震災の影響で、賃貸人から、賃貸借契約を解約したいと申入れがあり、これに応じて退去することになりました。仲介の不動産会社からは、「中途解約なので通常であれば引越費用は大家が負担するが、今回は、大家さんも震災で被害を受けているため、引越費用は負担してもらえない。」という話がありました。また、地震で被害を受けた建物の壁の亀裂の修繕費用も大家さんと折半で負担するよう求められ、亀裂修繕の業者が家に出入りした際に汚した部分のハウスクリーニング代まで負担するよう求められていますが、これらに応じなければならないのでしょうか。
更新日:2018年6月28日
賃貸人に引越代を負担する法的な義務を負わせるのは困難ですが、交渉の余地はあるかもしれません。
原則として、震災による被害について賃借人が修繕費を負担する義務はありません。
- 中途解約について既に合意している場合には、賃貸借契約に「賃貸人側からの解約申入れにより合意解約する場合には、賃貸人が引越代を負担する。」という内容が含まれていなければ(契約書を確認しましょう)、賃貸人に対して、引越代を負担する法的な義務を負わせることは困難です。
仲介会社の話からすると、従前は、賃貸人が引越代を負担していたようですので、全額ないし一部の負担について、賃貸人と交渉する余地はあるかもしれませんが、あくまで話合いということになると思われます。 - 賃借人は、建物を明け渡す際に、「原状回復」して返す必要がありますが、これは、借りた時と同然の状態にして返さなければならないという意味ではなく、普通に生活して生じる程度の損耗や経年劣化であれば、そのままの状態で返還すればよいとされています。
賃借人の故意や不注意で壁や床などを壊したり傷つけたりした場合には、賃借人が修繕費を負担する必要がありますが、地震による壁の亀裂については、そのような場合にあたりませんので、賃借人が修繕費用を負担する必要はありません。 - 亀裂修理は、本来、賃貸人が修繕義務を負うべきものですから、その業者の出入りの際に発生した汚れについて、賃借人がクリーニングの費用を負担する義務はありません。