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法テラス被災地出張所と地元弁護士との連携 2

更新日:2018年6月28日

在間 文康(ざいま・ふみやす)弁護士

Q1.現在の事務所への赴任の経緯について教えてください。

 司法修習時から、弁護士の少ない地域で活動するひまわり基金法律事務所(日本弁護士連合会公設事務所・以下文中ではひまわり事務所)での仕事に興味があり、修習地であった盛岡がとても好きでした。赴任先を決めるため、岩手県内でタイミングの合うひまわり事務所がないか探していたときに、東日本大震災が起きました。震災後、それまで弁護士がいなかった陸前高田市にひまわり事務所が設置されることとなり、被災地では必ず困っている方がたくさんいるはずだと、そのような地でこそ働きたいという気持ちで応募しました。

Q2.住民からの相談内容はどのようなものがありますか。

 事務所開所が、震災から1年後の平成24年3月5日。開所して3,4か月は相続の相談件数が多く、全体の4割程度を占めていました。夏ごろからは、この時期に金融庁から金融機関向けに私的整理ガイドラインの制度周知を促すよう通知があったこともあり、ガイドライン対象となるような被災ローンの相談が増え、秋ごろには、市の高台移転を進める関係で、相続の相談がまた増えてきました。相談内容の変遷を見ていると、被災した方々を取り巻く行政や支援制度の動きによって、相談の傾向はかなり変わってゆくのだなという印象を受けます。

Q3.法テラスの被災地出張所では、離婚等の家族の問題の相談が多くなっています。そういった相談はありますか。

 確かに割合とすれば、東京で弁護士業務を行っていた時よりも多く感じます。震災によるストレスや生活の変化も影響しているのかもしれません。
 震災以降、元いた土地を離れて避難したり、仮設住宅に移ったりと、被災された方々の生活環境はガラッと変わりました。例えば、住んでいるところが広いところから狭くなったり、仕事が変わったために前は仕事に出ていた時間に家にいたり、また、家族それぞれの生活がある中で保てていた距離感が保てなくなったりと、様々な要因で生活や家族間の関係が変わっています。家が流されて住むところがなくなったり、お金が流されたりといった直接的に生じた被害以外にも、震災を原因とした環境の変化で発生している問題も多くあるのではないでしょうか。

Q4.今回の震災被害が大きかった地域はいわゆる司法過疎地で、弁護士等法律専門家に対して元々なじみがなかった地域です。弁護士への敷居の高さ(大きな問題でなければ相談してはいけないのでは、お金がかかるのでは等)から、相談窓口ができてもなかなか相談に出向かない人も多いと聞きます。弁護士への敷居を下げるために、何か具体的な活動を行っていらっしゃいますか。

 この問題は、陸前高田市へ赴任する前から想定していましたが、自分が思っていた以上に弁護士事務所の敷居は高いなと赴任してすぐに感じました。昨年4月から、法テラスの震災特例法で相談者の収入や資産によらず、すべての被災者が無料で法律相談を利用できるようになりました。この制度は費用面での弁護士相談への敷居を下げる面ですごくありがたかったです。ただ、相談にお金がかからないといっても、相談へ足が向くのは簡単ではなく、これは弁護士に対する心理的な敷居の高さだと感じました。
 震災後、東京から週末に陸前高田市の仮設住宅を回っている弁護士の有志と知り合い、私も一緒について行くようにしました。この仮設住宅の巡回活動は、紙芝居で被災者に対する各種の支援制度等の情報提供をしたり、法律相談というよりは、その場で被災者の隣に座って雑談をしながらぽろぽろ出てきた法律的な話を拾ってアドバイスしていて、この活動がとても有効だと感じました。最初は法律相談と銘打っていましたが、そうすると利用しづらかったようです。

 仮設住宅に入居されている方々は、津波で家を流されるなど、困っておられる割合が圧倒的に高いです。訪問し、紙芝居やお茶っこ(お茶のみ)をするから来てくださいねと呼びかけると、少しずつ足が向いて来てもらえました。そこで被災者の方々の話を聞いていると、どうしてもっと早く相談しなかったんですか、という内容の話がでてきます。事務所で待っているのではなく、こちらから困っている方たちの元へアウトリーチしていくのが重要だと思いました。
 現在この活動は、昨年の7月から市が私に委託する形で事業化してくれました(弁護士仮設住宅派遣事業)。仮設住宅を回るのは私一人ではできないので、岩手弁護士会の協力により、毎回弁護士が派遣されており、周知活動は地元のNPOがやってくれています。仮設住宅回り以外にも、最近では、NPOや社会福祉協議会を対象に同じようなことをしてくれないかという依頼をもらったり、地域で高台移転を進める協議会の方々から声をかけていただいたりと、外へ出ていく活動も増えています。

※震災法律援助業務による無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替については、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(震災特例法)」の失効により、令和3年3月31日新規申込受付を終了しています。

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