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刑事弁護を通じて人権を守る弁護士の原点(2)

更新日:2018年6月28日

法テラス沖縄法律事務所 釜井 景介 弁護士(43期)

沖縄で刑事事件に取り組む

その後、法務省への異動を経て、平成18年4月から法テラスの初代財務会計課長を務めました。
その年の10月下旬頃、法務省には戻らずに法テラスのスタッフ弁護士として沖縄に行こうと決めました。
いつか弁護士として刑事弁護をやりたいという想いは、ずっと持っていました。
新しい仕事に取り組んでそれなりの成果を挙げるには、未知のものへ挑戦する気力が必要です。
一流の弁護人になるためには今しかないと、なぜかこのとき思いました。44歳のときです。

法テラス沖縄法律事務所では、スタッフ弁護士の業務の8~9割が国選の刑事事件です。
国選刑事事件を集中的に担当するスタッフ弁護士は、さながら、アメリカの公設弁護人(Public Defender)のようです。
裁判官時代にアメリカに留学したとき、「人権侵害は最も弱い立場にある人たちから始まる。刑事事件の被疑者・被告人に対する人権侵害は一般市民への人権侵害へとつながっていく。だからこそ、刑事弁護人として被疑者らの人権を守ることは重要なことだ。」と刑事弁護の重要性を熱く語る連邦公設弁護人事務所長の話に感銘を受けました。
日本にこのような制度ができたら、公設弁護人になってみたいと思っていました。
それから15年を経て、その夢が実現しました。
 

刑事弁護で大切にしていること

犯罪の成立自体を争う否認事件では、とにかく、被疑者・被告人の言い分をじっくり聞くことが大切です。
表現力に乏しい方がほとんどなので、言い分を正確に把握するというのは意外に難しいものです。

日常的に扱う刑事事件の大半は自白事件(犯罪の成立を争っていない。)です。
日本の刑事裁判官の多くは、個々の事件において、当事者の法廷活動内容に関わらず、あるべき結論を追求するというスタンスを取っていることもあり、自白事件の場合、誰がどう弁護しても同じような結論になることが多いかもしれません。
私としては、裁判の結論と関係するかどうかということではなく、2つのことを大切にしています。

1つは、裁判に意味を持たせることです。被疑者・被告人とじっくり話をして、本人に事件について考え、犯罪と向き合ってもらう。考えたことを法廷できちんと話してもらう。
その結果として、あるべき判決になり、本人の更生にもつながる。裁判官当時、被告人に対し、何か心に残る一言、社会復帰後犯罪への誘惑に駆られた時思い出すような一言をかけてあげたいと思い、自分なりに工夫していました。
今も同じ気持ちです。
弁護人だからこそ、知ることができる情報もたくさんあります。裁判を通じて、被告人らが何か一つでも新たな発見をし、更生の路を歩んでもらえたらと思っています。

もう1つは、社会復帰後に再犯しないための環境整備(親族や公的機関等からの支援を受けられるような体制の整備)をすることです。
これは、多くの弁護人が取り組んでいることであり、特に目新しいことではありません。
ただ、私自身が注意しているのは、本人への押し付けにならないようにすることです。更生するためには、周囲の支援も大事ですが、やはり本人の意欲が肝心です。私自身が、彼らの更生をずっとフォローし続けることはできません。
だからこそ、何とかして彼らの意欲を引き出すように努めています。結局は一つ目のことと同じことかもしれません。

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