法テラスについて

理事長あいさつ

理事長写真

令和6年5月7日

日本司法支援センター(法テラス)の設立と主な業務

日本司法支援センターは、司法制度改革の柱の一つとして、「総合法律支援法」に基づき平成18年4月に設立されました。
 センターは、様々な困難や悩みを抱える方々に法の光を「照らす」ことにより問題解決への道を指し示すことができる、暖かな日差しの注ぐ「テラス」のような場でありたいとの願いを込めて、通称『法テラス』と呼ばれることになりました。
 法テラスは、離島や過疎の地域から大都会まで全国47都道府県に103の地方事務所・地域事務所等を設置し、コールセンターや本部事務所(東京)とともに、皆様と司法を結ぶ架け橋となり司法サービスが身近で利用しやすい社会が実現することを目指して活動を続けています。

法テラスの主な業務は、(1)情報提供 (2)民事法律扶助 (3)国選弁護・国選付添関連 (4)司法過疎対策 (5)犯罪被害者支援の各業務と(6)関係機関・団体から委託を受けた法律援助業務などですが、この内コールセンターと地方事務所が法制度や相談窓口の情報を紹介する情報提供件数は年間60万件を超え、民事法律扶助による法律相談援助は年間30万件以上、代理援助は年間10万件以上の利用をいただいています。
 このように、法テラスは、経済的または社会的その他の理由により司法サービスの提供を受けることが容易でない多くの皆様に利用されてきましたが、近年は、大きく変化する社会の動きを反映して、提供するサービスは年々多様なものへと広がっています。

​​時々の社会課題に向き合って

法テラスは、時々の社会が直面する諸課題に対応するため、平成20年代の法改正等を通じて次のような新たな業務に取り組んできました。
(1)「東日本大震災法律援助」 (平成24年開始)
 東日本大震災の被災者支援のために、「法テラス震災特例法」に基づき法律相談援助・代理援助 等を実施 (なお、震災特例法は、令和3年3月31日限りで失効したため、その後の新たな援助申込みの受付は終了しています。)
(2)「被災者法律相談援助」 (平成28年開始)
 相次ぐ地震・豪雨等による大規模災害の被災者支援のために、法律相談援助を実施(平成28年熊本地震・平成30年西日本豪雨・令和元年東日本台風・令和2年7月豪雨・令和6年能登半島地震)
(3)「特定援助対象者法律相談援助」 (平成30年開始)
 認知能力が十分でなく自己の権利の実現が容易でない高齢者・障がい者等の支援のために、法律相談援助を実施
(4)「DV等被害者法律相談援助」 (平成30年開始)
 DV・ストーカー・児童虐待の被害者の支援のために法律相談援助を実施
(5)被疑者国選弁護の勾留事件全件への拡大 (平成30年開始)
 貧困等の理由で自ら弁護人を選任できない被疑者の国選弁護人候補者の指名通知等に係る業務

さらに、社会の期待に応えて

さらに、近年は、コロナ禍以降の社会経済情勢の激変に伴い、社会的な関心の高い様々な課題に取り組むために、法テラスによる幅広い支援が求められるようになってきました。
(1)「電話等法律相談援助」
 コロナ禍の下でサービス提供の困難に対応するため、対面によらずに相談を可能とする「電話等法律相談援助」を開始し(令和2年)、その後は、平常時にも電話等を活用した法律相談援助を実施しています(令和4年)。
(2)「外国人在留支援センター」(令和2年)
 日本各地で暮らす外国人の増加に伴い政府が開設した「外国人在留支援センター」内に法テラス国際室を設置し、関係機関・団体と連携して在留外国人の法的支援に取り組んでいます。
(3)「霊感商法等対応ダイヤル」(令和4年)・「特定被害者法律援助」(令和6年3月)
 旧統一教会に係る問題等に対する関係省庁の合同電話相談窓口の役割を引き継ぎ、「霊感商法等対応ダイヤル」を開設し(令和4年)、心理士・社会福祉士などの専門職と連携・協力するとともに、全国統一教会被害対策弁護団と連携して被害者の支援・救済にあたってきました。
 また、令和5年12月に成立した「特定不法行為等被害者特例法」に基づき、旧統一教会問題の被害者救済のために、法律相談援助や代理援助などの「特定被害者法律援助」を開始しました(令和6年3月)。
(4)ひとり親家庭の子どもの養育費確保の支援(令和6年4月)
 民事法律扶助の利用者の負担軽減を図るなど、利用しやすい制度とするための運用改善を実施しています。
(5)能登半島地震の被災者支援のための「被災者法律相談援助」(令和6年1月)
 地震発生の日から1年となる令和6年12月末日まで、被災者に対する法律相談援助を実施しています。
​(6)「犯罪被害者支援弁護士制度」「離婚と共同親権」​
 令和6年春の法改正により、犯罪被害者支援弁護士制度(総合法律支援法)や離婚後の共同親権を可能とする制度(民法)が新たに導入されることになりました。いずれの法改正も、2年以内の施行が予定されており、法テラスは改正法の施行に伴う必要な体制整備や連携強化の準備に取り組みます。

自治体・福祉等の関係機関・団体などとの連携・協働を進める

​​法テラスの設立から今日まで、内外の社会経済状況は大きく変動してきました。
 日本社会においても、著しい少子高齢化と雇用環境・地域社会・家族関係の変化、孤独・孤立や格差と生活困窮の問題の広がりなどが重要な課題として認識されてきており、社会生活上の困難を抱える幅広い層の人々への支援が様々な分野で取り組まれています。
 人々が抱える法的問題は、借金などの金銭問題、夫婦・親子・相続等の家族関係、職場と労働の問題、住居の問題、インターネットを含む生活上の取引を巡る諸問題、犯罪や各種の人権侵害など多岐にわたっています。
 このような問題の背景には、法律・福祉・医療・心理・教育・雇用など多分野にわたる複合的な問題が含まれており、その根本的な解決のためには関係機関等が協力した総合的・包括的な支援とともに、それを効果あるものとするための仕組みや体制の整備が必要です。
 法テラスは、こうした法的問題を含む複合的な問題に対して包括的な支援を図ることができるよう、福祉機関や自治体等の関係機関・団体及び専門職との連携・協働の輪を広げ、「成年後見制度の普及・利用」や「生活困窮者の自立支援」、「司法ソーシャルワーク」や「アウトリーチ」の実践など様々な活動に取り組んできました。
 そして、今後とも、高齢者、障がい者、子ども、女性、若年者、生活困窮者、労働者、消費者、過疎地住民、外国人、被災者、犯罪被害者等を始めとして、困難に直面しながら声をあげることが容易でない人々を司法支援につなぐことができるよう、地域の方々と連携・協働する活動に努めていきたいと思います。

より良いサービスの提供のために~DX推進・業務改善とともに担い手の働きがいを高め働きやすい環境を目指して

複雑多様化する司法アクセス拡充のニーズに応え、より良いサービスを提供していくためには、法テラスの人的体制と財務基盤などを始めとする業務運営体制の整備・充実を図ることが極めて重要です。
 司法アクセスサービスの提供は社会生活の維持に必要不可欠な公共サービスの一つとされていますが、社会のニーズに応えて年々広がる業務は働く地域も年齢・経験も異なる多様な職員らによって担われています。また、法テラスの職員の約7割が女性です。
 困難を抱える人々に寄り添い支える業務を担う「人」、すなわち法テラスで働く職員体制の充実は法テラスの業務の「かなめ」であり、法テラスの理念に共感し現場を担う職員一人ひとりの志と能力を活かし、その成長を図り、やりがいを高め、働きやすい環境を整備して人材の確保・育成に努めることは、今日、司法アクセスサービスの充実のために何よりも大切なこととして取り組みたいと思います。

法テラスは、社会のデジタル化の進展に対応して第5世代システム更改の令和10年度に向けて順次情報システムを更新し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を目指して、業務の在り方や組織運営の在り方の改善改革を進めるべく努力を重ねてまいります。
 そして働く環境の整備を着実に進めるためにも、デジタル技術の活用とともに、年々拡大し複雑化する業務をよりシンプルに簡素化を図るなどの業務改善に積極的に取り組まなければなりません。
 DXの推進を通じて業務プロセスを見直し、利用者の利便性の向上とともに事務の大幅な効果的・効率的改善を図って新たなエネルギーを生み出し、地域の人々に向き合い地域連携構築などの活動を活性化して新たな法テラスの価値を創出すること、さらにデータに基づく施策を進めること、そしてこれらの事業の裏付けとなる安定した財政運営を確立することなど、業務・組織運営の充実・強化に向けた課題への取組を今後一層強めていきたいと思います。

司法アクセス拡充の時代へ

■​今日、私たちは、内外ともに複雑困難な情勢の下で多くの課題に直面していますが、そのような時代にあって、国連の全加盟国が賛同して採択されたSDGs17の共通目標にも掲げられているとおり、司法アクセスの拡充(目標16)を始めとする人権・環境・社会的公正などに関わる諸課題に取り組もうとする国際社会の潮流は力強く着実なものがあります。
 法テラスは、こうした時代の要請に応えて、国内外の取組にも学びながら、契約弁護士・司法書士の皆様、そして多くの関係機関の皆様との連携・協働を深め、職員・常勤弁護士(スタッフ弁護士)らの力を合わせて、司法アクセスサービスと業務・組織運営の充実を図るよう努力を重ねてまいります。
 皆様におかれましては、今後とも法テラスの事業と活動にご理解をいただき、貴重なご意見を賜りまして、司法アクセス拡充の取組の発展のために、変わらぬご支援ご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

令和6年5月
日本司法支援センター
理事長 丸島 俊介

 

丸島 俊介(まるしま しゅんすけ)理事長プロフィール

経歴

昭和51年3月 東京大学法学部卒
昭和53年4月 弁護士登録
平成 7年 4月 日本弁護士連合会常務理事
平成11年 6月 司法制度改革審議会主任専門調査員
平成20年 4月 日本弁護士連合会事務総長
平成23年10月 原子力損害賠償支援機構理事
    (平成26年8月 原子力損害賠償・廃炉等支援機構に改組)
​平成24年 8月 法曹養成制度検討会議委員
平成29年10月 日本司法支援センター常務理事
令和 4 年 4月 日本司法支援センター理事長