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ルールや制度だけじゃない。 相手に寄り添う存在に。

更新日:2023年9月28日

法律には書いていない成年後見人の支援のカタチ

スタッフ弁護士として各地で業務に当たる中で、ある方の成年後見人を務めることがありました。弁護士は、法律というルールや代理という制度などの専門知識が求められる職業ですが、実は、成年後見人の業務については代理人として具体的にどう取り組むべきか、法律には十分に書かれていません。“成年後見人が、ご本人のために調べ抜いて考え抜いて決断し、支援していく”しかないのです。そこが難しくもあり、やりがいもあるところです。
そんな中で、忘れられない出来事があります。脳の障害を負ってほとんど応答がない状態になってしまった高齢の方がいらっしゃいました。この方は、唯一の身内であるお子さんが関わりを拒否しているとのことで、私が成年後見人に選任されました。この時、一番気になったのは関わり拒否という点でした。なぜ拒否するのだろう。負担の重さを心配しているのだろうか。拒否と言っても様子は知りたいのでは?ご本人も本当はお子さんとやり取りをしたいかもしれない。ご本人の支援のために、事情やお人柄を教えてもらえないだろうか…。このように考えた私は、就任時はもちろん、数週間に一度の面会のたびに、成年後見人の業務の報告と併せて、ご本人との写真や今の様子を書いた手紙をお子さんに送ることにしました。
 

心を動かされたお子さんからのお手紙

お子さんからは、つれない反応しかいただけない日々が数ヶ月続きましたが、ある日、なんと、私とご本人宛てに長文の手紙が届いたのです。そこには、親には感謝もあったし不満もあったこと、自分も病気療養中で動けないこと、成年後見人の支援があり安心していること、いつか見舞いに行きたいことなど、さまざまな思いが綴られていました。そして最後に、「自分もがんばる。あなたもがんばれ。」というメッセージが書いてあったのです。
私はその手紙を、次の面会の時にご本人にお見せして、読み聞かせました。お判りにはならないのだろうとは思いつつも、そうしてあげたかったのです。すると、今までほとんど応答がなかったご本人が、私が読み終えた頃に、涙を流されたのです。後に主治医の先生は、「脳の中の橋(きょう)という大事な部分の機能が落ちているので、手紙の内容がわかるはずがなく、偶然だろう。」とおっしゃいました。けれど、その場にいて涙を目撃した私と看護師さんはとても驚いて、「聞こえているし、わかっているんだね、手紙の気持ちが伝わったんだね。」と、話し合ったものでした。
これが成年後見人として良い働きだったのかはわかりません。でも、私にとっては忘れられない思い出であり、大切な経験となっています。
 
もっと知りたい! 植田弁護士のこと
Q:産業カウンセラーや認定心理士の資格を取得されたきっかけは?
A:正論だけの法律相談は成功しない場合が多く、トラブルで傷付いた依頼者の心に寄り添うために必要な知識を得たいと考えたからです。おかげで「聞いてもらえてスッキリした。」という反応が増え、相談がスムーズになりました。この知識や経験を法テラス内の研修会で報告。いずれは同僚や後輩に活用してもらうことが目標です。
 
Q:元気をもらえるプライベートでの習慣や趣味は?
A:子どもの世話も含めて家族との団らんが元気の源。チョコミントのお菓子も好きで、見つけると買って帰り、感想をWebに書いたりしています。忙しいですが、ミント栽培や天体観測、ロボットの組み立て、ウインドシンセサイザーの演奏など、やりたいことがたくさんあります。

法テラス秩父法律事務所
植田 高史 弁護士
PROFILE
うえだ たかし/2010年弁護士登録。
埼玉県出身。2児の父(幼児と小学生)。産業カウンセラー資格と認定心理士資格を取得し、放送大学で心理・福祉の科目を勉強中。

スタッフ弁護士のこと、もっと知りたい方は、採用・イベント情報、コラムもたくさん「スタッフ弁護士採用サイト」をご覧ください。


※掲載している所属やプロフィール情報は、令和5年9月時点のものであり、現在は異なっている場合があります。

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