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法テラス東京法律事務所だより 2026年9月
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上野のげんばから
福祉事務所のケースワーカーXさんから,お電話をいただきました。
- 男性のAさん(80代)は、70代まで飲食店を経営していましたが、現在は無職で、年金を受給しながら老人ホームに入居しています。
- Aさんの配偶者はすでに亡くなっていて、Aさんに子どもはいません。
- 老人ホームの職員さんの話では、Aさんには認知機能の低下が認められるようです。
- また、同じ老人ホームの職員さんの話では、以前、信用保証協会の職員を名乗る人物が何回か訪ねてきてAさんとの面会を求めたことがあったそうです。その人物は、「債務承認書に署名押印をしてもらいたい。」と述べていたとのことです。
- 老人ホームの職員は、これまでのところ、その人物をAさんに会わせていませんが、今後もこのままでよいのか、Xさんに相談してきました。
- Xさんは、法律に詳しい専門家の意見を参考にできないかと考えて、とりあえずホットラインを利用してみることにしました。
「債務承認書」とは、お金を借りた人(債務者)がお金を貸した人(債権者)に対し、お金を返す義務(債務)があることを認めて署名・押印する書面のことです。債務者がこの文書に署名押印すると、もし債務の消滅時効期間が経過して消滅時効が完成していたとしても、消滅時効の効果を主張できなくなってしまいます。
ところで、Aさんがもし債務承認書に署名押印したらどうなってしまうのでしょうか?
Aさんが認知機能の低下のために、自分が署名押印することによって消滅時効の効果を主張できなくなることを理解していなかったことを証明できるなら、債務承認の意思表示の無効を主張して争うこともできます。もっとも、最初から債務承認書に署名押印しなければ、そんな面倒なことにならずに済むはずです。
Aさんの場合、認知症による判断能力の低下がどの程度か分かりませんが、もし医師の診断の結果、例えば常に物事を判断する能力を欠いている(後見相当)と判定されたときは、Aさんに代わって契約等を行う法定代理人(成年後見人)を家庭裁判所に選任してもらう手続(後見開始の審判申立て)をとることができます。
もし、Aさんが、他にも法的な問題を抱えている場合には、成年後見人の選任を検討した方がよいかもしれません。
Xさんは、ホットラインを利用した後、「今後も同じような問題があるかもしれないし、Aさんにも成年後見人が選任されていたら安心なのではないかしら。」と考えて、相談してきた老人ホームの職員さんには、Aさんのことで弁護士に一度相談してみるようすすめてみることにしました。
似たようなケースでお困りのときは、ぜひホットラインをご利用いただければと思います。
<このお話は実例を参考にしたフィクションです。>
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