採用情報

すべての人と司法を結ぶ架け橋に

あのときの選択は間違っていなかった~スタッフ弁護士に転身して~

*記事の内容は、掲載当時のものとなります。

あのときの選択は間違っていなかった~スタッフ弁護士に転身して~

法テラス静岡法律事務所研修で講演する 中野聡 弁護士

弁護士 中野 聡

 

 

 

研修で講演する 中野 聡 弁護士

(1)経験談(転身のきっかけ)

私は、7年弱、企業法務中心の事務所で勤務した後、スタッフ弁護士になりました。
そして、スタッフ弁護士歴は既に、10年半になっています。
「なぜスタッフ弁護士に?」よくそう聞かれます。
移籍前の仕事は、訴訟、顧客(クレーマー)対応、調査委員会委員、株主総会指導、契約書チェックといった予防法務など様々でした。
法律解釈に頭を悩ませ、知的好奇心をかき立てられる、やりがいある仕事でした。
待遇面も大きな不満はありませんでした。
ただ、いつからか、小さな違和感を抱いていました。もともと私の原点となる弁護士像が依頼者の人生に深く関わる「マチ弁」のそれだったからかもしれません。
そんな時、スタッフ弁護士の取り組みに関する新聞記事に巡り合いました。
新聞記事は2014年2月22日の朝日新聞土曜日版「フロントランナー」、現在も法テラス東京法律事務所に所属している太田晃弘弁護士の記事でした。
“司法ソーシャルワーク。「相談を待つのではなく、課題を探り、自分から働きかけ」、「福祉や医療に携わる人たちと連携する」ことで、「新しい弁護士像を作」る取り組み。”
「これだ!」と思いました。
ちょうど、手持ち案件が次々と終わったタイミングとも重なりました。
そこで、「転身するなら今しかない!」と、スタッフ弁護士になったのです。
移籍後の仕事は、金銭問題や家庭の問題などがほとんど。
法律解釈自体は、基本的なものが大半です。
ところが、高齢・障がい等様々な事情で、依頼者の多くは、自分の状況を伝えることすらままなりません。さらに、法的課題以外の課題も抱えていることがほとんど。
いかに依頼者から話を聞き取るか、いかに分かりやすく伝えるか、法的課題以外の課題についても、いかに関係機関と協力しながらケアするか・・・
移籍前とは、頭の使いどころが全く変わりました。
依頼者との関わり方がより人間的な、今の仕事の方が私の性には合っています。
移籍後の弁護士歴の方が長くなった今、こう思っています。
「スタッフ弁護士になってよかった。あのときの選択は間違ってなかった!」と。

(2)Q&A

Q1 スタッフ弁護士への転職を検討しはじめた当初、業務内容や待遇面などについてどのような方法で情報収集をしましたか?

A1 まず、公式HP等の資料はほとんど読み込みました。その上で、もっとリアルな情報が知りたかったので、人に聞くことにしました。幸い、私には修習同期・同クラスにスタッフ弁護士OBがいましたので、その人からざっくばらんな情報を聞きました。

Q2 業務内容について、どのような話を聞いたのですか?

A2 担当する案件は赴任先によって大きく異なること、どこの赴任地でも本人の抱える様々な特性(高齢・障がいなど)の影響でコミュニケーションを取ることが困難な依頼者が多いこと、司法ソーシャルワークは地域毎に内容が全く異なることなど、ありのままを伝えてもらいました。

Q3 待遇面について、どのような話を聞いたのですか?

A3 特に気になっていた収入面について詳細に確認しました。現在はHP上に「基本給」以外の諸手当(賞与に相当する勤勉手当・期末手当や扶養手当、住居手当、通勤手当、休日勤務手当、単身赴任手当等)がもらえることが明記されているのですが、当時はその辺りがはっきりと記載されていませんでした。そのため、私は「基本給」と「賞与」だけなのかと思っていたのですがそうではなく、上記の諸手当や赴任地に応じて地域手当ももらえるため、実際の給与は「基本給」よりかなり高額になるとの話を聞きました。
その他、業務で自家用車を使用する際に、自動車運行費の支給があること、その他補助が出ることの説明もありました。
さらに、弁護士会費や弁護士賠償保険の自己負担がなく、出て行くお金が少ないことも確認できました。

Q4 スタッフ弁護士の知り合いがいないのですが、誰に聞いたらよいですか?

A4 私でよければ私の経験をお伝えしますし、他の中途採用組のスタッフ弁護士の話も聞くことはできると思います。
私自身、人から話を聞くことでスタッフ弁護士についての具体的なイメージが湧きましたので、応募を検討されるのであれば、「人から聞く」ということは是非やっていただきたいと思います。
法テラスの説明会でも現役のスタッフ弁護士からかなりざっくばらんな話が聞けますし、今は随時個別説明もしてもらえるということですので、積極的に利用したらよいと思います。

Q5 ご家族の反対はありませんでしたか?

A5 転職当時は、配偶者と2人だったのですが、配偶者は収入面について私以上に心配していました。
そのため、集めた情報を基に、スタッフ弁護士の給与で生活していけるのかどうか、2か月ほどシミュレーションしてみました。それで大丈夫そうと分かったため、その後は応援してくれました。

Q6 全国転勤について不安はありませんでしたか?

A6 当時は、夫婦2人だけだったので、配偶者とも「いろいろなところに行けるのも楽しそうだね」と話していて、不安はありませんでした。
 私は、法テラスに入社後、法テラス東京(H26.8~H26.10)、法テラス熊谷(H26.11~H29.12)、法テラス静岡(H30.1以降)の3か所に赴任しました。
1つの赴任地の赴任期間は基本的にはおおよそ2~3年ですが、そのくらいいるとその地と人とに愛着がわいてきます。第2・第3の故郷が増えていくようなイメージです。
また、裁判所の運用は地域毎に異なることが多いですが、転勤を経ることで様々な運用を経験することができ、弁護士としても対応力が付く、業務上の幅・引き出しが増えるように思います。
ただ、全国転勤については、ライフステージの変化によって、難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。私自身も今は家庭の事情で転勤が難しい状況です。転職にはタイミングも重要だと強く実感しています。

Q7 長くスタッフ弁護士を続けていると全国転勤がなくなることがあるのですか?

A7 完全になくなるわけではありません。ただ、希望や適性が考慮される結果として、例えば、「この人は関東ブロック」、「この人は九州ブロック」などとある程度赴任先の範囲が狭まっていく傾向はあると思います。
また、業務上の必要性や家庭の事情などで長く同じ事務所に所属するスタッフ弁護士もいます。

Q8 赴任先について、こちらから希望を出すことはできるのですか?

A8 希望される赴任先に空きがあるかという問題もありますので、必ずしも希望どおりの赴任先に配属されるわけではありません。
ただ、赴任先を決めるにあたり、希望聴取もされていますし(具体的には、「希望する赴任地・事務所形態・異動時期」や逆に「希望しない(その赴任地が打診されたら退職を検討するような)赴任地・事務所形態」、「今後取り組みたい業務」等について毎年ヒアリングを受け、そのヒアリング内容を踏まえて赴任先の打診が行われます)、家庭の事情などについても可能な限りの配慮はなされるようです。

Q9 中途採用だと、即戦力扱いになるのでしょうか?正直、弁護士経験も浅く不安なのですが・・・

A9 私自身は、養成を受けることなくすぐに赴任される形でした。もっとも、応募された際の弁護士経験年数、経験してきた業務の内容によっては、新人での採用の場合と同様に、最長1年間の養成を受けることもできます。
また、スタッフ弁護士には充実した研修制度が用意されています。民事について質問できる支援室、刑事について質問できる研修室も常設されており、各分野での経験豊富な弁護士にメール・内線等で相談することもできます。
養成を受けた後の赴任の場合は、赴任後の一定期間、弁護士経験10年超のシニアスタッフ弁護士2名がサポートするメンター制度も用意されています。
さらには、スタッフ弁護士同士の交流も盛んで、年1回の全国経験交流会や年2回ほど行われるブロック別研修などのほか、MLや有志のPTでの活動で交流することで、他の弁護士の経験を学ぶこともできます。
このように、充実したサポート体制が整えられているため、ご安心ください。

Q10 実際に法テラスに入ってみて、検討段階の想定と違う点はありましたか?

A10 かなり入念に下調べをしていたので、悪い意味で「こんなはずじゃなかった!」ということはありませんでした。
確かに、収入面に関して、「年収」はかなり下がりましたが、そこは想定どおりでした。以前の勤務先では、「基本給+歩合」の形だったため、毎月の収入が安定しませんでした。これに対して、法テラスでは毎月入ってくる金額が決まっているので、見通しが立てやすいというメリットもありました。
また、裁量労働制で時間の融通が利きやすいこと、有休・育休等が想定以上に充実していたことは、嬉しい驚きでした。テレワークや服装等も、かなり自由な働き方ができる職場だと感じています。

Q11 これまで行かれた赴任地で業務内容に違いはありますか?

A11 法テラスの法律事務所には、大きく分けて、地方裁判所の本庁・支部に対応した地域に設置される「都市型」と弁護士数の少ない地域に設置される「司法過疎地型」とがあります。
私の赴任地は、いずれも「都市型」(※正確には熊谷は「扶助・国選対応地域事務所」という分類ですが、「都市型」に近いです)の事務所です。ただ、同じ「都市型」でも地域の実情に応じて求められることが異なるため、業務内容は大きく異なります。
簡単に言うと、東京はいわゆる「司法ソーシャルワーク」が中心業務、熊谷は扶助事件・国選事件が中心で、余裕があれば「司法ソーシャルワーク」を行う、静岡はどちらもバランスよく行う、といったところです。
私自身は赴任の経験がありませんが、「司法過疎地型」であれば、案件のバリエーションも豊富でもっと違いが出てくるでしょう。
より詳しくお知りになりたい場合は、個別にご連絡をいただくか、事務所訪問などをされるとよいと思います。

Q12 スタッフ弁護士としてこれまで10年を超えるキャリアを積まれていますが、スタッフ弁護士の魅力はどのような点にありますか?

A12 たくさんあるのですが、1つだけ上げるとすれば、仕事内容の自由度の高さかと思います。
A2、A11でも触れたとおり、赴任地毎にスタッフ弁護士が求められる役割・業務内容は大きく異なります。その中で、いかにその地域に合った活動するかという点は、各スタッフ弁護士に大きな裁量が与えられています。
事件処理にしても、司法ソーシャルワークにしても、自分で考えながら構築していける楽しさがあります。
これは、まさに私が法テラスに入るきっかけとなった新聞記事にあった「新しい弁護士像を作」る取り組みといえると思います。

 

(3)応募を検討されているみなさまへメッセージ

いかがでしょうか。法テラスに興味を持っていただけましたでしょうか。
法テラスには私のほかにも、一度別の法律事務所や会社勤務などの経験を経て、法テラスのスタッフ弁護士となった人が複数人在籍しています。それぞれがそれぞれの赴任地で活躍しています。
今の職場に小さな違和感を抱いている方、依頼者の人生に深く関わる「マチ弁」に少しでも興味のある方には、法テラスのスタッフ弁護士という仕事をオススメします。
法テラスでは、就職説明会も実施されていますが、参加いただくことが難しい場合も多いと思います。
そこで、お問い合わせいただければ、申込者の方のご都合で、個別説明・相談にも対応しておりますので、遠慮なく法テラス採用窓口にご連絡ください。
​それでは、スタッフ弁護士へのご応募お待ちしております!