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広報誌「ほうてらす」夏号インタビュー

広報誌「ほうてらす」Vol.25 夏号  インタビュー

映画と、こども。

聞き手 法テラス 広報室 室長 (現・本部 事務局長) 相原佳子

代表作『誰も知らない』では実際に起きた子ども置き去り事件を子どもの視点から描き、最新作『そして父になる』では生まれた病院で子どもが取り違えられた家族を描き、常に社会に問題提起してきた是枝監督。そんな監督に、女子少年院の教官を経て弁護士になり少年事件や児童福祉施設に関わって来た相原事務局長が、映画と子どもについて聞いてみました。

子役のキャラクターを尊重する。
相原
カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、おめでとうございます。
是枝
ありがとうございます。
相原
最新作もそうですが監督の映画に出ている子どもたちって、本当に自然ですよね。演技というのを感じさせないというか。なにか工夫されてる事などあるんですか?
是枝
ありがとうございます。僕は子どもたちに台本を一切渡してないので、その辺が上手くいってるのかなと思います。
相原
だからあんなに素のままなんですね。いつ頃からそうされたんですか?
是枝
『誰も知らない』から、ずっとそうですね。「明日までに台本ここまで覚えてこい!」と厳しくするんではなく、その子の元々のキャラクターを尊重して進めるようにしています。
相原
ちゃんと子どもたちを観察されてるんですね。他に何か工夫されてる事はありますか?
是枝
子どもたちの前で、楽しそうに働く事を徹底してます。子どもが出会う大人って、親と担任の先生しかいなくて、僕たちは子どもたちにとってそれ以外に、はじめて接する働く大人なんですよね。だから「働くって楽しいよ」と思ってほしくて、スタッフ全員が楽しく働くと決めてます。
相原
ものすごく教育的な視点ですね!
是枝
そうなんです、ちょっと教育的なんです(笑)子どもにとっても、この仕事楽しいって1つの仕事を終えてくれる事は、いい映画ができるよりも大事かもしれないですね。
血がつながっているだけが、本当の家族か。
相原
今までは、子どもの目線で描いて来た作品が多いように思うのですが、最新作『そして父になる』は父親目線ですよね?何か理由はあるんですか?
是枝
単純に、自分に子どもができたからじゃないですかね。
相原
監督自身のプライベートな部分がかなり作品に反映されてるんですね。
是枝
そうですね、僕の場合、作り手の感情や家庭の状況が変化する事で、映画が変わるのが面白いと思ってます。『奇跡』を撮った時子どもが3歳だったんですが、撮影で2か月くらい家に帰らなくて、久しぶりに帰って子どもと2人きりになったら、お互いに緊張しちゃって。こっちにまったく寄って来ないんですよね。で、翌日家を出る時に「またきてね」って冗談みたいに言われちゃって(笑)その時から、「父親になっていく」ってことは、血のつながりだけじゃなくて、時間を積み重ねて行かないといけないものなのか?というのが僕にとって切実なテーマになりました。
相原
それで今回のテーマが本当の家族を問う、というものなんですね。
是枝
はい。切実に、血か、時間かという選択を迫られる話にしようと思って、子どもを取り違えた家族の設定にしました。生まれた時に取り違えられて育てた子どもは、血は繋がってないけど、本当の家族なのか。本当の家族って一体なんなんだろう、という事を撮りながら考えられたらと思いました。
残虐と言われたお兄ちゃんに
寄り添えた。
相原
監督は社会的な問題に切り込んでいますよね。いつもどこからテーマを探してるんですか?
是枝
自分では社会派だという意識はなくて、新聞でネタ探しをするという事もないんです。どちらかと言うと自分が生活している足下をみるようにしてます。『誰も知らない』も、モデルとなった事件(※)が東京で起こった頃、僕は長野県の小学校に3年通ってある番組を作っていたんですが、ある日その学校の担任の先生に「君が向き合うべき子どものテーマは長野だけじゃなく、東京にもあるんじゃないか」と言われて、かなりショックを受けたんですね。それで、何を撮ろうかなと思っていた時に、東京であの事件がありました。兄が妹の遺体を運んだという事で当時残虐だとメディアは騒いでいましたが、遺体を運んだ特急列車が僕が小さい頃から憧れていた電車だったり、取材して行く中で、お兄ちゃんの行動に納得できたり、気持ちに寄り添える「核」をいくつか見つけて、これを「撮ろう」と思ったんです。だから社会派として撮っているというより、自分の気持ちや、やっぱり自分のプライベートの事にかなり影響されていますね。
相原
これからもお子さんが大きくなるにつれて、監督の映画も変化しそうですよね。
是枝
そうですね。子どもの成長や自分の生活に寄り添って、映画の変化を楽しんで行けたらと思います。
相原
ありがとうございます。これからも作品を楽しみにしています。

※巣鴨子ども置き去り事件:1988年、東京都豊島区でおきた保護責任者遺棄事件。4人の子どもが育児放棄された中、長男が運んだ妹の遺体が埼玉県の山奥で発見された。

監督/脚本/編集
是枝裕和さん

1962年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。主なTV作品に、「しかし…」(91/CX/ギャラクシー賞優秀作品賞)、「もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜」(91/CX/ATP賞優秀賞)、「記憶が失われた時…」(96/NHK/放送文化基金賞)などがある。1995年、初監督した映画『幻の光』(主演:江角マキコ、浅野忠信、内藤剛志)が第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。続く『ワンダフルライフ』(98)は、世界30ヶ国、全米200館で公開される。2004年、『誰も知らない』がカンヌ国際映画祭にて映画祭史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞。2006年、『花よりもなほ』で初の時代劇に挑戦。2008年、『歩いても 歩いても』(主演:阿部寛)でブルーリボン賞監督賞他多数受賞。同年、初のドキュメンタリー映画『大丈夫であるように−Cocco終わらない旅』を公開。2009年、『空気人形』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品、絶賛される。2010年、「妖しき文豪怪談シリーズ」(NHK BS-hi)で、室生犀星の短編小説を映像化した「後の日」を発表。2011年、『奇跡』が第59回サンセバスチャン国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2012年、初の連続ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(KTV・CX)で脚本・演出・編集を手掛ける。2013年、最新作『そして父になる』(9月28日公開)が第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した。
ゲスト:映画監督 是枝 裕和さん


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