このページの先頭ですサイトメニューここから
このページの本文へ移動
サイト内検索
本文ここから

Vol.48 太田 雄貴さん

更新日:2020年3月10日

戦略を考える。

フェンシングの魅力を教えてください。

 太田さん
 フェンシングは、戦略を立てられるスポーツなんです。対戦相手がいて、審判がいて、会場の空気もあって、自分が調子良くても相手も調子良ければ勝てない日もある。勝つか負けるかが常に紙一重の中で、勝てる確率が高いところが何処なのかを考えながら勝負できるのが、最大の魅力だと思います。

考えるという要素が多い、ということなんですね。

 太田さん
 そうです。僕自身がこうやって選手からフェンシング協会の会長になっても比較的パフォーマンスが出せるのは、フェンシングという競技の特性があったからだと思っています。考える癖があり、課題が何処にあって、課題解決するために、自分はどれくらい努力しないといけないのか、競技を通して学んだことが、今の自分の職務にマッチしている。それは会社でパフォーマンスを出している人と全く一緒だと思います。

実際にフェンシングのトレーニングの中で考える力が養われるのでしょうか。

 太田さん
 はい。考える力が養われないと勝てません。一度勝つことができても勝ち続けられないと思います。一発屋の若い子もいるんですけど、10年、15年勝とうと思うと、考える力がないと勝てないですね。

フェンシング教育の中に考える力が基本として組み込まれているのですか。

 太田さん
 ないんです。ないんですけど、そこにあるんです。言語化されていないだけで、当たり前のようにして介在しているんです。

本能的でシンプルに闘う形の競技だから、考える要素が多いのですか。

 太田さん
 フェンシングでは、自分自身と向き合うというよりは、相手を研究します。ライバルを会社に例えると、今何処が強くて、誰がキーパーソンで、みたいなこと。「戦略」を考える。僕らの「考える」は、シンク(Think)じゃなくてストラテジー(Strategy)を考えるという感じです。さらには相手の分析も必要だけど、相手と比べるために自分の分析も必要。自分をある程度、可視化、数値化させたものと、相手を数値化させたものをぶつけて、どちらに優位性があるかを見ます。

スポーツを楽しむために必要なことはなんですか。

 太田さん
 スポーツをするとポジティブになると思うんです。体温が上がるので。毎日続けることで昨日できなかったことが今日できるようになる感覚が、スポーツの醍醐味です。僕は最近ランニングをしているんですが、走りこんでいくと、3週間目ぐらいには10キロぐらい楽勝で走れるようになってきます。はじめのうちは、10キロ走ったら膝周りが痛かったのに、今は痛くなりません。

オリンピック招致で努力したことや醍醐味はなんですか。

太田さん
 勝つために、チームがひとつになるような立ち居振る舞いを心掛けていました。役割を決めてはいますが、皆緊張するじゃないですか。僕は少なくとも彼らよりはオリンピックに出ているので、場数は踏んでいる。緊張に対する耐性はある。僕もメチャクチャ緊張するけども、緊張下におけるパフォーマンスだけは絶対負けない、と思うので。手が震えてマイクのスイッチを押し忘れた時に代わりに押したり、マイクついていますと声かけをしたり、進行がスムーズになるよう、誰に言われるわけでもなく指示を出したりしていました。僕らは勝つのがミッションですから、そのためにベストを尽くしました。

太田雄貴さんの号泣映像が有名ですが。

太田さん
 いやー嬉しかったですよね。めちゃくちゃプレッシャーかかっていましたから。少しあの映像の裏話をすると、カメラは一台しかなくて、そこはロゲ会長が発表する演台の目の前。その席に座ったのがたまたま僕だっただけなんです(笑) 皆さんの印象に残っているのは、登壇していた限られたメンバーかと思いますが、オリンピックの招致には二千人ぐらい携わっています。そういった見えにくい裏方の皆さんの頑張りがあったからこそ、招致できたと思っています。 あと、ほかの国の話ですが、発表の場に、2020年にピークを迎える若手の選手たちを百人連れて来ていたんです。これは、とても素晴らしいなと思いました。

選手や協会会長をしていて困ったことや、法律を意識したことはありますか。

太田さん
 あまりないですね。選手時代には、企業との契約について、かな。法に触れるようなことが絶対ないようにしないと、ご迷惑がかかってしまうので。迷惑がかからないような私生活の過ごし方や付き合う人とか、意識していました。協会会長としては、法律に反するということではないのかもしれないけど、利益相反に気をつけています。全日本選手権大会会場で自分の本は絶対売らない、とか。公私混同に見えないようにしています。自分が絡むような話に関しては、自分ではなく理事会もしくは他で意思決定してもらいます。

法テラスをご存知でしたか。

太田さん
 今回のお話をもらうまで、知りませんでした。できればお世話にならないように、いい意味で、ちゃんと頑張らなきゃな、と思いました。でも、いつそうなるかわかりませんしね。知っているというだけで全然違いますね。

プロフィール

太田雄貴さんの写真

太田雄貴(おおたゆうき)
(元フェンシング選手、国際フェンシング連盟副会長、日本フェンシング協会会長)
小学3年生からフェンシングを始め、インターハイ3連覇、アテネオリンピックで9位、北京オリンピックでは日本フェンシング史上初銀メダル。2012年ロンドンオリンピックではフルーレ団体で銀メダル。2015年には世界選手権で日本人初の金メダル獲得。2016年に現役引退後もフェンシングの普及に取り組み、現在は日本フェンシング協会会長、国際フェンシング連盟副会長を務める。著書に「騎士道」(小学館)、「騎士の十戒」(角川グループパブリッシング)、「CHANGE僕たちは変われる 日本フェンシング協会が実行した変革のための25のアイデア」(文藝春秋)

サブナビゲーションここから

広報誌「ほうてらす」インタビューバックナンバー

このページを見ている人は
こんなページも見ています


以下フッタです
ページの先頭へ