47号 健康と法律
更新日:2020年10月20日
このページの内容は広報誌「ほうてらす第47号」(令和元年12月発行)の内容を、令和2年10月に一部修正し、更新したものです。
健康と法律
元気で長生きしたいと願うのは、人の世の常。人が健康に十分気遣えるように、様々な法律も作られてきました。ほんの一部ですが、ご紹介します。健康に過ごす参考にしてください。
ウチの母は、健康のためとトクホを飲んでいます。トクホって何ですか。
健康を意識して、口にされている方も多い「トクホ」。正式名称は「特定保健用食品」といいます。
「生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示できる食品」(厚生労働省HPより)を指します。簡単に言うと、事業者が有効性、安全性などの科学的根拠を示して、国の審査と許可を受けた食品です。
平成3年に法律ができ、今ではなんと1000品目を超えています。でも実際どのような効果があるのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
現在、パッケージなどへの表示が許可されているのは、「コレステロールを下げる」「おなかの調子を整える」「糖の吸収を穏やかにする」などです。しかし、その表示は同じでも、成分によって作用機序(効くメカニズム)が異なることもあります。
さらに選択肢を増やすため、国は平成27年に「機能性表示食品」という制度を始めました。トクホと異なり、国が審査や許可をするのではない、届出制。あくまでも事業者の責任で、文献や論文など科学的根拠に基づく機能を表示した食品です。
トクホや機能性表示食品は医薬品ではなく、あくまで健康をサポートする食品です。また、過剰な摂取などはかえって健康を害してしまうこともあります。買う前にパッケージの表示やホームページをよく読んで、自分に合ったものを選び、目安量を守って摂取しましょう。
喫煙のルールが大きく変わったと聞きました。どのように変わったのですか。
平成30年、健康増進法が改正され、望まない受動喫煙を防止するための取り組みは、マナーからルールへと変わりました。その内容は、主に次の3点です。
(1)「望まない受動喫煙」をなくす
(2)受動喫煙による健康影響が大きい子どもや患者に特に配慮する
(3)施設の類型や場所ごとに対策を実施する
この法律により、令和元年7月から、学校・病院・行政機関が一定の条件を満たした場合に屋外に喫煙所を設けることができるほかは、「敷地内禁煙」となりました。さらに令和2年4月には法律が全面施行となり、飲食店やオフィス、事業所、交通機関など、すべての施設が「原則屋内禁煙」になりました。
ただし、施設の屋外には、受動喫煙を防止するために必要な措置が採られた場所に限り、喫煙場所(特定屋外喫煙場所)の設置ができたり、施設によっては専用の喫煙室がある場合もあります。また、喫煙を主目的とするバー・スナック等は現在の喫煙ルールを継続することができます。
国が定めたルール以外にも、東京都など一部の自治体では独自の条例を定めたり、全国の全店舗を禁煙にするという外食チェーンなど、さらなる取り組みを進める民間企業もあります。
今回、ルールができたことで、施設やお店に入る前に喫煙できる場所があるか無いかが「標識」でわかるようになりました。たばこを吸う人も吸わない人も、お互いにより過ごしやすい社会に変わっていくといいですね。
予防接種って、受けなくてはいけないの?
インフルエンザの流行する時期などには、予防接種を受けている方も多いかと思います。でも、注射は痛い。病院に行くと、予防接種が嫌で泣いているお子さんをよく見かけます。
予防接種は、予防接種法という法律に基づき、市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」があります。
「定期接種」は、個人の感染予防や重症化防止、集団での感染症のまん延の防止が目的で、水疱瘡や結核予防のBCGなどが対象となっています。定期接種は、病気ごとに定められた接種期間があり、その期間内に受けると原則公費負担、つまり無料です。一方、「任意接種」は「定期接種」以外の予防接種のことを指し、季節性インフルエンザ(65歳以上の方などは一部自己負担のありうる定期接種)やおたふくかぜなどがその対象です。任意接種の多くは有料ですが、市区町村によっては公費助成がある場合もあるので、受ける前に確認するとよいでしょう。
まれにワクチンの接種で、重症の副反応が起きることがあります。そのときは、救済給付の制度があるので「定期接種」での重症副反応はお住まいの市区町村へ、「任意接種」での重症副反応は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の窓口に、相談しましょう。
薬をネットで買ったら、空箱が送られてきました。
風邪をひき、体調が悪くて薬を買いに行くのもつらい。そこで、インターネットで薬を買ったら、なんと空箱が送られてきた。電話をしてもつながらない。代金は支払ったのに、どうなるの!
平成25年の薬事法の改正により、一般的に市販薬や大衆薬と呼ばれている第1類、第2類、第3類すべての「一般用医薬品」は、インターネットや電話などで販売できるようになりました(一定の条件があります)。ただし、医療用医薬品から一般用医薬品に移行して間もないものや使用に特に注意が必要な一部の医薬品(要指導医薬品)は、薬剤師が対面で情報提供や指導を行うことが必要なため、インターネットや電話などでの販売は禁止されています。
残念ながら、便利になると、トラブルも起こりやすくなるもの。違法サイトや偽サイト、正規品ではない薬を販売しているサイトも存在します。結果的に代金だけをだまし取られたり、安易に服薬するとかえって健康を害する場合も。
オンライン販売ができる薬局は、実際の店舗を有する、薬局や店舗販売業の許可を持った販売業者に限られます。厚生労働省のホームページでは、その一覧を公開していますので、調べてから購入すると、安心ですね。
もし、代金をだまし取られたり、正規品ではないものを購入させられてしまったなどのトラブルになった時は、弁護士などの法律の専門家に相談しましょう。
ガンにかかり、高額な治療法を進められました、どうしたらよいか分からず不安です。
病気にかかれば誰しも、必死の思いで治りたいと手を尽くすものです。
そんな人の心につけ込み、説明も不十分なまま未承認の高額な治療が行われ、トラブルになるケースが起きています。例えば、保険の効かない自由診療で、最先端の治療を受けたものの、説明そのものが虚偽であったり、効果や安全性が確認されていない用法用量のために、副作用などの被害にあっている方もいらっしゃいます。
そこで国は対策の一つとして、平成30年にガイドラインで、未承認医薬品を用いた治療の広告を行う場合は、未承認医薬品であることや入手経路などを明示することを実施の条件にしました。医療は専門性が高く、広告をきっかけとし来院し、医師を信頼し言われるがまま治療を受けている方もいらっしゃるかと思います。ごく一部の心ない医師によって、適切な治療を受ける機会を損なわれることのないよう、不安に感じることがあれば、判断する前に複数の医療機関にかかりセカンドオピニオンを受けるなどしましょう。
もし、説明が虚偽であったり、正しい用量でない治療で被害を受けた場合には、治療費の返還や慰謝料などの損害賠償の請求も考えられます。一人で悩まず、医療に詳しい弁護士などの専門家に相談しましょう。