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「法テラス」の「スタッフ弁護士」-その歴史と新たな弁護士像への期待-

更新日:2022年4月21日

丸島 俊介 理事長

常任理事


1980年代末、冷戦終結とグローバル化の急展開に世界は大きく動き始めた。
日本もまた、バブル経済崩壊と政治的混乱に揺れ、政治・経済・社会のあらゆる部門でこれまでの日本型システムを見直すべく、 様々なレベルの「改革」が論じられた。
そうした時代にあってこそ、司法のあり方への関心も広がり、弁護士もまた、その役割と活動領域を広げ、憲法が拠って立つ基本理念を社会のあらゆる分野に徹底しようとする改革に取り組み始めた。

その一つは、1980年代の4つの死刑再審無罪事件の教訓から、弁護士自らがその弁護実践を通じて、弁護人がいない多くの被疑者が置かれた状況を変革しようとする「当番弁護士」の取組であった。
それは人々の共感を得て全国に一気に広がり、わが国初めての被疑者国選弁護制度へと発展した。

二つには、高齢者・障がい者・消費者・女性・子どもらの権利擁護の活動や司法過疎地の住民の法的支援の実践を通じて、法律相談センター・公設事務所の全国展開と法律扶助制度など司法アクセスの拡充を目指す取組であった。

これらの活動はその後いずれも今日の法テラスの事業の母体となっていった。
 
1990年代、私たちは、各国に調査に赴き、諸外国のリーガルエイドの歴史と制度と活動から学ぼうとしていた。
その中で、当時貧民街といわれたニューヨーク・ハーレムの公設事務所の経験は忘れがたいものとなっている。
大きなビル丸ごとの公設事務所には、肌の色の様々な男女の弁護士が忙しく事件に走り回り、そこには、福祉・雇用・医療・心理などの専門スタッフが弁護士とチームを組んで、被疑者の抱える複合的な問題に対して包括的な支援をすることにより彼ら彼女らの生活の再建・再生のサポートにあたっていた。

弁護士らは著名なベテラン弁護士から多くの若手弁護士までエネルギーに溢れ士気高く、政権交代により予算が減少したと怒りながらも、高い質の弁護活動と専門スタッフとの協働による活動を展開していた。
弁護士らは、貧困の中で犯罪に陥る者を刑務所に送り込むだけのコストに比べて、弁護活動を契機とした生活再建の支援により社会復帰する市民となっていくことの方が社会コストとしてどれだけ有用であるかを訴え、社会のコンセンサスを得るよう努力していると語った。
 
弁護士らが幅広い分野の専門家らと連携・協働して、社会から疎外された人々の尊厳を確保しようとする活動にまい進している姿に、「遠いだろうが、いつの日にか日本でも…」との想いを膨らませながら帰国したのは20数年前のことであった。

その後、司法制度改革の幾多の論議と実践を経て、2006年、法テラスの常勤スタッフ弁護士は生まれた。

私は、当時、20余名の志に溢れた中堅若手弁護士らから成る東京弁護士会の公設事務所・東京パブリックに所属していたが、公設事務所は、毎年数名の若手弁護士を採用して育成し司法過疎地や法テラスのスタッフ弁護士に送り出す拠点となっていた。
闇金に追われ、虐待から逃げだし、消費者被害に苦しみ、労働現場のハラスメントにと、楽しげな街には矛盾が渦巻いていた。
そんな司法アクセスの最前線に立った若い弁護士たちは、スタッフ弁護士の1期生2期生となって各地に飛躍していった。

スタ弁はどういう存在で、何をするのか。
理念と海外の経験と日本の人権活動の歴史などの指針はあったものの、スタ弁たちは、それらを手掛かりにしながらも、自分の頭と足とハートで、実践を積み重ね、あたかも白いキャンバスに色とりどりの絵を描いていくかのように、スタッフ弁護士の姿を創り上げてきた。
「アウトリーチ」といい、「福祉と司法の連携」、「司法ソーシャルワーク」や「刑事弁護の専門弁護士」といい、それらは、彼ら彼女らが創り上げてきたもの。
予め机上で書かれたものではなく、まさに若いスタ弁が創り上げ、理論化し、全国展開してきた新しい弁護士の姿であり、社会の分断と包摂が問われる時代に、司法アクセスの最前線、リーガルエイドの最前線を担い法の支配の実現を支える人々となってきた。

若い弁護士らを中心とする組織であるがゆえに、まだ未成熟のところもあり、制度も未成熟であるが、この10余年、間違いなく、時代の先駆けとなる弁護士の姿を示してくれたと思う。
どうか、多くの若者が、この豊かで未来あるスタ弁の歴史を引きつぎ、新しい弁護士像を築いていかれることを心から願っている。
 

理事長プロフィール

丸島 俊介(まるしま しゅんすけ)
1978年弁護士登録(30期)。
日本弁護士連合会日弁連事務総長など要職を務め、2017年10月1日法テラス常務理事に就任。
2022年4月1日、法テラス理事長に就任。
そのキャリアを通じて「市民のための司法」実現のために活動を続け、司法制度改革では同審議会事務局の主任専門調査員を務めた。
法テラス設立後は、都市型公設事務所である弁護士法人東京パブリック法律事務所の二代目所長としてスタッフ弁護士の養成に携わった。

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