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「先日、日本人の夫が死にました。夫の財産は、住んでいる家と貯金です。」
私は、日本人の夫との間に、子どもが2人います。息子は成人しています。娘は未成年です。
先日、夫が死にました。夫の遺産<=死んだ人が持っていた財産。お金を借りていた場合、それを返す責任も含みます。>は、住んでいる家と貯金です。遺言書<=自分が死んだあと、自分の財産を誰に渡したいかなどを、死ぬ前に決めて書いたもの>はありませんでした。
Q 質問
- 家は夫のものです。それを私のものにしたいです。どんな手続が必要ですか。
- 夫のお金を銀行から引き出せなくなると聞きました。葬式をするために、お金が必要です。夫のお金を使いたいのですが、息子は反対しています。何かよい方法はありますか。
- 私の在留資格は「日本人の配偶者等」です。夫が死んだので、何かしなければいけませんか。これからもずっと日本で暮らしたいです。
- 何かほかに気を付けたほうがいいことはありますか。
A 答え
- あなたと、あなたの子どもたちで話し合って、家をあなたのものにするという書類を作ります。その書類を使って法務局で手続をすることで、家の所有者の名前をあなたに変更します。
娘は未成年なので、話し合う前に、家庭裁判所で「特別代理人」という人を決めてもらうことが必要です。
詳しいことは説明を読んでください。 - 他の相続人<=死んだ人の財産(借金を返す責任も含みます)を引き継ぐ人>が賛成してくれなくても、銀行から夫のお金の一部を引き出すことができます。
- 夫が死んだということを、入管に報告する必要があります。夫が死んでから14日以内にしてください。
また、これからも日本に住みたい場合は、夫が死んでから6か月以内に、在留資格の変更を申し込む必要があります。 - 夫の財産について税金がかかることがあります。10か月以内に税務署で払う必要があるので、注意してください。
説明
1. 家は夫のものです。それを私のものにしたいです。どんな手続が必要ですか。
手続全体について
死んだ人の財産や借金を引き継ぐことを、「相続」といい、死んだ人を「被相続人」、引き継ぐ人を「相続人」といいます。
今回、被相続人は夫、相続人は、あなたと息子と娘です。
まず、被相続人である夫が日本人で、日本にある遺産についての問題なので、日本の法律を使います。
なお、相続のときに、どこの国の法律を使うかは、とても複雑なので、わからない場合は、手続をする前に弁護士に相談してください。
日本の法律では、相続人は遺産をどうやって分けるのか、話し合うことになっています。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要があります。
特別代理人について
相続人に未成年の人がいる場合、遺産分割協議をするためには、未成年の相続人のために代わりに話し合いに参加する大人が必要です。
あなたは、娘の「法定代理人」なので、他のことであれば、あなたが娘の代わりになることができます。でも、今回の場合、娘もあなたも相続人です。娘の代わりにあなたが「法定代理人」として、遺産分割協議をすることはできません。あなたの「妻(相続人)」としての立場と、娘の「母(法定代理人)」としての立場が、対立してしまうからです。
そこで、「特別代理人」を決めるように家庭裁判所に申し込む必要があります。家庭裁判所は、あなたの娘のために遺産の話し合いをできる人を選びます。
登記手続について
その後、あなたと、息子、娘の特別代理人の3人が話し合い(遺産分割協議)をします。その結果、息子と娘の特別代理人が、あなたが家をもらうことに同意すれば、「あなたが家を相続する」という内容の遺産分割協議書を作ります。貯金など、他の財産についても一緒に決めておくことが多いです。
遺産分割協議書には、話し合いに参加した人全員が、名前を書いて実印<=役所に登録したはんこ>を押す必要があります。息子と、娘の特別代理人から、「印鑑登録証明書」をもらってください。「印鑑登録証明書」は役所でもらうことができます。
戸籍謄本など他の必要書類を全部準備できたら、法務局で家の所有者の名前をあなたに変更する「相続登記」の手続をします。
2. 夫のお金を銀行から引き出せなくなると聞きました。葬式をするために、お金が必要です。夫のお金を使いたいのですが、息子は反対しています。何かよい方法はありますか。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度(仮払い)
遺産分割協議書ができる前に、相続人が銀行から死んだ人のお金の一部を引き出すことができる制度です。いくら引き出すことができるかは、下のように計算します。ただし、150万円より多くは引き出せません。
死んだ人の預金残高×1/3×預金を引き出したい相続人の法定相続分(※)
(※)法定相続分とは、遺産を分けるときに、相続人それぞれがもらえる割合のことです。その割合は法律で決まっています。あなたの場合、被相続人の妻で、子どもがいるため、1/2です。
預金を引き出すために必要な書類は、銀行によって違います。詳しいことは預金がある銀行に確認してください。
3. 私の在留資格は「日本人の配偶者等」です。夫が死んだので、何かしなければいけませんか。これからもずっと日本で暮らしたいです。
あなたの在留資格は「日本人の配偶者等」です。この在留資格は、あなたが日本人の妻だから持てる資格です。
夫が死んだ後も日本で生活を続けるためには、在留資格を変える必要があります。
あなたの場合、「定住者」という在留資格に変えることが考えられます。これが認められるかどうかは、つぎのようなことを見て入管が決めます。詳しいことは入管に相談してください。
- 日本で3年以上、日本人と夫婦として生活していたこと
- 日本人との間に生まれた未成年の子を育てていること
- 生活するために十分なお金や、仕事ができる力があること
4. 何かほかに気を付けたほうがいいことはありますか。
あなたの夫が残した財産が合計で3000万円を超える場合、相続税がかかる可能性があります(この金額は相続人の数によって変わります)。
この金額は、預貯金だけでなく、家の価格を含みます。生命保険や、夫の退職金も計算しなければなりません。
相続税は、被相続人が死亡したときから10か月以内に税務署に支払う必要があります。10か月を過ぎてしまうと、追加のお金を支払うことになってしまうので、早めに税務署や税理士に相談してください。