
かつて精神科と言えば、ものすごく敷居が高かったのですが、今は非常に相談に行きやすくなっていますね。
香山
いろんな問題を抱えた方が精神科に集中して来る傾向があるので、ここが一つの窓口となり、必要であれば、法テラスや消費生活センター、女性センターなどに紹介できればと思います。「包括的なケア」「ワンストップサービス」と言われる形です。
相原
自殺対策もそうですね。精神科の先生がいてメンタルなことが分かっていれば、相談に当たる弁護士などが相談者を傷つけてしまうことも少なくなるでしょうし、お互いうまくチームを組んで対応できればと考えます。
香山
それこそ精神科の待合室に、法テラスさんのポスターを貼ったりするといいですよね。必要としている人はたくさんいますから。ただ、私が紹介すると、患者さんは一瞬「へっ?」となる(笑)。「これは国がやっているところで、決して怪しい団体ではない」と弁解しなければいけないので、もっと認知度を上げていただければ。
今後ますます必要になるサービス 法テラスからのアプローチを
相原
その他に、法テラスへのご要望などがあれば、お聞かせください。
香山
お金や雇用、家族の問題など、一人が多様な問題を同時に抱える傾向があります。どこかでつまずくと、同時多発的に問題を抱えてしまう社会の中で、法テラスさんが担う役割はとても大きいと思います。私もそうですが、一般の人にとって法律とは人を罰するもの、取り締まるものといったイメージが強く、法律を使って積極的に問題を解決していくんだというふうにはなかなか考えにくい。なので、被災地でやっていらっしゃるように、相談を待っているのではなく、法テラスさんのほうからアプローチしていただければと思います。今後、ますます必要になるサービスですので、大いに期待しています。

精神科医 立教大学教授
香山リカさん

1960年北海道生まれ。東京医科大学医学部卒業。学生時代より雑誌などに 寄稿し、91年『リカちゃんコンプレックス』で単行本デビュー。豊富な臨床経 験を生かし、現代人の心の問題を中心に多様なメディアで発言を続けている。 『うつで困ったときに開く本』(朝日新聞出版)、『しがみつかない生き方?「ふ つうの幸せ」を手に入れる10のルール』(幻冬舎新書)など著書多数。
ゲスト:精神科医 立教大学教授 香山リカさんさん


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