支援が必要な地域の人たちのために スタ弁は今日も行く!
更新日:2018年6月28日
地域の力をつなげて広がる「支援の輪」
「ちょっと、これを見てもらえませんか」
イラスト:小池アミイゴ
ご友人と一緒に、法律相談に来られたAさん。裁判所から書類が届いたので、見てほしいとのことでした。
その書類は、貸金の返還を求める訴状。Aさんに、訴状に書かれた事実関係について尋ねてみると、全く身に覚えがないと言うのです。
ただ、その訴状には、Aさんの署名と押印がある借用書も一緒に付いていました。
「その署名、息子さんの筆跡かも…」とご友人。
詳しく聞くと、Aさんには一緒に住んでいる息子がいて、Aさんのお金で生活しているとのことでした。
Aさん本人の借用書でなければ、裁判で争うことが考えられます。ところが、Aさんとお話をしても、どうも意思疎通がうまくいきません。Aさんは、認知症がかなり進んでいたのです。そんなAさんが心配で、ご友人は一緒に法律相談に来られたのでした。
Aさんに判断能力が欠けているとなれば、私はAさんから直接依頼を受けることができません。依頼を受けるためには、Aさんに成年後見人を選任する必要があるのですが、Aさんの身内はその息子さんだけ…。後見人選任の申立てをすべき人がいない状況だったのです。
そこで私は、地域包括支援センターに相談しました。自治体の首長による成年後見人選任の申立てをお願いすることが最善の策と考えたからです。
その後、地域包括支援センターが対応してくださったおかげで、Aさんに成年後見人が選任されました。その後見人から裁判対応の依頼を受け、結果、なんとか事なきを得ることができたのです。
司法過疎地では、都会ほどには働き口もなく、借金の問題は依然として多く残っています。家族のお金をあてにし、その家族も経済的に苦しくなるという話も少なくありません。そして、弁護士の力だけではどうにもならないことがあります。
そんなとき、地域の皆さんと一緒なら、もっと多くの困りごとを解決につなげられると思います。
より大きな「支援の輪」を目指して、スタ弁は今日も行きます。
法テラス鰺ヶ沢法律事務所 小澤博之弁護士
PROFILE
おざわ・ひろゆき/ 2011年弁護士登録。法テラス青森法律事務所を経て、鰺ヶ沢法律事務所に15年7月のオープンより勤務。趣味はスキー。最近の楽しみは温泉巡り。
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※掲載している所属やプロフィール情報は、平成28年4月時点のものであり、現在は異なっている場合があります。