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刑事事件にからむ司法と福祉の連携―離れた2つをつなぐひと 2

更新日:2018年6月28日

浮き彫りになる司法と福祉の厚い壁

 福祉関係者からは、司法関係機関と連携する上での懸念材料として「弁護士からの丸投げ」の問題が投げかけられています。
 その点について、遠藤弁護士は次のように話しています。
「弁護士は、捜査段階ないし公判段階の一時的な関わりの中で最大限の材料(情状)を引き出そうとするあまり、福祉側に無理を押し付けたり、公判後は対象者に見向きもしないといった事態が実際に起こっています。弁護士は刑務所へ入るところまでの本人しか基本的には見ていません。福祉側から聞く言葉は、

 『弁護士は一時の関わりだが、我々は引き受けたら一生の関わりなんだ。そこを考えてほしい。』

 そもそも、司法側と福祉側では、出所者に対する関心が根本的に違います。司法側としては、“再犯防止”、福祉側としては、“人生のやり直し”という部分に主眼が置かれています。福祉としては、その人に応じた支援を行うことが目的で、例えば施設に入所し、新しい友人関係が築け、打ち込む仕事が見つかるなどした結果、犯罪に巻き込まれなくなる、ということになるかもしれません。“釈放して戻るところがあるのか”という治安維持の観点から入る刑事司法、その構造の中で活動する弁護士と、本人がなるべく社会の中で暮らせるようにどう支援するか、という福祉側の思いとはズレており、こうしたことから現場での“弁護士丸投げ”問題が起こっています。」
 こうした率直な弁護士への不信についても、勉強会の場を持って初めて直接弁護士側へ伝えられてきました。疑問に思っていること、知識が足りないこと、現場での困りごと等を相互に出し合い、勉強会を通じ、弁護士と福祉関係者双方がコミュニケーションを積み重ねていきました。


遠藤弁護士


勉強会からつながった具体的な連携例

 勉強会から生まれた弁護士と福祉のネットワークは、具体的な案件での連携へつながっています。遠藤弁護士が関わった案件の一部を紹介します。

(ケース1)地域生活定着支援センター→法テラス

 刑務所出所後まもなく、機動隊敷地に侵入した建造物侵入事案で、逮捕勾留された高次脳機能障害のあるAさん。弁護を担当し、事件時は施設に入所しており、福祉とつながっていたこともあって、環境整備が迅速にでき、不起訴処分になった。

(ケース2)法テラス→福祉関係者

 刑務所出所後約1年で、女性を突然突き飛ばす暴行・傷害を行ったBさん。国選事件で担当し、知的障害等が見過ごされてきた事情を訴え略式起訴処分になった。その後、精神病院に検査入院し、福祉関係者の協力を得て半年後入所施設が見つかった。

(ケース3)中核地域生活支援センター→法テラス

 出所後福祉支援になじまず、方々を転々としていた知的障害者Cさん。知人に「150万円返します」旨の念書を書かされ、取り立てにCさんの職場まで押しかけてきたことから、法テラス弁護士が相手方との間に入り、請求が止まった。

(ケース4)地域生活定着支援センター→法テラス

 受刑中の男性の出所後の環境調整を担当している保護司が、男性のアパートを訪ねたところ、Dさん(中年男性)が住み込んでいた。Dさんの話によると、受刑中の男性とは児童養護施設からの知り合いで、ずっとお金を搾取され続け、受刑中も脅しの手紙が来ていたとのこと。受刑者とDさんを引き離す必要があると保護司が判断し、地域生活定着支援センターへ相談があり、定着支援センターから法テラス弁護士へつながった。
 弁護士として、(1)Dさんの生活保護申請、(2)受刑者男性に無理やり作らされ、使われてしまったDさん名義の携帯電話契約の滞納料金支払いの交渉、(3)受刑者男性やその仲間から引き離し、保護する支援をした。

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