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司法過疎地には仕事がないんじゃないですか?

更新日:2020年9月30日

法テラス雲仙法律事務所 村林 尚孝 弁護士(68期)

長崎県の法テラス雲仙法律事務所に赴任をしている村林尚孝と申します。
司法過疎地域にある当事務所の活動についてご質問をいただきましたので、お答えします。
 

Q 司法過疎地域でできる仕事って、債務整理とか離婚だけですか。そもそも、弁護士の仕事がないから「司法過疎」なんじゃないんですか。

法テラス雲仙法律事務所は長崎県の島原半島にある「雲仙市」(人口約4万3000人)にあります。同市に所在する法律事務所は当事務所のみ、弁護士の人数は去年の10月に当事務所の配置人数が2名になるまでは、ずっと1人でした。また、隣の「南島原市」(人口約4万5000人)には弁護士が1人もいません。
このように弁護士数が少ないことから、当事務所には、毎年約250件から300件の相談があります。相談内容も、債務整理、離婚などのみではなく、事業者からの相談もあり、幅広くなっています。
刑事事件についても、雲仙警察署管内の当番・国選の担当は当事務所の弁護士のみなので、365日、当番・国選待機をしています。裁判員裁判対象事件が地域内で起こった場合は、当事務所が担当します。
「(司法)過疎地に弁護士がいないのは、弁護士の仕事がないからだ」などと言われることもありますが、(少なくとも雲仙では)そんなことはありません。
 
 

Q 色々な相談以外に裁判員裁判事件もあるんですか。そうすると、案件への対応だけで手いっぱいになりますね。

そうでもありません。
当事務所は、島原半島内各市(島原市・南島原市・雲仙市)の「地域包括支援センター」、「社会福祉協議会」、「成年後見センター」、「消費生活センター」、「福祉事務所」などとつながりがある他、地域内の病院、施設などともつながりがあり、相談を受ける、会議に出席するなどしています。
島原半島内各市は、いずれも高齢化が進み、かつ、障がい者施設も多いことから、成年後見制度に関する相談が多いことが特徴です。
最近では、「成年後見利用促進法」の施行により各市から問い合わせがあり、社会福祉協議会の法人後見事業の準備委員会や成年後見制度利用促進に関する委員会の委員に就任し、活動しています。
このように制度の構築に関わる機会も増えています。
 
 

Q あ、「司法ソーシャルワーク」と呼ばれたりする活動ですね。雲仙には「社会福祉法人 南高愛隣会」があると聞いたことがあります。何か連携はしているのでしょうか。

「罪に問われた障がい者」への支援について、「社会福祉法人 南高愛隣会」が運営する「長崎県地域生活定着支援センター」、「更生保護施設 雲仙・虹」などの取組みをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
一般的に、これらの組織との連携というと、弁護士が受任した刑事事件について協力を依頼するということを思いつかれるかもしれません。私も、受任した刑事事件について協力をお願いしたことがあります。
加えて、当事務所は、刑事事件終了後の支援にもかかわっており、各種会議へ出席してアドバイスを行う、元被疑者・被告人・受刑者の債務整理や成年後見申立などを受任するなどしています。このような「刑事事件終了後」の支援にも、弁護士が積極的にかかわっていくべきと考えて活動しています。
 
 

Q そんなにたくさんの活動をするのに、過疎地で1人って大変ですね。

「大変ではない」というと嘘になります。実際、苦労することは多いです。特に2人に増える前は大変でした。
ただ、法テラスでは、「業務支援室」、「裁判員裁判研究室」に相談することができる他、内線で他の事務所のスタッフ弁護士に相談をすることもできますので、相談相手がいないということはないと思います。
また、「1人っ子会」という、法テラスの1人事務所に赴任している(していた)方の有志で団体を立ち上げ、意見交換をしています。
他にも、弁護士会・弁連の委員会活動に参加するなどして、1人で孤立することがないよう、心がけています。
 
 

Q 法テラスという組織ならではのメリットを生かしながら活動しているんですね。せっかくなので、わが町自慢もしてもらえますか。

(もしかしたらご存じない方も増えているかもしれませんが)雲仙といえば、噴火をした雲仙普賢岳・平成新山(写真・左)が有名だと思います。火山があるので、温泉も多くあり、当事務所の斜め前にも温泉施設があります。また、当事務所前は海(橘湾)で、事務所から海に沈む夕日を見ることができます(写真・中)。
他に、行政事件でも有名となっている諫早湾干拓堤防もあります(写真・右)。

Q 最後に、法テラスへの就職を検討している方へ一言お願いします。

司法過疎地への赴任希望者が減っていると聞いています。
確かに、事件対応も、住環境も、大変なことは多いです。
しかし、司法過疎地では、弁護士の数が少ないことから、様々な事件を経験することができ、また、講演・各種委員への就任など、弁護士として成長する機会が数多くあります。司法過疎地への赴任を希望して下さる方が一人でも増えることを願っています。

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