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被災者起点を忘れない。“法律”が被災者のためにできること。―宮城県亘理郡山元町― 3

更新日:2018年6月28日

山元町町民生活課 佐藤澄三郎(すみさぶろう)課長インタビュー

Q5.住民の様子や役場にどんな声がよく寄せられますか。

 震災発生直後に一番多かったのは、情報の伝達に関することでした。災害発生4日後のピーク時には19か所の一時避難所に5,826人の方がおられました。皆その後の生活に不安を抱いている中で、日々変化する情報は被災者にとって大変重要なものであり、衣食生活用品を含めた情報の整理・伝達についての要望や意見は多くあったと記憶しています。
 情報の整理ができてくると、義援金や災害支援金など被災者に対する支援制度についての問い合わせが増え、現在は、土地の買い取り、各種補助制度、就業、町づくりの全体像など、自分の今後、未来を見据えた上での要望やご意見に内容が変化していると感じます。また、最近では、生活圏、学校・勤務先が仙台や町外にある住民が多いことから、常磐線の復旧を早くしてほしいという声もあります。
 今どこの被災自治体でも集団移転先の整備が課題になっていますが、これから新たに土地を確保し、住宅を建てていくという現時点においても、震災から2年半以上経過しており、その間多くの被災者が仮設住宅で不自由な暮らしを強いられています。今年の8月末で、町内の仮設住宅に11か所で821戸1,916人、みなし仮設に約560戸約1,450人が入居されている状況です。こうした住民の立場からすると、一日も早く移転先を確保したいという思いがあると思います。

Q6.役場職員の被災後の状況は。

 浜側に居宅があって家が流されたり家族を亡くした職員も、通常と同じように勤務していました。車で寝起きして、仕事は深夜12時1時まで行い、次の日は寒くて寝ていられなくて明け方4時5時には目が覚めて仮役場のテントの前に集まって被災者の対応をしていました。私自身は、家にはある程度津波は来ましたが幸い家族は亡くさなかったので、私なんかはよっぽど良かったんですが、職員の中には、「家族が行方不明でまだ見つかんねえんだ」という中で、住民対応していた者もいて、そうした姿を目の当たりにし、胸が痛みました。
 このような状態が長く続き、職員でもメンタルを理由として職場を去った者もいますし、また、入院を繰り返している職員もいます。皆口には出しませんが、それぞれ精一杯頑張りすぎているのかなという風には感じています。職員に対しては、メンタルヘルスの講習会や、精神衛生の専門家の相談も行っています。精神衛生の状態を調べるチェックリストで異常を示す高い数値が出ている人については、保健師などが聞き取りを行い、重い人には医者を勧めるなど、職員のメンタルサポートを町として行っています。

Q7.法テラスの出張所ができたことで、何か変化はありましたか。

山元町役場から徒歩3分の所に所在する法テラス山元

 町では以前は、月1回程度の町民相談(人権、行政苦情、登記、消費生活、年金等)で住民からの相談をこなせていましたが、被災後は、様々な不安を抱える住民が多くおり、役場職員も人手不足でしたので、町の窓口で対応しきれない状況でした。震災直後、町外から弁護士や司法書士が避難所等をまわり相談会を実施していましたが、山元町には常駐の弁護士等法律専門家はおらず、時間の経過とともに相続、税金、住宅ローン、不動産、労働、今後の生活設計等幅広い分野での専門知識を要する相談が町の窓口に持ち込まれることが予想されました。法テラス山元ができて多くの相談が持ち込まれているようですが、住民の様々な相談に対応していただいて、町として大変助かっています。
 また、町民相談の相談員にしても、身近に法テラスがあるので、法テラスへ直接お問い合わせをしたり、案件を法テラスへつないだり、こういった案件であれば法テラスの方に行って相談してみてはと住民へ紹介することもできますので、安心しています。
 法テラス山元では、弁護士以外に土地家屋調査士、税理士、社会福祉士等様々な分野の専門家相談が無料で受けられますが、これまで町で設けていた窓口では、その場での解決が難しく、○○へ相談に行ってみてはと相談先を紹介することも少なくありませんでした。法テラスでは、ある程度の筋道を立てていただけ、場合によっては即解決が可能となり、また、ワンストップで多様な相談ができ、そうした意味でも法テラスは町にとって大きな存在となっています。町の相談窓口でも住民から相談の問い合わせがあった際には、法テラス山元を案内しています。法テラスがあることで、何か有事の際に住民も町役場職員も駆け込めるという安心感があります。
 住民の感覚だと自分の困りごとは割と相談しづらい。まして町でお願いしている相談員は、町民であったりするので、顔見知りに相談することになる場合もあります。そういった意味から、ある程度町から離れた専門家に相談するということで、相談しやすい雰囲気が住民にとってはあるのではないでしょうか。

※震災法律援助業務による無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替については、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(震災特例法)」の失効により、令和3年3月31日新規申込受付を終了しています。

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