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合同チームでヤミ金と戦う

更新日:2019年9月3日

法テラス広島法律事務所 林 雅子 弁護士(新62期)


法テラス広島法律事務所は、他機関との連携が進んでいる。
検察庁との連携もその一つだ。
その依頼者も、入口支援(※)の一環として、検察庁が感知した。
依頼者の横には、自治体職員さんが寄り添っていた。支援が必要な方なのだ。 
 
依頼者の記憶はあいまいな部分もあったが、たちの悪いヤミ金に絡まれているのは明白だった。
毎月、生活保護費と年金の支給日に家にまで取立てに来るという。
依頼者の自宅に、不法侵入されたこともあるという。
聞けば聞くほど悪質だ。入口支援が必要になったのも、絡まれた結果の生活苦によるものと思われた。
このままにしておけない。
すぐに受任し、警察へ相談し、相談実績を作った。
この時から、依頼者を守るための、弁護士と自治体職員さんの合同チームが動き出した。
 
ヤミ金に受任通知を送ったが音沙汰なく、支給日は何事も無く過ぎた。
ほっとしていたら、自治体職員さんから「支給日から数日後にヤミ金が来た」との情報が入る。
ヤミ金は、「弁護士が入っても関係ない」と、脅して帰ったという。

依頼者は、弁護士を頼りにしてくれなかった。
連絡をもらえなかったことに、少しショックを受けた。

直ぐに警察に相談。
弁護士からヤミ金に電話するのにあわせて、依頼者の様子を見に行ってもらうことに。
ヤミ金には怒鳴り散らされたが、依頼者は無事だった。
この時から、警察も合同チームに入った。少なくとも私はそう思っている。

 
その日の夕方、今度はヤミ金が事務所に電話をかけてきた。
再び怒鳴り散らした挙句、何を血迷ったのか、弁護士との委任契約を解除させるべく依頼者の自宅に押しかけた。
即座に110番通報。現行犯逮捕には至らなかったが、警察がヤミ金を突き止め警告してくれた。
すると法律事務所にヤミ金から怒りの電話。
しかしその時、私は警察と電話中。
繰り返し鳴り響く電話のベルと、留守電相手の怒声が事務所に響く。
警察も電話越しに、ヤミ金からのしつこい怒りの電話を聞いて呆れていた。

以降、弁護士2名体制となった。
依頼者は幾度となく弱気を見せるが、自治体職員さんと一緒になって励まし、2度目の警察相談へ。
警察も励ましてくれるが、諸事情で事件化の壁は厚かった。
けれど、合同チームはこんなところでは諦めない。
3度目の警察相談後、ついに警察の鑑識が出動。指紋採取。その後ヤミ金に警告。
依頼者の自宅前に監視カメラが設置された。

 
今度こそ無事に支給日が過ぎて、油断できないながらも今のところは平穏な日々。

ありがとう警察。ありがとう自治体職員さん。ありがとう合同チーム。

 
依頼者から、「何から何までありがとうございました」と、お礼の電話が入った。
やっと頼りにしてもらえた。
どんな事件にも時間と全力をつぎ込める、法テラスのスタッフ弁護士になってよかったと思った。


 

※入口支援…高齢者や障がい者などが罪に問われ、被疑者・被告人となった段階(刑事司法の入口の段階)において、不起訴や執行猶予が見込まれるときに、福祉的な支援を行うこと。

以下フッタです
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