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50号 コロナ禍のくらしと法律

更新日:2020年12月10日

コロナ禍のくらしと法律

 新型コロナウイルス感染症は、日本だけでなく世界中の生活スタイルに大きな影響を与えました。
 毎日の暮らし、働き方、学校生活など、"当たり前"の日常が大きく変化することは不安も多く、様々なトラブルも起きています。
 そこで今回は、みなさんの「もしも」のお役に立てるよう、これまでに法テラスに寄せられているお問合せや具体例(Q&A)を紹介いたします。

法テラスへのお問合せ状況

 法テラスでは、ホームページによくあるお問合せとその答えを掲載したり、電話などによる法律専門家との法律相談を実施するなど、新型コロナウイルス感染症についてさまざまな支援を行っています(くわしくはP8-9参照)。
 特に、どなたでもご利用いただける法テラスのコールセンター(※法テラス・サポートダイヤル)には、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方々から多くのお問合せをいただいています。

 毎月の問合せ件数(グラフ1)や問合せ内容の内訳(グラフ2)は、 グラフの通りとなっており、問合せ内容の内訳では、通常2割程度を占める「労働」「借金」の問合せ割合が、新型コロナウイルス感染症に関しては、4割となっています。
実際に「コロナ禍で収入が減り、借金の返済ができない」「新型コロナウイルス感染症の影響により会社の業績が悪化したという理由で、解雇された」など、その時々の社会情勢を色濃く反映したお問合せをいただいています。
 (※法テラス・サポートダイヤルでは、様々な問題について、解決に役立つ法制度や各種手続き、相談窓口などの情報提供を行っています)

コロナ禍による法律相談 Q&A

Case1 SNS被害

 SNSで「コロナに感染している」として、私や家族だとわかる写真や私の住所を投稿され、しかも拡散されているようで困っています。

 コロナ禍では、感染者や医療従事者、宅配従事者、その家族の方々などに対する心無い差別が相次いでいます。特にSNSについては、以前より悪質な書き込みが深刻化しています。
 プライバシーの侵害などの権利侵害がある書き込みがなされた場合、このような被害への対応策としてまず考えられるのは、インターネット上の書き込みに対する「削除の依頼」です。SNSや掲示板などには必ず管理者(管理会社)がおり、管理者に請求することで書き込みを削除できることがあります。サイト上に「削除・お問合せフォーム」などがある場合には、ここから削除依頼を行うことが考えられます。ただし、サイトの中には削除依頼があったことや、その内容を公開するところもあるので、注意が必要です。
 また、「削除仮処分」などの裁判所での手続きにより、管理者に投稿の削除を求めるという方法もあります。
 あわせて、悪質な書き込みによって名誉棄損やプライバシー侵害などの損害が生じたとして、書き込みをした人に対する慰謝料などの損害賠償請求をすることや、書き込みをした人を告訴することが考えられます。
そのためには、サイトへ書き込みをした人のIPアドレスやタイムスタンプ等の情報(アクセスログ)の開示請求をした後で、(接続)プロバイダへの契約者情報開示請求を行い、まずは情報発信者を特定する必要があります。これも削除請求と同様に、裁判手続きにより求めていくこともできます。
 なお、アクセスログは短時間で消去されてしまう可能性があるので、アクセスログの開示請求等についてはなるべく早めに対応する必要があります。法務局では、こうした削除依頼の方法や誹謗中傷や差別などの人権侵害について相談などに乗っていますので、最寄りの法務局などにご相談されることをおすすめします。

Case2 労働

 「新型コロナウイルス感染症の影響により会社の業績が悪化した」という理由で、解雇(雇止め)されました。

 厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルス感染症による解雇や雇止めになった人数は、9月初め時点で5万人を超えています。業種別では製造業・飲食業・宿泊業が多く、地域別では、東京都・大阪府・愛知県が多くなっています。
 雇用者側も厳しい状況ではありますが、今回の新型コロナウイルス感染症の影響を理由とする、「無条件」の解雇や雇止めは認められません。
 解雇については、法律で個別に解雇が禁止されている期間や事由(労働基準法第19条など)以外の場合も、労働契約法の規定や裁判例における以下のようなルールに従って適切に行われる必要があり、新型コロナウイルス感染症の影響がある場合も例外ではありません。
 経営上の理由から余剰人員削減のためになされる解雇(一般的に整理解雇と呼ばれる)が有効と認められるかどうかは
1・人員削減の必要性があるかどうか
2・解雇回避の努力義務(残業の削減・配置換え・希望退職の募集など)を尽くしたか
3・解雇対象者の選定基準が合理的かどうか
4・解雇手続が妥当(説明、協議などをきちんとしている)であるか
の4つの事項を考慮して判断されることになります。
 雇用期間の定めのある労働者(有期労働契約者)についても、解雇については、右記の4つの事項が考慮されます。それだけでなく、有期労働契約については、労働契約法で「使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定められており、雇用期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の場合に比べて、解雇はより厳格になっています。
 また、雇止め(有期労働契約の更新を使用者が拒むこと)についても、無条件に認められるものではありません。例えば、それまで期限付きの労働契約を繰り返し更新されてきた人が、今回更新を認められなかったとします。その際、社会一般の常識で考えて「期限なしで労働契約をしている人に対する解雇」と同じ意味だと判断できる場合などは、労働者からの更新の申込みを使用者が拒絶することは、厳しく制限されています。
 このように、解雇については様々なルールが定められていますので、総合労働相談コーナーや弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 ~コロナ禍で増え続ける解雇や雇止め~
 厚生労働省では今年の2月から各地の労働局での聞き取りや、ハローワークに寄せられた相談・報告などに基づいて解雇や雇止めの人数を集計しています。 新型コロナウイルス感染症が影響した解雇や雇止めは5月以降に急増しており、その後も増加を続け、9月25日時点で6万923人だったと発表されています。

Case3 借入れ・ローン

以前から借金の返済に苦労していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し、いよいよ返済が困難になりました。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、給与や売り上げの減少だけでなく、企業の倒産(帝国データバンク発表の「新型コロナウイルス関連倒産」によると、2020年9月30日現在で576件)も相次いでいます。
 借金(債務)の返済が困難な状況になる事由は様々ですが、返済のめどが立たないというときには、「債務整理」を行う必要があると考えられます。
 債務整理とは、借金の減額、免除又は支払の猶予を目的として、利息制限法や、手続についての法律(破産法など)を使って債務の整理をすることで、債務者の経済生活を立て直していく手続のことです。
 債務整理には、主に、
1・任意整理
2・自己破産
3・個人再生手続
4・特定調停
の4つの方法があります。
 いずれの方法についてもそれぞれにメリットとデメリットがあるため、各手続の比較、不安な点などについて、弁護士や司法書士などの専門家と相談しながら進めるのがよいでしょう。
 また、新型コロナウイルス感染症による混乱に乗じて、貸金業登録をしていない高利の貸金業者から「前借りだから貸金ではない」と言われ「給与ファクタリング」などに勧誘されて借入れした事案がその後トラブルとなり、裁判となっている事例もあります。金融庁からも注意喚起がされていますので、くれぐれもご注意ください。
 こういった業者から借入れを行うと、あっという間に利息の支払のために他の高利業者に借入れるという悪循環に陥ってしまいます。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて返済に困っている方のために公的な支援制度が様々ありますので、借入れをする前に確認しましょう。

解説 債務整理4つの手続き

1 任意整理

裁判所を利用しない債権者との任意での交渉。債務額全体や月々の返済額を減らすことを目的とする手続きです。

2 自己破産

 裁判所に申し立てる手続き。「保有資産や今後得られる収入」と「債務」を総合的に判断し、すべての債務を完済することが不可能と判断された場合、破産手続が開始されます。その後、裁判所から「免責許可決定」がおりれば、債務の返済をする必要はなくなります。
※養育費や税金など一定の種類の債務は破産によっても免責されません。免責対象外の債務については破産後も、支払う必要があります。

3 個人再生手続

 裁判所に申し立てる手続き。裁判所に債務返済の計画を提出し、認められた場合、減額された債務をおおむね3年かけて支払うことで、残りの債務の支払義務がなくなる制度です。※自己破産と異なり、一部資産の継続保有が可能です。

4 特定調停

 裁判所で、調停委員を介して債権者と債務者が返済方法の話し合いをする手続き。返済内容に合意し調書にすると、裁判上の和解と同一の効力になります。以後は調書の通り返済すればよく、それ以上の取立てを受けることはありません。

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