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法テラス被災地出張所と地元弁護士との連携 3

更新日:2018年6月28日

Q5.法律問題はわかりにくく、自分が抱えている問題が法律問題かどうかわからないといった声もよく聞きます。潜在的な問題について、気づいているが相談しようか迷っている、そもそも問題に気づいていないという場合に、どのように問題を引き出し、掘り起こしをされていますか。

 私も悩みながら模索しています。仮設住宅回りの活動は1年以上になりますが、その中で気づいたのは、住民との“キャッチボール”が大切だということです。最初にやっていた紙芝居は、当初活動していたNPO法人が弁護士と一緒に行っていた内容を踏襲したものでした。そんな活動を続けるうちに、住民の側から家の建て直しに関する支援制度について聞きたいなどいろいろな要望が出てきました。そこで、ニーズに合わせて情報提供の内容を変えていき、ニーズがニーズを生むということがあり、住民とのキャッチボールで、地道にコミュニケーションを重ねていくことが大切だと感じました。

Q6.被災者の問題は1,2年で片付く問題ではなく、時間の経過とともに新たに問題が発生することに被災者自身が気づくこともあると思います。法テラス気仙ができたことによって、大船渡市や陸前高田市の弁護士の方々とそれぞれの強みを出し合い、協働しながら支援をしていきたいという思いが法テラスにはありますが、その点いかがお考えでしょうか。

 気仙地域では、今とてもいい連携をさせていただいています。大船渡市に川見弁護士がいることで相手方へも相談を案内でき、利益相反の問題もクリアすることができます。そういう意味で、近くの地域に2人弁護士がいるとことで相談者にとってもいい形になっていると思います。気仙地域にいる2人で賄いきれない部分については、交代で弁護士が相談に来ている法テラスを案内できます。
 今年の3月に法テラス気仙が開所してすごく感じたのは、自治体広報誌や仮設回り等で積極的に職員の方々が周知されていましたが、法テラスの周知力はすごいなということです。どうしても、事務所を経営している弁護士は、法テラスが近くにできると経営に影響するのではないかと考えてしまいますが、法テラスの周知が、支援に関する情報が届いていなかった市民の相談のきっかけになることもあります。私の事務所ができた時は、主要紙も含め新聞等で陸前高田市へ弁護士がやってきたことや、事務所の活動について取り上げていただきました。市からも周知してもらい、自分自身も仮設住宅を回っていたので、市内の人はすべてひまわり事務所があることを知っているだろうと思っていました。法テラスの相談担当弁護士として定期的に相談に入りますが、陸前高田市から相談に来た方で、「え、市内に弁護士がいるんですか?」と言われることもあります。やはり、周知という意味では、法テラスの力は大きいと思います。また、陸前高田市に在間という弁護士がいるという周知ではなく、弁護士って気軽に相談に行けるんだよという意味での周知の力が大きいと思いました。

 ひまわり事務所は国の資金で運営している法テラスと性質的に似ている部分があります。ひまわり事務所の弁護士としては、公設事務所だから、公の機関だからできることをやっぱりやっていかなければいけないと思います。それは、採算性とは違うところで意義を出していくことではないでしょうか。仮設住宅を回る活動もとても大変だし、費用対効果でみるとどうかという部分もありますが、長い目で見れば弁護士が住民にとって身近になります。そこで顔を見てもらったら、何かあった時に今度相談に来てくださいと、直接伝えられる訳ですから。住民の元へ出向いて行って、弁護士への敷居を低くする活動について、一つモデルケースを作れないかと、そういうモデルを発信していかなければと考えています。

Q7.法テラス気仙へ期待することについて、教えてください。

 法テラス気仙とは、陸前高田市も含め、市内で外出が困難な方向けにお宅をご訪問しての出張相談を行っています。出張所で働いている法テラス職員の皆さんは、こちらからお願いをしても、柔軟に対応していただけるので助かっています。また、弁護士の立場にも配慮しながら接していただけるので、まったくストレスを感じることなく連携していただています。恐らく相談者の方にも気遣いを忘れず対応されているんだと思います。
 また、遠野市(住田町の北隣)の大沼弁護士、大船渡の川見弁護士と私の3人は、交代で住田町の社会福祉協議会が毎月2回行っている法律相談を担当しています。これについて、法テラス岩手にお願いし、法テラスのスキームである震災法律相談(震災特例法)として相談者は無料で利用することができています。相談は1日1,2件ですが、住田町は地理的に陸前高田市へも大船渡市へもアクセスが困難でしたので、法テラスの制度を活用して費用負担をせずに住民が相談できていることはとてもいいと思います。

 法テラスには、私から意義があるのではと考えていることを相談させてもらい、上記のように柔軟に取り入れていただいています。この柔軟性を維持していただくことを希望します。まだまだ被災地の復興には時間がかかり、それに対応していくためには決まっていることをそのままやっているだけでは拾えないニーズがたくさんあると思います。法テラスにも協力していただき、様々なチャンネルを作るために柔軟に取り組み、意義があれば続けていくという方針で、支援を進めたいと考えています。
 震災法律相談のインパクトはとても効果が大きく、相談者にとって費用面での敷居はすごく下がっています。時限立法と聞いていますが、被災地のニーズに応じて是非延長していただきたいと思います。

陸前高田市の様子。奥に見えるのが“奇跡の一本松”。かつては7万本の松林のある高田松原と呼ばれる景勝地だった。
撮影時期:2013年8月

※震災法律援助業務による無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替については、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(震災特例法)」の失効により、令和3年3月31日新規申込受付を終了しています。

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