意思決定支援を日々の業務に活かすために
更新日:2019年6月5日
法テラス埼玉法律事務所 水島 俊彦 弁護士(新61期)
こんにちは。
現在、埼玉県内でスタッフ弁護士として働いている水島俊彦と申します。
大阪での1年間の養成期間を経て、法テラス佐渡(新潟県)、法テラス東京(うち1年間、英国留学)、法テラス八戸(青森県)、法テラス埼玉と異動し、気付いてみればスタッフ弁護士の経験が10年を超えました。
2019年1月からはシニアスタッフ弁護士の立場で勤務しています。
私が特に関心を持って取り組んでいるテーマは「成年後見制度と意思決定支援」です。
きっかけは、2010年1月から2013年10月まで赴任した法テラス佐渡法律事務所での出来事でした。
業務を通じて成年後見人のなり手不足の問題に直面し、佐渡市で成年後見プロジェクトチームを立上げ、社会福祉協議会等と協力して法人後見団体の設立や市民後見人の育成等に携わることになりました。
そのときに得られた経験から、本人の意思決定を支援することに関心を持ち、2013年11月に法テラス東京法律事務所へ異動した後、1年間英国エセックス大学ヒューマンライツセンターの客員研究員として、英国の成年後見と意思決定支援に関する研究に従事することとなりました。
帰国後、2015年11月に法テラス八戸法律事務所へ赴任した後は、海外で得られた知見を活かして、生活困窮者をはじめ、認知症高齢者、障害のある人への支援を中心に行いました。
日々、自動車で三戸郡部を巡り、ご本人、親族、関係機関とのケース会議を日常的に実施するとともに、この地でも、成年後見プロジェクトを立ち上げ、県全域での成年後見制度実態把握調査に繋がる活動のお手伝いをいたしました。
2018年3月に法テラス埼玉法律事務所に赴任してからは、日々の業務を行いつつ、日弁連高齢者・障害者権利支援センター第三部会(成年後見制度・意思決定支援部会)での活動や、厚生労働省の意思決定支援ガイドライン研究事業の研究協力員、国の成年後見利用促進専門家委員を兼務するなど、様々な経験を積ませていただいています。
今回は、私の日常の業務についてご紹介します。
法律事務所に相談に来ること自体が難しい方の出張相談や自ら支援を求めることが難しい方の特定援助対象者法律相談援助をメインに行っていますが、訪問の際、私がよく使う「道具」を以下にまとめてみました。
- 1 意思決定支援ツール
認知機能に障害のある人、耳の聞こえない人、目の見えない人等とのコミュニケーションを円滑に図り、ご本人による意思決定を促進するために、様々な支援ツールを持ち歩いています。英国式トーキングマット、指差し用絵カード、音声を文字化するアプリ、筆談ボードなどなど、その人に併せて最適なツールを選択して相談に臨みます。
- 2 ホワイトボードマーカー
様々な困りごとのあるご本人をサポートするチームの一因として、日々、ケース会議等に参加し、本人や支援者の皆さんと一緒に課題に取り組んでいます。会議で有用なのがホワイトボード。会議ではホワイトボード係を担当することも多いのですが、備え付けのマーカーのインクが切れていることもしばしば・・・。ということで、マイペン(黒、赤、青、緑、オレンジ)を持ち歩いています。必要に応じてファシリテーター(議論の促進役)を担うこともあります。
- 3 法テラスネックストラップ+各種リング
すぐに法テラスの弁護士だと分かっていただくためにネックストラップをつけています。加えて、認知症サポーター講座修了者に配布されるオレンジリングや英国アルツハイマー協会のブルーリング、障害者権利条約に関する国際会議のホワイトリングをぶら下げており、皆さんに意思決定支援について関心を持っていただくきっかけづくりに一役買っています。
障害のある人への意思決定支援(合理的配慮)は難しいとよく言われますが、ご本人との心のチャンネルを合わせるための過程を関係機関の皆さんと一緒に辿っていけることは、私自身とても楽しく思っています。
このコラムでスタッフ弁護士としての活動や意思決定支援に関心をもっていただいた方は、ぜひご連絡いただけると幸いです。