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スタッフ弁護士コラム

第二回目スタッフ弁護士コラムを掲載します

第二回目 「債務整理」

1.債務整理とは
 債務整理とは、文字通り依頼者が負っている債務を整理する手続きのことをいいますが、具体的には、依頼者の債務の総額(全体)を把握し、依頼者の収入・資産との関係で返済が可能かどうか、可能であるとしてどのような方法で返済していくかなどの状況により採るべき方針を決定し、その方針のもとに適切な手続きを実行することによって依頼者の経済的な更生を図ることをいいます。

2.債務整理の種類
 債務整理の手続きには、(1)任意整理、(2)自己破産、(3)個人再生の各手続きが一般的に利用されています。その他に特定調停という手続きもありますが、これはあまり利用されていないようですので、本コラムでは説明を省略します。

3.任意整理
 債権者の全部又は一部と交渉し、各債権者と債務の額、返済の方法等について和解契約を締結し、その契約の定めに従って返済することにより依頼者の経済的な更生を図ることをいいます。
 この任意整理は債権者との個別交渉により解決を図るものですので、返済額や返済方法等は各債権者との交渉次第で決まることになります。
 しかし、和解契約締結時の元本、利息、及び遅延損害金等の合計額を36回払い(3年)で返済する、将来利息(和解契約締結時以降の利息)は免除されるという和解内容が一般的です。

4.自己破産
 債務の支払いが不能な場合に裁判所に申立てをすることにより、一定の財産を債権者に平等に分配した上で(破産手続き)、債務を支払わなくてよいという決定(免責許可決定)を得ることにより依頼者の経済的な更生を図ることをいいます。
 具体的には、債務の状況、財産の状況、自己破産に至る経緯などを整理した申立書を作成し、これに必要書類を添えて裁判所に申立てをします。
 裁判所による破産手続開始決定の後、裁判所の選任した破産管財人により一定の財産を換価し、債権者に平等に分配する手続が行われます(管財事件)。
 もっとも、換価する一定の財産が無いような場合は、破産管財人を選任せずに破産手続開始と同時に破産手続きが終了します(同時廃止事件)。
 その後、免責許可決定を行い、同決定が確定することにより債務を支払わなくてもよいことになります。

5.個人再生
 債務の支払いが困難となった個人が利用する民事再生手続きのことです。
 返済総額を少なくし、その少なくなった後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を立て、債権者の意見を聞いたうえで裁判所が認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務などが免除されるという手続きです。

6.各手続きのメリット・デメリット
【1】 各手続き共通
(1) メリット
 弁護士が債務整理の依頼を受け、貸金業者に対してその旨の通知(受任通知)を行った場合、通常、貸金業者からの連絡は止まります。
 なお、貸金業者や債権回収会社以外の債権者(銀行、個人債権者など)については、法的に直接の取立てが禁じられているわけではありませんが、通常、弁護士が債務整理を受任することにより、直接の連絡が止まることがほとんどです。
(2) デメリット
 信用情報を取り扱う機関に登録されることにより、数年間は、借入れやクレジットカードの作成が難しくなります。

【2】 任意整理
(1) メリット
・自己破産のように、財産を失うことがありません。
・自己破産のように、職業・転居・長期の旅行等について、一定の制限を受けることがありません。
・自己破産のように、官報に、住所や氏名等が記載されることがありません。
(2) デメリット
・自己破産と異なり、債権者との合意に基づいて支払いをしていく手続きのため、債権者の了解と支払原資が必要になります。
 この点に関して、債権者と実現困難な合意をすることにより数年支払った後、支払いができなくなり、結局破産するというケースがしばしば見受けられます。そうならないためにも、自己の収入と支出の状況に応じて無理なく返済していける内容で債権者と合意するように注意してください。

【3】 自己破産
(1) メリット
・債務を支払わなくてよい状態(免責)になります。
(2) デメリット
・生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は失う可能性があります(ただし、99万円以下の現金は手元に残せます。)。
・破産手続きが終了するまでの間、職業・転居・長期の旅行等について、一定の制限を受ける場合があります。
・官報に、住所や氏名等が記載されます。
 なお、自己破産をしたからといって、選挙権がなくなる、戸籍や住民票に記載される、銀行の普通預金口座も使用できなくなるということはありません。

【4】 個人再生
(1) メリット
・裁判所の手続きによって、債務の額が大幅に縮減されます。
・自己破産のように、財産を失うことがありません。
・住宅ローン債務がある場合は、住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)を用いることにより、住宅を失わずに債務整理ができます(ただし、住宅ローンについての返済総額は、他の借金などのように少なくすることはできません。)。
(2) デメリット
・自己破産と異なり、債務を全て支払わなくてもよくなるわけではありません。
・官報に、住所や氏名等が記載されます。

7.他の制度
 これまで説明した手続きの他にも、他の制度(消滅時効の援用、相続放棄の申述、過払い金による相殺等)を利用することにより借金の返済を免れたり、借金の額を減少したりすることができる場合がありますので、債務のことでお悩みの方は弁護士に相談することをお勧めします。

執筆者:法テラス佐渡法律事務所 スタッフ弁護士 伊東憲二