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こどもに法的支援を届けたい
こどもに法的支援を届けたい1
もっと早くに、こどもと親が法的支援につながっていたらと思うことがあります。
例えば、Aさんのケースです(プライバシー保護のため一部事案を修正しています。)
Aさん(小学3年生男子)は、もともと父親と母親との3人暮らしでした。父親は焼鳥屋を経営、母親は専業主婦でたまに父親の焼鳥屋を手伝っていました。
父親の焼鳥屋は、近所でも評判のお店でしたが、コロナ禍で酒類提供が禁止されると、ぱったり客足が遠のきました。父親は、この頃から、自宅での飲酒量が増え、イライラして「こういう時こそお前が稼がないと。役立たず。」などと母親に暴言を吐いたり、物に当たったりすることが増えていきました。母親は、父親からの心無い言葉に傷つき、いつも泣いていました。その姿をAさんも間近で見ていました。
「離婚してください。Aと出ていきます。」
「勝手にすればいい。その代わり、俺はお前たちの面倒はいっさい見ない。」
こうして、Aさんと母親の2人暮らしが始まりました。母親はパートを掛け持ちして働きました。それでも、もともとコロナ禍の時にした借金の返済もあり、手元にお金がほとんど残りませんでした。先の見えない生活の不安とイライラから、Aさんを怒鳴ったり、手を挙げてしまうことも増えていきました。
「お母さんに叩かれる。お家にご飯が全然ない。」いつも同じ服を着て、髪の毛もボサボサのAさんは、泣きながら学校の担任に言いました。担任は、スクールソーシャルワーカーとも相談し、母親に連絡を取ろうとしましたが、連絡がつきません。学校が児童相談所に虐待の疑いがあると連絡し、Aさんは児童福祉法に基づいて一時保護されることになりました。
Aさんのお母さんのように生きづらさを抱えている方を対象に、法テラスでは、現在、ひとり親家庭等のためのワンストップ相談会を実施しています。
もし、Aさんの母親が、法テラスのワンストップ相談会に来ていたら、どのような支援につながっていたでしょうか。
母親は、父親に対して養育費の請求をすることができました。
離婚に伴う財産分与を請求することもできました。
借金については、自己破産をすることで債務の免責を受けることができました。
収入の状況によっては、生活保護を申請することもできたでしょう。
法的支援で、困難を抱えた子どもと親の生活を支えることができます。
いただいたご寄付は、ひとり親を対象とした相談会のほか、困難を抱えたこどもと親に法的支援を届けるための活動等に使わせていただきます。
こどもに法的支援を届けたい2
もっと早くに、こどもと親が法的支援につながっていたらと思うことがあります。
例えば、Bさんのケースです(プライバシー保護のため一部事案を修正しています。)
Bさん(高校2年生女子)は、父親と弟(小学校1年生)との3人暮らしです。
父親は自動車の部品に使われるボルトの加工をする小さな工場を個人経営しています。
朝から晩まで、土曜日・日曜日、祝日日も工場に出ている状態で、ほとんど家にいません。
母親は、以前勤務していた会社でのパワハラが原因でうつ病となり、現在は自宅で療養しています。
家事をするのは難しい状況です。
そのため、Bさんが、高校に通いながら、家族の食事や洗濯などの家事全般を行っていました。
近所の居酒屋が月に2回お昼に開催している「こども食堂」で、弟と一緒に豚汁定食を食べるのが、唯一ほっとする時間でした。
そんなある日のことでした。
父親が脳梗塞で倒れ、亡くなったのです。
葬儀を終え、呆然とするBさん。1ヶ月後、遺品を整理するために、父の工場を訪れると、従業員だった男性がBさんに言いました。
「債権者からの督促がたくさん来ています。社長個人が債務者になっている未払金が1000万円以上あります。私の給料も2ヶ月分未払いが続いています。」
「私、学校辞めて働きます。お母さんと弟のためにも、私が頑張らないと。」Bさんは、担任に伝えました。
担任は、何かできることがあるはずだからとBさんを引き止めました。しかし、Bさんは翌日から学校を欠席し、連絡もつかなくなりました。年度末には除籍扱いになってしまいました。
Bさんのように生きづらさを抱えている方を対象に、法テラスでは、こども食堂を運営するNPO等と連携し、こども食堂で無料の法律相談を受けていただく取組を行っています。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/296454
(東京新聞デジタル2023年12月17日「離婚、借金…子ども食堂の「ついでに」無料で法律相談できる 法テラスが支える新たな取り組みとは」)
もし、Bさんが、こども食堂に来た際に、法テラスの無料法律相談を受けていたら、どのような支援につながっていたでしょうか。
Bさんは、父親が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続をとることで、相続放棄をすることができました。相続放棄をすれば父親の残した債務を支払う必要はありません。
相続放棄の手続を行わずに、父親の債務を相続してしまった場合でも、自己破産をすることで、債務の免責を受けることができました。
収入の状況によっては、生活保護を申請することもできたでしょう。
法的支援で、困難を抱えた子どもと親の生活を支えることができます。
いただいたご寄付は、福祉機関等との連携に基づく各種相談会のほか、困難を抱えたこどもと親に法的支援を届けるための活動等に使わせていただきます。
こどもに法的支援を届けたい3
もっと早くに、こどもと親が法的支援につながっていたらと思うことがあります。
例えば、Cさんのケースです(プライバシー保護のため一部事案を修正しています。)
Cさん(中学3年生女子)は、学校にいる時間が苦痛でした。
1年前の夏、SNSに匿名で「Cは浮気の常習犯。要注意。」という根も葉もない書き込みがされました。犯人はわかりませんが、おそらく人気者のサッカー部キャプテンと親しく話していることに嫉妬した学校の誰かだと思われました。これをきっかけに、学校の仲の良かったグループから避けられるようになりました。
家にいる時間はもっと苦痛でした。
2年前に母親が職場で不倫したのをきっかけに、父親と母親の関係が急速に悪化しました。父親はいつも飲酒をすると暴れだし、「俺は不倫したお前のことを許さない」などと言って、母親を叩きました。Cさんが母親を守ろうと間に入ると、「そいつの味方をするならお前も同罪だ」などと言って、Cさんのことも叩きました。母親とCさんには、いつも身体のどこかにあざがありました。
どこにも居場所がない。全然違うところに行って、新しい自分になりたい。
Cさんは、最低限の荷物をまとめ、家を出ました。着いたのは、東京の歌舞伎町でした。
複合施設の下の広場に立っていると、すぐに知らない大人の男が声をかけてきました。
話をしていたら、自分が一人ではないような、ここに居ていいんだという気持ちになっていきました。
「泊まるところないなら、部屋あるよ。そこでゆっくり話そう。」
男とCさんは、歌舞伎町の街に消えていきました。
Cさんのように生きづらさを抱えている方を対象に、法テラスでは、DVや児童虐待の被害者が利用できる「犯罪被害者支援ダイヤル」を開設しています。
0120-079714(なくことないよ) 受付時間:平日9時〜21時、土曜9時〜17時
https://www.houterasu.or.jp/lp/higaishashien1/
もし、Cさんや母親が、法テラスの犯罪被害者支援ダイヤルに電話をし、法的支援につながっていたら、どのような支援につながっていたでしょうか。
Cさんは、法律に基づいて、SNSに誹謗中傷の書き込みを行った相手の氏名と住所を特定し、損害賠償請求や名誉回復のための措置を求めることができました。
Cさんの母親は、DVを行う父親と別居した上で、裁判所による接近禁止命令により安全を確保することができました。Cさんの母親は自ら不貞行為を行った有責配偶者ですが、このようなDV事案では離婚が認められることもあります。弁護士を代理人として離婚調停や離婚裁判を行うとともに、離婚成立までの母子の生活費(婚姻費用)の分担や、離婚後の養育費の分担を求めることもできたでしょう。
法的支援で、困難を抱えた子どもと親の生活を支えることができます。
いただいたご寄付は、法テラスの各種相談窓口の周知・広報のほか、困難を抱えたこどもと親に法的支援を届けるための活動等に使わせていただきます。
こどもに法的支援を届けたい4
もっと早くに、こどもが法的支援につながっていたらと思うことがあります。
例えば、Dさんのケースです(プライバシー保護のため一部事案を修正しています。)
Dさん(高校1年生男子)は、この春、高校入学のお祝いに、スマートフォンを買ってもらいました。
親とは学校の勉強の支障にならないようにという約束でしたが、次から次におすすめの動画が表示されるSNSに夢中になり、すぐにスマートフォンが手放せなくなりました。
そんなある日、スマートフォンのショートメッセージに、こんなメッセージが届きました。
「有料会員の利用料のお支払が確認できません。今月末までに20万円をお支払いください。お支払が確認できない場合、法的措置をとることを申し添えます。」
有料会員の登録をした記憶はありませんでしたが、SNSに出てきたリンクを押したらアダルトサイトが表示されたことがありました。興味本位で、掲載されていた複数の動画を観たことがありました。
Dさんは青ざめました。アダルトサイトの請求が来たとは、親には相談できませんでした。
SNSで「高額バイト 即日バイト」などと入れて検索していると、こんな求人が出ていました。
「段ボールを運ぶだけの簡単なお仕事です。1件5万円から。初心者歓迎。即日払い可。」
これだと思ったDさんは、求人に応募しました。
すると、すぐに連絡が来て、聞き慣れないメッセージアプリをインストールすることを促されました。
アルバイトをするための登録に必要だと言われ、学生証やマイナンバーカードの写真も送りました。
集まるよう指示された場所は郊外の民家。時間は深夜でした。ガシャンと窓ガラスを破る音が聞こえた後、高齢の女性の叫び声がしました。Dさんは渡された荷物を持って、言われたところまで走りました。
翌日、インストールしたメッセージアプリに、追加の仕事を依頼するメッセージが届きました。
Dさんは断りました。しかし、こう言われました。
「お前はもう犯罪者なんだよ。身分証も住所もわかっている。逃げたらお前も家族もどうなるか…。」
法テラスでは、こどもや若年者を対象とした法教育の取組を行なっています。
法教育とは、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育です。
https://www.houterasu.or.jp/soshiki/97/adachi14highschool.html
中学生向け法律講座「生活と法律」
https://www.houterasu.or.jp/site/chihoujimusho-tokyo/241224.html
若年者向け「闇バイト」被害防止研修
「闇バイト」は犯罪です。
Dさんも、法教育などによってその危険性を事前に十分わかっていれば、巻き込まれずに済んだはずです。
加担を強要された時点でも、警察に保護を求めることができました。
そもそも、動画を視聴する代わりに料金を支払うという明確な合意がなければ、契約は成立せず、料金の支払義務も発生しません。Dさんに最低限の契約の知識があれば、本件のような問題は起きませんでした。
いただいたご寄付は、こどもや親に法的支援を届けるための活動等に使わせていただきます。