法テラス東京法律事務所だより 2020年11月号
更新日:2020年11月24日
四ツ谷のげんばから
とある福祉事務所の職員(ケースワーカー)さんから,お電話をいただきました。
- Aさん(70歳代・一人暮らし・女性)は生活保護を受給しながら生活していましたが,最近になって離れて暮らしていた娘が亡くなりました。
- Aさんが娘の遺産を整理していたところ,弁護士から娘宛に出された,娘の父親の死を知らせる手紙を発見しました。
- Aさんは,娘の父親と離婚していたため,元夫の死を知りませんでした。
- 弁護士は娘の兄弟の代理人に就いているようでした。手紙には,娘の父親が亡くなったため,遺産分割協議に参加してほしいと書かれていました。娘の父親は多額の資産を有していたようですが,娘に対して提示されていた額は少額でした。
- 手紙には1年前の日付が記されていましたが,娘が返事をした形跡はありません。
- Aさんは,相続財産で娘のお墓を建ててあげたいという希望を持っておられました。
- Aさんと一緒に遺産の確認をしていたケースワーカーは,どう対応すればいいか悩み,法テラスのホットラインを利用しました。
このケースでは,Aさんの娘に子どもや配偶者はいませんでした。このため,Aさんは,娘の遺産分割協議に参加できる地位を,そのまま相続することになります。
弁護士の手紙に記されていた父親の資産は多額でしたが,そのほとんどが地方の不動産でした。不動産は,相続人の誰かが買い取ったり,売却して換金するなりできなければ実際にお金にして相続人の間で分けることはできません。
遺産分割協議は,交渉のみで合意に至ることもありますが,それができなければ調停で長い時間をかけて話し合いをすることもあります。ご高齢の依頼者にはご負担が大きいかもしれません。
また,生活保護受給者が相続財産を得た場合,相続日以降に受け取った生活保護費は返還する必要があります。
そのため,今回は,金銭を得る目的で遺産分割協議をしても,Aさんの娘のお墓を建てるという希望が叶えられない可能性があることを説明して,遺産を相続せずに相手方に娘のお墓を建ててもらうよう交渉する方法もあり得ることをお伝えさせていただきました。そのうえで,Aさんに法テラスの法律相談で直接お話をお伺いして,意思決定していただくことになりました。
“こんなとき,どうしたらいいんだろう”と思われましたら,ぜひお気軽にご相談ください。
※ このお話は実例を参考にしたフィクションです。
法テラス東京法律事務所だより 11月号(PDF:274KB)
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※2 最終的にはご本人(被支援者様)のために、そのお悩みについて解決の道筋をつけることが目的です。支援者様や支援者様が所属する機関・団体の法務につきましては対応できませんので、予めご了承ください。
※3 ここに掲げたもの以外のお悩みでも、ご遠慮なくお問い合わせください。
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