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接見妨害に対する国家賠償請求訴訟を終えて

更新日:2019年3月1日

法テラス倉吉法律事務所 松本 邦剛 弁護士(67期)

平成30年11月26日、刑務所職員による接見妨害に対する国家賠償請求訴訟(鳥取地方裁判所(ワ)第95号事件)で、一部認容判決を得ましたのでご紹介します。
(同訴訟は、当事者双方が控訴しなかったので同年12月11日に確定しました。)
 

事案の概要

本件は、弁護人(私)が申し出た裁判所構内での接見について、裁判所が勾留質問室での接見を認めたにもかかわらず、刑務所職員が、アクリル板がないことを理由に接見時の刑務官の立会いを求め、その求めを弁護人(私)が拒否したところ、接見をさせずに刑務所に連れて帰ったという事案です。

 

訴訟に至る経緯

当時の被告人は、「求刑が厳しい」、「控訴するかもしれない」などと述べていたことから、判決直後に、判決内容の説明や控訴意思の確認等をするために、私は構内接見をするつもりでいました。

実際には、刑務所職員は接見をさせずに、被告人を連れて帰ったのですが、そうなるまでの間、刑務所職員と裁判官及び私との間で、お互いの意見・見解を述べ合うことになりました。

そのやりとりの中で、私が最も納得できなかったのは、刑務所職員が、「刑務所は裁判所の指揮・命令下にないので従うつもりはない」、「倉吉以外の支部でも立会いを付して面会を行っている」と述べたことでした。

当然、弁護士も裁判所の指揮・命令下にはないですが、不服がある場合は法令や規定に基づき異議を述べ、規定がなければ、裁判所構内では裁判所の施設管理権を基本的に尊重します。

また、接見室が整備されていない倉吉以外の裁判所でも接見交通権が侵害されていることを知らされたことは(そのことを伝えて私に諦めさせようとしたことも)、私個人の問題を超えて、弁護士全体の問題であると思いました。
このような問題意識を持ったことから、鳥取県弁護士会の弁護士や日弁連の接見交通権確立実行委員会に相談したところ、総勢75名の弁護士に弁護団に加入いただき、私を原告として、国賠訴訟の提起に至りました。

判決の意義について

本件の判決は、
(1)接見交通権の価値及び構内接見の意義を再確認する契機となったこと
(2)刑務官らは,裁判所が認めた接見が行われるように配慮すべき職務上の法的義務を負う旨を明示したこと
(3)裁判所の中では、被告人の逃亡や罪証隠滅のおそれについて、刑務所職員ではなく裁判所の判断が優先される旨が確認されたこと
の3点が重要な意義を持つと考えています。

松本弁護士

最後に

私は法テラスの常勤弁護士ですが(法務省の予算の中から給料を得ていますが)、国を訴えること(法務大臣が被告の代表者であること)について何の躊躇も遠慮もしていません。
当然、法テラス本部から苦言を呈されたことなどありません。

また、実際の訴訟では、鳥取地裁倉吉支部管内の弁護士として、鳥取県弁護士会の一員として、全国の弁護士の一人として、国賠訴訟を戦うことになりましたが、法テラスの弁護士であることがネックになったことなどありません。
 
私たちは法テラスの職員ではありますが、それぞれが独立した一人の弁護士ですので、当然に職務の独立性が確保されており、今回のように、自らが原告となる場合にも、提訴する自由は確保されています。
このように、法テラスに入ったとしても、何の遠慮もなく弁護士活動ができますので、安心して私たちの仲間になってほしいと思っています。

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