やさしい日本語

「夫が家を出ました。子どもと生活するお金や家はどうなりますか。夫には子どもに会ってほしくないです。」

外国人女性のイラスト

私は外国人です。8年前に日本人と結婚しました。6歳、4歳、2歳の3人の子どもがいます。
結婚したときは夫婦の両方が働いていました。一人目の子どもが生まれたとき、私は仕事をやめました。今も働いていません。

夫は家の仕事をまったくしません。家の仕事をするように言うと、大きな声を出して怒ります。
私を叩いたこともありました。そのために夫婦のけんかが多くなり、先日、夫は家から出ていきました。

その後、夫が急に家へ荷物を取りに来たりすると、体の具合が悪くなります。体がふるえたり、汗がとまらなくなります。
夫と電話で話しても同じようになります。

私は子どもが大きくなるまで離婚する気はありません。
子どもを育てながら働くことは難しいので、生活に必要なお金は夫に払ってほしいです。
いま住んでいる家は夫の名前で買ったものですが、これからも住みたいです。

Q 質問

  1.  別れて生活するようになった後も、夫に生活に必要なお金を払ってもらうことはできますか。
  2.  夫が私と子どもに家から出るように言った場合、出る必要がありますか。
  3.  夫が私を叩いたり、大きな声で私を怖がらせたことについて、お金をもらうことはできますか。
  4.  夫が子どもに会いたいと言った場合、会わせる必要がありますか。

A 答え

法テラススタッフのイラスト

  1.  あなたは夫に、婚姻費用<=結婚して生活するために必要なお金>を払うよう求めることができます。子どもを育てたり、医療や教育に必要なお金も含みます。
  2.  夫には、子どもの生活を助けて、育てる責任があります。妻の生活を助ける義務もあります。だから、もし夫があなたに家を出るように求めても、裁判所がすぐにこれを認めることはあまりないでしょう。家庭裁判所で調停<=話し合うことで争いを終わらせるための手続>をするなどして、夫婦以外の人を入れて話し合う場所を作ることが大切です。
  3.  慰謝料<=つらい思いをした人が、つらい思いをさせた人からもらうお金>をもらうことができるかもしれません。
  4.  離れて生活している親は、子どもと生活している親に対して、子どもに会わせるよう求めることができます。だから、あなたが夫を子どもに会わせることを断った場合、夫は子どもに会わせるよう、裁判所に求めるかもしれません。
     しかし、親に会うことが子どもにとって良くない場合は、会うことは禁止・制限されます。あなたの夫の場合、大きな声を出したり、あなたを叩いたりしています。裁判所は子どもにとって良くないと考えて、夫が子どもに会うことを認めないかもしれません。

説明

1. 別れて生活するようになった後も、夫に生活に必要なお金を払ってもらうことはできますか。

夫婦には、お互いに扶養義務<=生活を助ける義務>があります。婚姻費用について、どの国の法律を使って決めるのかは、扶養義務について書いてある法律を確認します。
あなたの場合は、払うように求めているあなたが住んでいる国である、日本の法律に従って、お金をもらえるかどうかを考えます(扶養義務の準拠法に関する法律2条)。

 

日本の法律(民法760条)では、夫婦は、財産や収入など、すべての事情を考えて、婚姻費用を二人で分けて払うことと決まっています。
婚姻費用とは、結婚することで必要になるお金のことです。夫婦で平等に分けて払う必要があります。夫婦の生活にかかるお金のほか、子どもに必要なお金も含みます。子どもを育てたり、病院にかかるお金、教育を受けさせるお金、周囲の人との付き合いに必要なお金などです。別れて生活している夫婦の場合、子どもを育てている方が、収入のあるもう一方にお金を払うよう求めることができます。夫婦の両方が、同じくらいの水準の生活を続けることが必要だからです。

 

いくら払うかについて、夫婦の間で話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所で「婚姻費用分担請求調停」<=生活に必要なお金を分担して負担してくださいと求めること>をします。それでもうまくいかない場合は、裁判所に決めてもらうことになります。裁判所は夫婦それぞれの収入の多さや、子どもの人数、子どもの年齢を考えて金額を決めます。

2. 夫が私と子どもに家から出るように言った場合、出る必要がありますか。

夫婦にはお互いの生活を助ける義務と、子どもと一緒に住んで世話をして、育てる義務があります。
そのため、子どもと、子どもを育てている妻に家を出るように求めることは、この義務に違反しています。したがって、夫があなたに家を出るように求めても、あなたと子どもたちの行き先もないままに、裁判所が夫の求めを認めて、あなたたちに「出ていきなさい」ということはあまりないでしょう。

 

 

住むところにかかるお金を、夫婦がどう分けて払うのか、話し合う必要があります。話し合いがうまくいかないときは、上で説明したように、家庭裁判所で「婚姻費用分担請求調停」をします。夫婦以外の人を入れて話し合う場所を作ることが大切です。

3. 夫が私を叩いたり、大きな声で私を怖がらせたことについて、お金をもらうことはできますか。

夫が妻を叩いたり、大きな声で怖がらせたりしたことは、妻の体や心を傷付けているので、法律に違反します。そのため、妻は夫に、ケガなどを治すためのお金や、慰謝料を求めることができるかもしれません。

ケガなどを治すためのお金や慰謝料を求めるために、どの国の法律を使うかを考えます。これらは、つらいことが起きた場所の国の法律を使うと決まっています(法の適用に関する通則法17条)。そのため、あなたの場合は、日本の法律を使います。

4. 夫が子どもに会いたいと言った場合、会わせる必要がありますか。

あなたが子どもに会わせることを断った場合、夫は家庭裁判所を使って、子どもに会わせるよう求めるかもしれません。

子どもと会ったり、電話や手紙で連絡を取ったりすることを面会交流といいます。親子の面会交流は、子どものことを一番大切に考えて決める必要があります(民法766条)。多くの場合、子どもを育てていない(ほう)の親は、子どもと会うことが許されます。

子どもに会わせることについて争っているとき、あなたの場合は、日本の法律を使って考えます(法の適用に関する通則法32条・38条。親と子の問題について、どの国の法律を使って解決するか説明しています)。

子どもに会わせることについて、夫婦の話し合いがうまくいかない場合、子どもを育てていない(ほう)の親は、子どもに会うことを求めて、家庭裁判所に調停を起こすことができます。
調停がうまくいかなかったときは、子どもに会うことを許すかどうか、家庭裁判所が決めます(「審判」という手続を使います)。

 

子どもに会うことを許す場合は、その内容や条件なども決めます。決める時に一番大切にされることは、子どもの利益です。

子どもに会うことが、子どもにとって良くない場合は、子どもと会うことを禁止・制限する必要があります。例えば、子どもを育てていない(ほう)の親が、子どもや子どもを育てている(ほう)の親を叩いたり、こわがらせる言葉を言ったりしたことがある場合です。

調停や審判のとき、家庭裁判所調査官という人が、夫婦や子どもについて調べることもあります。家庭裁判所調査官は、心理学や教育学などを勉強して、子どもについての専門の知識を持っている人です。家庭裁判所調査官が調べてわかったことをまとめた調査報告書は、調停や審判の中で、重要な意味を持ちます。