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49号 法律で見るハラスメント

更新日:2020年9月29日

法律で見るハラスメント

 職場のみならず、家族や親しい友人同士などでも身近に起こりうるハラスメント。アメリカを中心に広がり、セクハラ被害を受けた女性たちに「あなたは一人じゃない」と連帯を呼びかける「♯Me Too」運動は、世界的にも注目を集め、ハラスメントのない社会を目指そうという大きな流れを生み出しました。日本でも、セクハラをはじめとする様々なハラスメントの問題が改めて議論されるきっかけとなりました。

 ハラスメントと聞くと、職場をイメージする方も多いかもしれません。実際、厚生労働省の調査によると、全国の地方労働局等に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加し、2019年度も8万件を超えています。

 2020年6月に施行された、いわゆる「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」は、パワハラは許されない行為であることを明記するとともに、各企業にパワハラ防止対策を義務づけました。同時に、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法も改正され、セクハラや妊娠・出産・育児・介護休業等に関するハラスメントの相談をした労働者に対する不利益な取扱いを禁止するなど、様々なハラスメントの防止対策も強化されています。

 このような変化を見せる、ハラスメントをめぐる社会や法律。では、ハラスメントとはどのようなことをいうのでしょう。様々なハラスメントを例に、一緒に考えてみませんか?

職場での「パワハラ」「セクハラ」の定義とは?

パワーハラスメント

 職場で働く人に対して、役職や人間関係などで優位性がある人が、業務上、明らかに必要のない言動などで精神的・身体的苦痛を与え、職場環境を悪化させる行為をいいます。(パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)に規定)

パワハラの例として次の6つがあげられています。

  1. 身体的な攻撃 〈例〉殴る、蹴る、わざとぶつかる、物を投げつけるなど、体に危害を加えられる。
  2. 精神的な攻撃 〈例〉人格を否定する言動や、必要以上に長時間にわたり厳しい叱責を繰り返される。
  3. 人間関係からの切り離し 〈例〉同僚から集団で無視をされ、職場で孤立させられる。
  4. 過大な要求 〈例〉到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことを厳しく叱責される。
  5. 過小な要求 〈例〉嫌がらせを目的として、仕事を与えられない。
  6. 個の侵害 〈例〉職場外でも継続的に監視されたり、許可なく病歴等の個人情報を他の労働者に暴露される。

ポイント
●上司から部下だけでなく、同僚間や、部下から上司に対するものも含まれます。
●パワハラにあたるかどうかの判断は個別の事案について丁寧な事実確認を行い、誰が誰に、どのような目的や状況で、どのくらい何を行ったのかなどを総合的に考慮します。

セクシャルハラスメント

 職場において、望まない性的な言動をされた労働者が、労働条件について不利益を受けたり、就業環境を悪化させられる行為をいいます。(男女雇用機会均等法に規定)
 セクハラの例として、次の2つがあげられています。

1.対価型
 性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことを理由に、解雇・降格・減給・労働契約の更新拒否などの不利益を受けること。   
〈例〉経営者から性的な関係を要求されたが、拒否したことで解雇された。

2. 環境型
 性的な言動により就業環境が不快なものとなり、能力発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上で見過ごせない程度の支障があること。
〈例〉事務所内で上司に腰などを何度も触られ、苦痛で業務が進まない。

ポイント
●異性間だけでなく、同性間のものも含まれます。
●取引先などの他の事業主・従業員、顧客、患者またはその家族、学校における生徒などの行為も含まれます。

増え続けるハラスメントの種類

ハラスメント用語辞典

【マタハラ】マタニティハラスメント
 働く女性に対して妊娠・出産を理由に職場で行われる精神的・肉体的な嫌がらせのこと。「出産ハラスメント」とも。妊娠・出産を理由に退職を促すなど、社会的な問題のひとつにもなっている。

【ケアハラ】ケアハラスメント
 育児や家族の介護を行う労働者に対して育児休業や介護休業などの制度利用を妨害したり、就業環境を害する言動を行うこと。

●妊娠・出産・育児休業・介護休業などを理由とする解雇などの不利益な取扱いは法律※で禁止されています。(※男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法)

【アカハラ】アカデミックハラスメント
 大学や大学院などで、教授等の構成員が地位や人間関係などの優位性を利用して行う精神的・肉体的な嫌がらせのこと。例えば、教授から学生に対する不当な退学処分・留年勧奨、指導拒否、学位不認定などがある。

【ソジハラ】SOGIハラ
  SOとはSexual Orientation(セクシュアルオリエンテーション)の頭文字で、「性的指向」の意味。「好きになる相手の性」を指す。GIとはGender Identity(ジェンダーアイデンティティ)の頭文字で、「性自認」の意味。自分自身を男性と認識するのか女性と認識するのか、あるいはどちらとはっきり決められない、どちらでもないなども含む。
 「ソジハラ」とは、好きになる人の性別(性的指向)や自分がどの性別かという認識(性自認)に関連しての、精神的・肉体的な嫌がらせのこと。また、望まない性別での学校生活など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること。

【モラハラ】モラルハラスメント
 言葉や態度等で繰り返し相手を攻撃する精神的暴力のこと。立場的な上下関係に関わらないため、職場だけでなく、夫婦間や家庭内で問題になることも多い。

【カスハラ】カスタマーハラスメント
 カスタマー(消費者、利用者、顧客)から店員に対する、悪質なクレームなどの迷惑行為のこと。理不尽な言いがかりや暴言、暴力行為などは接客業における深刻な問題となっており、場合によっては強要罪などの犯罪にもなり得る。

もしかしてこれもハラスメント?

Q.自分に向けられたパワハラではないけれど…。特にミスをしているわけでもないのに、同じ部署の社員が毎日上司から理不尽に怒鳴られていて、その上司の声を聞くだけで胃が痛くなってしまいます。それが原因で帰っても眠れない日々が続き、うつ病に。直接、私に向けられたものではないですが、これってパワハラになりますか?

A.怒鳴られている同じ部署の社員へのパワハラにあたる可能性は高く、あなたに対しても、パワハラになる可能性があります。また、安全配慮義務違反の問題もあります。
 パワハラを受けている本人はもちろんですが、それに日々接する周りの人たちも、大きなストレスを感じるものです。でも、自分がハラスメントを受けているわけではないし、我慢しなければならないと思われている方も、多いのではないでしょうか。
 確かに、第三者に対するパワハラを理由として、間接的に自分もパワハラを受けたと裁判で認められることは簡単なことではありません。
 しかし、最近、特定の事情も考慮した上で、会社の代表者が他の従業員に対してパワハラを行った事案において、そのパワハラ行為を見ていた従業員が、暴言等の内容が自分にもあてはまり、今後自分にも同じような対応があると受け止め、間接的に退職を強いられたとして、不法行為の成立を認めた裁判(東京高裁平成29年10月18日労働判例1179号47頁)もあります。
 また、会社は労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮するべき義務があります(労働契約法5条・安全配慮義務)。いわゆるパワハラ防止法の成立により会社はパワハラを防止する義務が規定されました。そのため、会社がパワハラを放置し続けた結果、パワハラを受けていない労働者にも悪影響が生じ、そのような労働環境によってうつ病等の具体的損害が生じたといえる場合には、安全配慮義務に違反していると評価される可能性もあります。
 自分は直接パワハラを受けていないからと我慢したり、一人で悩まず、弁護士などの法律の専門家に相談してみてはどうでしょうか。

ハラスメントにあったら

 パワハラを受けたと感じた方の約40%が「相談も何もしなかった」と回答しているように、実際にハラスメントを受けた時に何をしたらいいのか不安な方も多いはず。まずはひとりで悩まずに、自分に合った相談先を見つけましょう。

 どんなことをされたのか記録する
メモや録音など証拠を残しておくと、第三者に相談する際に状況を説明しやすくなります。「誰が・いつ・どこで・何を・何のために」という点を意識して記録しましょう。

 周囲に相談する
他者に話しづらいことではありますが、一人で抱え込んでしまうと状況が更に悪化することも。まずは信頼できる同僚や上司に相談し、周りの協力を得ましょう。

 会社の窓口や人事担当者に相談する
会社に相談することで、具体的な対応を取ってもらえる可能性もあります。また、それを理由に解雇やその他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

 外部の相談窓口に相談する
外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。厚生労働省「あかるい職場応援団」のサイト(外部サイト)には、「総合労働相談コーナー」や「個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会・都道府県庁」、「みんなの人権110番」など、職場のハラスメントに関連する相談機関の一覧が載っています。

 全国の法テラスでも相談を受け付けています。
 法テラス(日本司法支援センター)は国によって設立された、法的トラブル解決のための「総合案内所」です。まずは、お電話ください。

法テラス・サポートダイヤル
0570-078374(おなやみなし)
[平日:9時から21時 土曜:9時から17時](祝日・年末年始を除く)

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