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法テラス座談会

今求められるセーフティネットとは-司法と福祉の連携を中心に-

セーフティネット構築に必要なのは 制度の拡充と橋渡し役の充実

草野満代さん
草野
今の社会で起きている現実、それに対応していないセーフティネットや社会保障の中で、ではどうしたらいいのでしょう。湯浅さんはどう思いますか。セーフティネットと一概に言っても範囲が広いから、細かいものがたくさんある。でもそれにアクセスしづらい状況になっているのが問題であるという現状は、制度そのものがもう立ち行かなくなっていると思うんですが。
湯浅
よく言われているように二面あると思います。制度そのものの拡充、この拡充の中には非常に複雑になってきている手続きの簡素化も含まれています。あとはそれをつなぐ役割を誰が担うのかです。日本のセーフティネットは「島」で、今は島と島の間に「橋」がかかっていません。例えば雇用保険が切れた人が第二のセーフティネットに行こうとしたら、自分で泳いでいきなさい、と言われる。泳いでいけない人は知らない。その間には橋もかかっていなければ、船も出ない。そこから最後のセーフティネット、生活保護に行くのも、自分で泳いでいかなくてはならない。その島の部分が小さくて海が広いから泳いでいくのは大変です。だから、まず島を大きくする。あとは島になんらかの橋をかけてあげる。つまり、制度へのアクセスを手助けする人を用意すること。どっちが大事ということではなく、やはり島が小さければ、橋渡しとか船をつなぐときの負荷が大きくなるので、それをやる人の負担が大きくなるんです。かといって、島が大きくなっても橋がなければやっぱり泳ぎきれない人がたくさん出る。ここは両面そろってやるしかないと思います。両方とも公的な責任は何かということにかかってくるんです。特に橋を渡す役割の人については最近、「新しい公共」という議論があり、公務員だけがやる必要はないとも考えられています。公務員以外が困った人たちと接点をもちながら、充実させていくというのは、難しい問題だと思いますが、とにかく方向性としてはその2つのことをやるしかない。
草野
今、公的な責任という話がありましたが、山田さんいかがですか。
山田
山田昌弘さん私は今までの社会保障制度が今の新しい経済に合っていないと思っています。今までの制度は、フルタイムで働ければ十分な給料が得られるし、家族にフルタイムで働いている人がいれば、家族も大丈夫だった。フルタイムで働けない人が出てきて初めて社会保障が作動する、いわゆる生活保護といわれる生活扶助が作動するシステムですが、今全世界で起きていることは、中間的な人たちがたくさん現れてきたということです。つまり、朝から晩まで働いても生活できないようなフリーターとか、さらには少ない年金で過ごしているような親とパラサイトシングル。同居している人が寄り添っていれば暮らせるけども、バラバラになると暮らせない人たち。なまじ資産があるがゆえに、低収入であっても何の不自由もなく暮らせてしまう人。生活保護は、スッカラカンにならないと、つまり、湯浅さんが言うすべり台社会を落ちてしまわないと受けられないんです。でも、落ちる途中の人とか、落ちてなくても中間ぐらいで這い上がろうとしている人、多少働ける母子世帯が実は一番苦しんでいる。そういう中間的な人たちを救い出す制度がないんです。

弁護士もいっしょだと思いました。20年くらい前までは弁護士というのは外科手術といっしょで、一生に一度かかるかかからないか、というもので、弁護士に頼むというのは、そういう大事、例えば大金持ちの遺産相続などがあったときか、もしくは犯罪者の国選弁護人のように、まったくスッカラカンで罪を犯して誰にも頼れない人たちの扶助しかありませんでした。中間はなくてもよかったんです。今起きてきていることは、つまり大金持ちではないし、犯罪を犯したわけでないけど法律的なことを解決したいという、中間的なケースがどんどん出てきている。たぶん社会保障において問題がない普通の人と貧困者という分け方ではなく、中間的なところが出てきたことと呼応しているんだと思います。法テラスの意義はそこにあると思っています。


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