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Vol.46 坂本 龍一さん

更新日:2019年9月3日

教授、災害と法律のこと、教えてください。

災害と支援について、気をつけていることは。

 坂本さん
 自分にできる支援も、相手に必要な支援も、刻々と変わっていく。災害直後の電気や食べ物、住む所がない状態に、音楽家がドヤドヤ音楽届けに来ました、といっても全く場違いだ。支援する側はよかれと思って押しかけてしまいがちだが、それはやっちゃいけないといつも自分を戒めています。

「こどもの音楽再生基金」のこと

 坂本さん
 被災し、学校の備品である楽器が壊れたので、直して使えそうな楽器は直そうと、全国の楽器メーカーさんと現地にたくさんある楽器店さんに声をかけ、約2千の楽器を一年目に直しました。これが「こどもの音楽再生基金」です。その後、子供たちによるコンサートを3年間やりました。当初3年で終わるはずでしたが、せっかくできた東北の子供たちとの繋がりが名残りおしく、発展的に「東北ユースオーケストラ」を作りました。。

「東北ユースオーケストラ」

 坂本さん
 一番嬉しかったのは、直接の被災者ではない子どもたちが自発的に、被災者支援の交流を始めたこと。被災県のオケといわれても、団員の中には大きな被害を受けていない子も多いのです。そこで自分たちで話し合い、仮設住宅を訪問して直接被災の体験を伺ったり、音楽をプレゼントしたりしています。東北にこだわる理由は、まあ「意地」だなぁ。確かに世間はどんどん忘れちゃう。311以降も毎年のように日本のあちこちで災害がある。温暖化、原発、水害、地震。身体がたくさんあればあっちもこっちもやりたい。でもそうもいかない。そのなかで、せっかくできた繋がりだから、東北のことは忘れないよ、という気持ちは強いです。売名行為だ、という人がいるけど社会的な発言や活動にはエネルギーも日数もお金もかかる。売名行為をやるなら、もっと楽に、もうちょっと効率よくやりたいね。こんなメンドくさいことはしたくないですよ。人はいろいろ言うから面白いけど。

津波で被災した津波ピアノを修復し「async」というアルバムで演奏していますが、人に例えるとどんな感じですか。

 坂本さん
 ウチの父とも懇意にしていた水上勉さんの晩年の書『土を喰う日々』が好きなのですが、水上さん、晩年は自分で畑を耕していて、人間が食べるものは土が作っているので、つまりは土を食べているのだ、という思想に至るのですね。その『土を喰う』という言葉がとても好きで、それを思い出しました。自然の見方を変え、人間と自然が対立しない生き方を模索するということですね。

音楽やアートが災害に対してできること。

 坂本さん
 炊き出しや寄付ではなく、音楽やアートに何ができるかとなると、究極的は災害の意味を咀嚼して自分の作品として表すことだと思います。被災された人達に何ができるか、ということとはまた別ですが。人間の文明と自然との対立という事実を受け取り、よく考え作品にする、ということはいつまでも終わりがない。今もずっと考えています。被災された方に対しては、東北ユースの子どもたちが自主的に仮設住宅へ行ってバイオリンで「ふるさと」を弾くと、聴いている方々が涙される。そこに音楽の持つ慰めや緊張をほぐす力を感じます。ただそれを自己目的化し、慰めてやるんだとか、泣かせてやるんだとかになってしまったら音楽もアートも終わり。肉親を失った心にぽっかり空いた穴はいつまでも埋まらないので、5年経っても10年経っても、音楽を演奏しているときにその穴にちょっと引っかかるというか、感じるものはあると思います。

法律が災害にできること、聞いてもいいですか。

 坂本さん
あ、はい、ひとつ言っていいですか。311のときに強く思ったのですが、前例のないような巨大津波でしたよね。しかし行政は前例主義です。岩手県住田町は林業が盛んで被害が酷かった陸前高田の山側の隣町。自分たちの山から出た木材で仮設住宅を百棟作り被災者を受け入れようとした。ところが行政の決まりで木材の仮設住宅は仮設住宅ではないそう。で、県から援助金が出なかった。住田町の町長は「わかった全部住田町でやろう」と3億円を捻出しました。僕たちはツイッターでこれを知り、見捨てておけないと(坂本龍一さんが代表の)more treesで支援し、寄付集めを始めました。陸前高田にも行き、被災した方々にもお会いました。前例のないことが起こっているのに、昨日までの法律や決め事で対処しようとしている行政はおかしいと思います。市民を守るのが最も大事なはず、それに則した特別立法を作り、例外措置をする。前例は作ればいい。何度も言いますが前例のないことが起こったのですから。

法律が頼りになると思ったことはありますか。

 坂本さん
 だいぶなし崩しになったとはいえ、法律の頂点である憲法のおかげで、戦後70年以上も戦争に参加せず、武力攻撃もされずに日本がやってこられたというのはとても素晴らしいことだと思います。現実的にはアメリカの核の傘の下というのもあるのでしょうけれど。やはり憲法が戦争をしないための武器になってきたんじゃないかなと思います。そもそも憲法というものは、歴史的に、権力の暴走を抑えるためのもの。それが立憲主義であって、そのことを知らない人がいるというのが残念。
 僕は昔は人が決めたことに従うのが嫌いで、ルールは自分で作るという人でした。ギャグじゃないけど、赤信号で渡るなって誰が決めたんだオレは関係ない、みたいなところがあって。でも還暦過ぎて思うのは、いくら僕が作ったルールだといっても人は納得しないだろう。だったら自分の感情とイコールではないとしても、感情で突っ走るより、誰もが納得せざるを得ないルールを使って物事を進める方がよい、と。

法テラスはご存知でしたか。

 坂本さん
 知りませんでした。でもいいこと聞きました。頼るところがないと思っている人が非常に多い、ほとんどの人がまだ知らないと思う。困ったらこういうところに電話すべきだよね。怖い人の言いなりになる必要はないんだと。法律的に本当にそうなのか、強制力があるのか、怖いことされても仕方ないのか、わからない人が圧倒的に多いと思います。

プロフィール

 坂本龍一(さかもとりゅういち)作曲家、音楽家。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年細野晴臣、高橋幸宏と「YMO」を結成、1983年に散開。『戦場のメリークリスマス』(1983年)で英国アカデミー賞音楽賞、『ラストエンペラー』(1987年)でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞。1999年オペラ『LIFE』以降、環境・平和活動に関わることも多く、論考集『非戦』の監修、森づくりを推進する「more trees」の設立など活動は多岐にわたる。

 坂本龍一さん代表の社団法人more trees(モアトゥリーズ)の被災地支援プロジェクト「LIFE311」。東日本大震災発災後に岩手県住田町が町単独で建設した木造仮設住宅の建設費用を支援し、さらに東北の厳しい冬を乗り切るための木質ペレットストーブを寄贈することを目的に民間からの善意を募っている。
外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。https://www.more-trees.org/(外部サイト)
外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。http://life311.more-trees.org/(外部サイト)

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