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早く原発を止めて、普通の弁護士になりたい(スタッフ弁護士OB 中野宏典弁護士)

更新日:2021年2月3日

スタッフ弁護士OB 中野宏典弁護士

 中野宏典弁護士の「司法過疎地開業のスゝメ」は既に多くの方にご覧いただいたところです。実は、中野弁護士は司法過疎地で開業しているという以上に、日本各地の原発差止訴訟に関わっているということでスタッフ弁護士界隈では有名です。今回は、中野弁護士のもう一つの顔について質問してみました。

Q1 原発差止訴訟には、法テラス江差法律事務所に赴任中から関わっていたということですよね。どうして、スタッフ弁護士をしながら原発訴訟に関わるようになったのですか。

 原発の差止関連訴訟に関わるようになったのは、福島第一原発事故直前の2010年7月です。法テラス江差に赴任して、約半年後ですね。函館の対岸の青森県大間町で大間原発が建設されようとしていて、それに対する建設差止訴訟が提起された直後でした。

 函館のある弁護士から、弁護団に加わってほしいと声をかけていただき、こう言ってはなんなんだけど、本当にかるーい気持ちで弁護団に加わりました。江差に赴任したばかりで、函館の弁護士とも仲良くなりたいなあと思っていた時期でしたし、まだ弁護士2年目だったので、できるだけいろいろな弁護士と一緒に仕事をして、スキルアップしたいと思っていたことが主な動機で、原発を止めたい、というような純粋な思いはほとんどありませんでした(汗)。まだ、福島第一原発事故の前で、今振り返ると恥ずかしい限りなんですが、本当に無知でしたので。

 ところが、翌年3月に福島で事故が起こって、地震の時、ちょうど大間原発差止訴訟の2回目の期日だったのですが、もうなんというか、呆然としました。しばらくは全然頭も働かなくなってしまって、でも、あの時、日本中の人が思ったと思うんだけど、いつまでも呆然としていてはいけない、自分にできることをやるしかない、と。本当に軽いノリで加わった弁護団でしたが、自分が原発の差止訴訟に関わっているということを改めて考え、この訴訟だけは全力でやろう、絶対にこの原発を止めよう、それが自分にできることだ、と決意しました。

 そこから必死に勉強していたら、いつの間にか各地の弁護団に呼ばれるようになっていった、というのが原発差止訴訟に関わるようになった経緯です。

Q2 現在関わっている原発関係の訴訟事件について教えてください。(※件数、関与開始時期、現在の進捗など)

 福島第一原発事故後、仮処分を含め、のべ27件程度の事件に関与して、現在係属中のものは12件でしょうか。大詰めを迎えているのは東海第二原発の差止訴訟で、2020年6月に結審して、2021年の3月に判決が出る見込みです。また、2020年1月17日に広島高裁で出された伊方原発の差止仮処分(差止認容)に対する異議審も大詰めで、2020年12月24日に審尋が行われた後、2021年3月ころには裁判所の判断が出される見通しです。

Q3 そもそも、原発差止訴訟って高度に専門的で非常に難しい分野だと思います。関わるにしてもかなりハードルが高いように思うのですが、どうやって関わっていったのでしょうか。

 確かに難しいというか、理系的な理解が必要な部分はありますが、そのような知識がなければ関われない、ということはないと思うんです。弁護団なので、中にはもちろん以前から原発差止訴訟に携わっていて、知識も豊富な先輩方がたくさんいます。その人たちと同じようになろう、というのではなく、何の知識もないド素人だからこそできることがあるんじゃないか、と考えました。

 原発差止訴訟に関わるようになった時点でぼくにできたことは、2~3年目とはいえ法律家ですから、まずは原発差止裁判の判決を全部読む、ということでした。それまでの原発差止裁判の判決なんて、せいぜい30~40個程度だったので、科学的で難しいところは飛ばし読みしながら(笑)、どのような法律論に基づいて棄却されているのかなど、いわゆる司法審査論について、自分に理解できる範囲で整理していきました。ぼくはロースクール出身だったので、行政法に関しても、先輩方に負けない強みになるかもしれない、という思いもありました。

 それともう1つ、先輩の書面や口頭説明に対して、「意味が分かりません」「何の知識もないぼくを説得できなければ、裁判官を説得できるはずがありません」などと、小生意気なダメ出しをしまくる、ということをやっていました(笑)。知識が増えると、前提を飛ばしたりして、素人に分かりにくい説明になってしまいがちです。長年原発訴訟に携わってきた先輩方は、ものすごい知識がありますから、かえってそれが盲点になって、裁判官に伝わりにくくなってしまっているんじゃないか、そこを指摘することが、ぼくの役割になるんじゃないか、と思ったわけです。弁護団事件って、役割分担が大切で、何はともあれ、自分にできる形で関わればいいんだと思います。
 本当に、よく先輩方が怒らなかったなあ、と思い返すとヒヤヒヤしますが(もしかすると怒っていたかもしれませんが…笑)、こんな若造の生意気な意見も聞いてくれた先輩方がいたことも、恵まれていたなあと感謝に堪えません。今は中堅クラスになってきましたが、後輩からダメを出されても、因果応報と思って謙虚に耳を傾けよう、と観念しています(笑)

Q4 これまで原発差止訴訟に関わってこられて、件数でみたときの原発訴訟とその他の事件の割合、また、それぞれに割いている時間配分を教えていただけますか。

 一般事件と原発事件との割合が6対4か、7対3くらいのイメージでしょうか。そもそも、ぼくがやりたいのは司法過疎地での仕事ですし、本当は原発訴訟なんてちっともやりたくないんです(笑)。今は、通常の業務が終わった後の、本来なら家族と過ごしたり、趣味に費やしたり、眠ったりする時間をごそっと削って原発差止関係の仕事をしている、という感じです。

 だんだん年齢も上がってきたので、同じようなやり方が続けられるとも思っていません。一日も早く全国の原発が止まって、原発訴訟は終わりにして、もう少し人間らしい生活がしたいなあ、切に願っています(笑)。

 日弁連の視察で海外に行くことも多いのですが、国際的に見れば原発は完全にオワコンで、エネルギー革命と呼ばれるような再生可能エネルギーへのシフトチェンジが起こっています。どの国も、原発が安全か危険かなんていう議論はしてないんですよ。再生可能エネルギーの方がはるかに安全で安く、タフなエネルギーと考えられています。それほど、この10年をみても、技術革新が進んでいるんですね。日本も、いつまでも原発に固執せず、一刻も早く再生可能エネルギーへ切り替えなければ、世界から取り残されてしまうと思います。これは、弁護士という立場を超えて、いち日本人として、わりと切実に思っていることです。

Q5 では、原発差止訴訟に関わってきて、印象的なことや醍醐味(楽しいところ)は何でしたか。

 うーん…。やっぱり現実に差止めが認められたときは感慨深いです。福島第一原発事故後、これまで(令和2年12月18日現在)に、行政訴訟で1件、民事訴訟で1件、仮処分で5件の差止認容判断が出ていますが、ぼくはそのうちの3件に関わっています(うち2件は高裁の判断)。ぼくが関わったのはいずれも仮処分で、決定が出ると直ちに差止めの効力が生じますので、現実に原発が止まります(あるいは動かせなくなります)。もちろんぼく一人の努力ではないわけですが、自分が関わることによって社会が変わるということを端的に感じられるという意味では、やっぱり醍醐味かなあと思います。ただし、これはいい意味でも悪い意味でもそうなので、責任が重いというか、大それたことをやってるなあ、という気持ちもあります。なので、差止めが認容された瞬間も、喜びというのは実はあまりなくて、どちらかというとほっとしたような、全身の力が抜けるような、そんな感覚ですかね。

 それと、一番ありがたいなあと感じるのは、弁護士はもとより、一般の方も含め、全国各地にいろいろな知り合いができることです。ぼくは今でも司法過疎地で仕事をしていますので、そこで働いているだけでは出会えない各地の弁護士や面白い生き方をしている方々に出会えます。大間原発でいえば、毎年一回、大間町の原発敷地に隣接する場所で「大MAG ROCK」という反核ロックフェスをやっていて(だいたい7月ころです)、ぼくももう6~7回出演させてもらっているのですが、とっても面白い人たちが集まってきます。本州最北端で、移動に時間はかかりますが、おいしいマグロや海の幸も食べられますので、ぜひお越しいただきたいです。

 あ、そうそう、それと、全国各地の美味しいカレー屋さんを食べ歩くのも楽しみですね(笑)。原発差止訴訟の弁護士の間では、「中野はカレーをご馳走しさえすれば仕事をする」ということで有名になりつつあります(笑)。とある原告団から、1瓶22皿分のカレーの瓶を、1ダースいただいたこともありました。264皿分なので、よく賞レースの副賞で、「~1年分」とかありますけども、それくらいの量です。いや、まあ、それなら現金で…と思わないではありませんが(笑)、まあ、「no curry, no life」ですので、これからもカレー道に精進していきたいと思います。

Q6 最後に、中野弁護士の他の顔についても少しだけ紹介してもらえますか?

 睡眠時間や趣味の時間を削って、と言いましたが、音楽は、ギターで自作の曲を歌ってるんですけど、ほそぼそとライブをしたりしています(笑)。恋愛の曲とか全然なくて、暗い曲が多いんですけども。ひどい時は、その日のセットリスト5曲中、4曲が人の死にまつわる曲だったりとか(泣)。後で気づいて愕然としましたね(笑)。でも、おかげでというか、音楽で知り合う人も多く、音楽に限りませんが、普段の仕事とは全然違うジャンルの人たちと話をするのは、とても刺激的です。

 あとは、地元で「こぶたの会」という絵本の読み聞かせボランティアに参加してまして、小学校に読み聞かせに行っています。もともと絵本が好きで、自分でたくさん集めたりしていたので、好きな本を好きなように読む、という、自分勝手な読み聞かせですが、ライブの延長みたいな感じで楽しんでます。

 結構楽しんでるんじゃないか、と言われると、まあ、ぐうの音も出ませんが(笑)、まあ、楽しみながらじゃないと続けられませんからね。

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