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独立して振り返る、「スタッフ弁護士でよかった」

更新日:2020年9月30日

とうおん法律事務所 高橋 宏典 弁護士(スタッフ弁護士OB)

とうおん法律事務所


 法テラスを辞めて改めて感じるのは、弁護士としての最初の4年(養成時代含む)を公設事務所、法テラスのスタッフ弁護士として過ごせてほんとに良かったということです。
 それは、なぜか。
 漠然とスタッフ弁護士でよかったとなぜ思っているのだろうか・・・(辞めたくせに)。と改めて考えてみると・・・・

「スタッフ弁護士でよかった」 4つの理由

 まず一つ目は、地縁のないフィールドで一から活動できるという面白さなんだと思います。法テラスの赴任がなければおそらく愛媛には一生?来なかったかもしれません。それがポンと赴任して誰も知人・友人がいないところから3年間過ごして、「あ、ここで弁護士しよう」と思って今がある。その偶然性みたいなものが面白い。今でもなんで自分は愛媛にいるのだろう?とふと思うことがあります。愛媛での3年間では、本当に自由に活動をさせてもらい、地方公共団体との連携活動、触法障がい者支援、こども食堂との連携等自由に活動を広げることができました。もちろん委員会活動も幅広く行い、刑事弁護においては、日弁連の委員に加え、赴任最終年には刑事弁護委員会の副委員長にもなっていました。
 
 二つ目は、やはり採算を気にせずに仕事ができたことです。最初の4年間でこれが出来たことは財産です。独立するとどうしても採算というものを意識したくなるときがあります。それでも法テラス時代の経験から「採算なんてケチ臭いこと言わない言わない」と自分を鼓舞できるのは4年間があるからなんだと思います。法テラスの3年間で常に意識していたのは、どれくらいの事件数をかかえるとどれくらいしんどくなり、だいたいどれくらいの売り上げあるのかの目安でした。法テラス愛媛は、本所型ですので扶助と国選のみの受任になります。その中でどれくらいの売上が見込めるのかを測っていました。おかげで独立してからも「仮に全部扶助国選でもこれくらいの売上はある」というのが見えていましたから過剰に弁護士の採算を気にするようなことはなく、目の前の事件に集中することができました。ちなみに今でも法テラスの出張相談に行くことが年間10件くらいはあります。研修講師や講演も年間10件以上しています。ときには法テラスの業務説明をしに行くことすらあります笑。いずれもペイするペイしないで言えば、ペイしません笑。それでも、これを続けていくことが自分の理想とする弁護士像なんだと思っています。そう思える礎にスタッフ弁護士の先輩方の姿、自分の今までの活動があると感じています。
 
 三つ目は、人脈が広がることでしょうか。地方で独立することの一つのデメリットとしては、東京や大阪と比較すると研修の量・質など情報格差があることです。どうしても油断をすると先進的な議論に乗り遅れてしまいがちです。法テラスの同期、諸先輩方は各部門で先進的な活動をされています。そうした弁護士とつながっているというのは地方で開業する上では非常に貴重だなと感じています。東京・大阪での研修などの情報が入ってきますから気になるものがあるときは、東京や大阪に出向くこともありますし、呼びたい講師を呼んで愛媛での研修を企画することもできます。
 
 最後にもう一つ。これは、弁護士として数年仕事をした後に、更新時期を機に次の選択肢を選べるということかなと思います。多くの弁護士は、修習生の間に「想像」に基づく弁護士像を追いかけ、就職活動をして、基本的にはそこにい続けようと思って就職をする人が多いのかなと思います。しかし、実際に仕事をするとミスマッチがあり、辞める人、辞めないまでも違和感を持ちながら仕事をしている人がたくさんいます。法テラスの場合、実際に弁護士として勤務をしている中で、自分が何が得意で、どういうことをやりたいのか、「想像」ではなく「実践」に基づいて目指していく弁護士像を構築でき、その上で次のステップとして、法テラスを更新する、法テラスを辞め独立する、知り合いの先生の所に入る。場所も赴任先、養成先、地元等など選択肢が豊富にあります。一度就職してしまうとマンネリになりがちな中、自分のためにどの選択がよいのか、これを考える機会が強制的にあるというのはすごく有り難いことかなと思います。

スタッフ弁護士としての「実践」、辞めてからの「実験」、そして

 ちなみに私は、4年間の「実践」の中で目指していく弁護士像が、法テラスに入ったときと大きくは変わらず、刑事弁護がやりたい、アクセス障害を解消したいというものでした。ただ、「実践」の中でこれに加わったものがあります。それは、東京、大阪と地方との情報格差を解消しなければいけないというものでした。東京、大阪では当たり前に行われている活動が地方ではされていない。地方にいるだけではそのことに気づかないし、気づけない。外から、中からつついていかないといけないのではないか。ということでした。 それもあり、愛媛に残ることを考えるようになりました。ではなぜ法テラスを辞めたのか。一つの理由は、司法アクセス障害との関係で一つ実験をしてみたくなったからです。それは、裁判所から離れた地域に「いつでも連絡ください。お電話お待ちしています。」と言うのと「あ、法律事務所作りました。用があればどうぞ」というのでアクセス障害解消の程度に違いがあるのかということです。私は、法テラス愛媛法律事務所にいるときに、関係機関から電話相談がしやすいように専用のホットラインを作り、前者を実践してきました。
 しかし、このホットラインの利用は、市町によって偏りがあり、なかなか利用の進まない市もありました。そこで、私は、あまり利用が進まない市に法律事務所を作ってみようと思ったのです。そんなこんなで松山市の隣の東温市というところで、東温市初の法律事務所として独立することとしました。開所して1年以上経ち、まだ実験の最中ですが、おそらく東温市の扶助相談数はこの1年でそれなりに増えたのではないかなと思います(統計的な数字が見れない立場ですのでなんとなくの感触でしかないですが)。ゼロワン解消等と言われていますが、あれはあくまで裁判所のある地域(本庁、支部)単位でのもので、裁判所すらない市町の人々にとっては、まだまだ弁護士へのアクセス障害は残っています。
 今後も3年を一つの目安に新しい選択をしていきたいなと思っています。もちろん事務員さんの雇用や家族のこともありますから自由すぎることはできないかもしれませんが・・・笑。
 
 

【高橋宏典弁護士の略歴】
2015年1月 弁護士登録(東京パブリック法律事務所にて法テラス・スタッフ弁護士としての養成を受ける)
2016年1月 法テラス愛媛法律事務所赴任
2019年1月 法テラスを退職し、愛媛県東温市に市内初の法律事務所「とうおん法律事務所」を開設

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