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共感ではなく、理解する

更新日:2020年9月30日

法テラス本部 川澄 馨子 弁護士(新63期)

 私が弁護修習中、指導担当の先生から言われた言葉で、大切にしている言葉です。依頼者と向き合うときに、共感をして同化するのではなく(刑事事件など、現実的に共感しがたい事件もたくさんあります)、また理解できないと無下にするのでもなく、背景にある人生を知り、置かれた立場や状況を理解し、尊重することが必要という意味だと理解しています。
 
 令和2年1月半ば、今年弁護士になったばかりのスタッフ弁護士の自己紹介を聞きました。そこには「いろんな人生に触れたい」「事件の背後にある人生の物語が好き」と話す新任スタ弁がいました。
 
 スタッフ弁護士は、本当に多くの人生とかかわります。いままで自分の周りでは経験していないような経験をした人とたくさん出会います。いうまでもなく、事件の依頼者との出会いは、その一つです。子どもを抱えてDVから逃げて一生懸命生活をしているお母さん、刑務所に行って初めて自分が失踪宣告をされていることを知った方や自分の戸籍がどこにあるのかわからなくなってしまった方、お金がなくてお賽銭を盗んでしまう高齢者、……時にやるせない気持ちになることもあります。出て行った息子が原因で家を出ていかざるを得なくなりながらも、息子のことを一番に考えていて、でも息子と再会することなく亡くなった高齢者の方もいました。
 もちろん、人生の嬉しい場面に立ち会うこともあります。私が付添人として担当していたある少年は、5年以上たっていたにもかかわらず、「弁護士に相談したい事ができた」といって、私に電話をくれました。彼は、家庭を持つ立派な青年になっていました。しっかりと自立した元気な声を聴いて、事件後の彼の頑張りを思い、なんとも頼もしく嬉しい気持ちになりました。
 また、スタッフ弁護士がかかわるのは、依頼者だけではありません。依頼者の支援やその他の活動を通してかかわる人々にも、様々な個性と物語があります。私は、静岡、東京と赴任していますが、そのいずれでも、福祉関係者の方々とも多く一緒に仕事をしていました。
 静岡では、刑務所などで働く社会福祉士、子どもの居場所を提供するスクールソーシャルワーカー、NPOを立ち上げて更生支援をしている支援者、福祉や司法に積極的にかかわる学生、赴任していた新聞記者、法務局の職員……多くの熱い志を持った人たちに出会いました。時に一緒に依頼者の支援を行い、時に勉強会をしたり、時に一緒にお酒を飲んだり、様々な形で一緒に活動しました。
 みんな、熱い志の背景にそれぞれの人生や思いがあり、その話を聞くことは私の楽しみの一つになりました。この方々と知り合えたことは私の大きな財産になっています。静岡から離れて久しいですが、その後も連絡や相談をしてくれたりしていました。今では、あまり関われることも少なくなっていますが、時々、みんなの取り組みをホームページなどで見て、元気をもらっています。

 これからも、多くの人生とかかわるスタッフ弁護士だからこそ、その人生を、思いや生き方を理解し尊重して向き合っていきたいと思います。

静岡の風景


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