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広報誌「ほうてらす」Vol.24 春号インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.24 春号  インタビュー

人を“高齢者”とか“認知症”とひと括りにしたくないですね

聞き手 法テラス 広報室 室長 (現・本部 事務局長) 相原佳子

女優 草村礼子さんのインタビュー風景
76歳まで現役看護婦として働いた母 私は母の「働く同志」だった!?
相原
長いキャリアを持つ草村さんですが、女優さんになられたきっかけは?
草村
中学2年生の時、友達に頼まれて文化祭の劇で代役をしたことです。当時、私は友達の少ない、引っ込み思案の少女でした。
劇に出るなんて恥ずかしくて絶対に嫌だったのですが、「やってくれなかったら絶交する」と言われ、友達を失いたくない一心で死ぬ気で舞台に立ちました。そうしたら、全校生徒から拍手喝采。皆が喜んでくれたって錯覚したの。嬉しくて、母と同じ看護婦か保母になるという夢をスパっと捨てて、演劇をする人になろうと決意したんです。
相原
お母様は看護婦さんでいらした?
草村
助産婦として自宅で開業していたのですが、父が亡くなり、母一人で3人の子どもを育てなければならず、病院で住み込みの看護婦として働くようになりました。ですから、私は小学3年生の時から家事を全部こなし、兄と弟の面倒をみていたんです。
母は、兄や弟の名前をちゃん付けで呼ぶのに、私のことは「礼子さん」と言っていましたね。いまにして思えば、私を「働く同志」として扱っていたのでしょう。母は55歳で定年を迎えた後で別の病院に婦長として迎えられ、その後21年間勤務。76歳の時、私が「退職勧告」を出したのですが、ボケても困るので、母を私の付き人見習いとして雇い、当時、私がやっていた一人芝居の公演に同行して、受付係等をしてもらいました。人当たりが良いので、お客様には好評でした。
相原
ずっと働かれていたなんて、お母様はご立派ですね。
草村
55歳の母をスカウトされた院長先生がスゴイんです。神経科の病院だから可能だったのかしら?いま高齢者イコール高齢者問題となってしまう風潮がありますが、年をとったからこそできる仕事ってたくさんありますよね。私のように大好きなダンスを活かしたボランティアを思い付く人間もいますしね。高齢者イコール困った「問題」ではない、別の切り口があってもいいのではないでしょうか。この間、電車の中で、私が出演した映画『仁侠ヘルパー』を見たという介護関係の方に声をかけられました。40代くらいの女性でしたが、「認知症の人を丁寧に演じてくださり、あ りがとうございます」とおっしゃるのです。私の演技が認知症の方を理解する手助けや、介護しているご家族への励ましになっているのかしらと、嬉しく思いました。
音楽に合わせ、ゆったり揺れる心も体も活性化する「夢のダンス」
相原
平成17年から始められた社交ダンスによるボランティア「夢のダンス」は、脳梗塞で倒れられたお母様の介護体験から思い付かれたそうですね。
草村
多くの高齢者施設は「入所者が安全にケガなく一日を終える」ことで手一杯。無事に暮らしてはいるけれど、気持ちの弾みがないんですよね。私たちの「夢のダンス」では、高齢者の皆さんがよくご存知の懐かしい曲に乗って、ダンスのスイング感を味わっていただきます。社交ダンス愛好者のボランティアと手を合わせ、ゆったりと揺れるのが基本で、男性ボランティアと手をつないで揺れると、90歳の方も頬がぽっと赤くなり、笑顔がこぼれます。男の人と女の人が堂々と 手を取り合えるのは社交ダンスの特権。そのトキメキで、心も体も活性化するのです。
相原
「夢のダンス」は、具体的にどのように行われるのですか。
草村
例えば、入所者の方が40人だとすると、皆さんに輪になって座っていただき、20人のボランティアが順次入れ替わってお相手をします。中には、私と手をつないでいるのに、「次の曲はお目当ての男性だわ」って気もそぞろになる方もいらっしゃるんですよ。曲が終わっても手を離さない方には、私が「パートナーチェンジです」と、ひっぺがす(笑)。そう、「明日は夢のダンスだから、あのブラウスを着よう」という人が現れたりするのね。心にふっと風が入るようなワクワクする気持ちは、とても大事だと思います。
辛い生活をしていた時にあったかく生きる人に支えられた
相原
高齢者に接するにあたり、気を付けていらっしゃることはありますか?
草村
「夢のダンス」には一つだけ決まりがあるの。それは、猫なで声で「おばあちゃん、おいくつ?」なんて言わず、普通にお話をすること。耳が遠い方には大きな声で、認知症の方には2回言えばいい。ちょっと子ども返りしている方も、魂まで子どもになっているわけではありません。親切のつもりでも、言われたほうは気分が悪いのではないでしょう か。それから、認知症だから年寄りだからと括らないで、「一人の人として大事にしましょ」と言っています。組んだお相手を大事にするのが社交ダンスの基本マナーですし、人から大事にされると元気になれますものね。
相原
高齢者だけでなく、人に丁寧に接してもらえば、誰でも嬉しくなります。
草村
この20年間私は、色紙を頼まれた時は「あったかく生きる」と書いてます。9歳で主婦をしていた時、近所のおじちゃんが「礼子の笑顔を見ると、こっちまで元気になるよ。100万ドルの笑顔だな」と声をかけて、毎日エールを送ってくれたんです。そういうあったかい心の人に囲まれていたから、私たち兄弟3人は無事に大人になれました。また、私が一人芝居を続けられたのも「今度、チラシを4〜5枚ちょうだい。知り合いに勧めるわ」というお客様の言葉に励まされたからなの。ですから、私自身もあったかく生きたいなと思うようになりました。色紙には、自分を律するための言葉を書いているんです。
相原
誰もが地域の中で普通に生きていけることが大切ですね。高齢者や障がい者はもちろん、トラブルを抱えて困っている方が笑顔になれるよう、私たち法テラスも頑張ります。本日は、良いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

女優
草村礼子さん

1940年東京生まれ。劇団「炎座」「国芸」を経て、劇団「東京小劇場」の幹部女優として16年間活動後、フリーに。90年に一人芝居『じょんがら民宿こぼれ話』で文化庁芸術祭賞、 96年に映画『Shall we ダンス?』でキ ネマ旬報ベストテン助演女優賞等7つの映画賞を受賞。近年の主な出演映画に『HOME 愛しの座敷わらし』『仁侠ヘルパー』『ひまわりと子犬の7日間』等がある。
ゲスト:女優 草村礼子さん


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