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スタッフ弁護士の出口支援

更新日:2022年12月8日

法テラス多摩法律事務所 長谷川 堅司 弁護士(67期)

 
法テラス多摩法律事務所に所属する長谷川弁護士は、前任地の法テラス浜松法律事務所に所属していた頃から、地元弁護士会などと協力して、刑務所からの出所者を福祉に繋げて更生の環境を整える支援(出口支援)に取り組んでいます。
その取組は、中日新聞でも紹介されました。

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。県弁護士会が栃木刑務所と協力 出所者支援へ(中日新聞しずおかWeb)(外部サイト)
 
長谷川弁護士は、出所から地域への定着まで切れ目のない支援を実現するために、全国各地に赴任しているスタッフ弁護士に声かけを行い、同様の問題意識を持つメンバーを集め、「出口支援PT」を発足させました。
今回、その長谷川弁護士に、PTの取組内容について聞いてみました。
 

「出口支援PT」の発足

2019年6月、私が所属していた静岡県弁護士会とNPO法人静岡司法福祉ネット明日の空が主催、法テラス等が共催した「司法と福祉の連携に関するシンポジウム」に、栃木刑務所に所属する福祉専門官(社会福祉士)が参加していました。
その福祉専門官から、「困窮のあまり窃盗を繰り返してきた人がいる。今度こそ再犯を防ぎたい。弁護士に協力してもらえないだろうか。」という相談が持ち掛けられました。
この相談をきっかけに、静岡県弁護士会では、栃木刑務所の出所者の生活保護申請に同行する事実上の活動を開始しました。
私は、この活動を全国組織である法テラスの強みを活かして広げることができないかと考え、全国のスタッフ弁護士にも声を掛けました。
すると、更生支援に関心のあるスタッフ弁護士数名から、この活動を推進したいとの返事をもらい、PT発足に至りました。
 

弁護士が出口支援に関わることの意義

私が弁護士になった2014年時点で既に、保護観察所、地域生活定着支援センター、刑務所、検察庁、弁護士会等の各機関が更生支援に力を入れており、支援に繋がるための「機会」は拡がってきていました。
しかし、機関ごとに制度の枠組みがあり、その枠組みから外れてしまうと支援が難しい側面がありました。
私は、弁護士には、制度の枠組みを越えて更生のための「機会」を提供できる可能性があるのではないかと考えます。
弁護士は、直接的には日本弁護士連合会の委託援助を利用することで、生活保護の同行申請をすることができます。
また、法的な助言・代理をすることで、その方が抱えている法的問題を含む様々な問題を、適法に解決に導くこともできます。
さらに、地域の支援者の方と連携し、弁護士も一緒に伴走することで、ご本人はもとより、支援者の方々も安心感をもってもらえると思っています。
 

今後の課題

出口支援の活動には、2つの課題があると考えています。
1つは、出所者の方に支援を受けるメリットをいかにして理解してもらうかという点です。
生活保護を申請するか否かは、最終的には出所者ご本人の意思に委ねられています。
弁護士は押し付けることがあってはいけないと考えています。
もう1つの課題は、弁護士の担い手をどのようにして確保していくかという点です。
一部の弁護士会には、入口支援・出口支援の制度がある弁護士会があり、その取組は次第に全国に広がってきています。
しかし、その情報は、必ずしも全国の弁護士に共有されているわけではありません。
 

「出口支援PT」の活動紹介

当PTは、栃木刑務所の福祉専門官からの持ち込み相談に対応しており、生活保護の同行申請に協力する体制を整えています。
しかし、ご本人が生活保護を拒否してしまうケースも存在します。
そこで、当時、法テラス栃木法律事務所に赴任していた鈴木彩葉弁護士と福祉専門官を中心に、栃木刑務所において「福祉講話」を実施することにしました。
「福祉講話」では、生活保護制度の説明や、弁護士による支援内容について、具体的な事例を交えてイメージしやすいように説明しました。
当PTでは、今後も、「福祉講話」を充実していく等の方法によって、ご本人の意思決定の後押しをしたいと考えています。
また、当PTでは、2か月に1度の頻度で会議を行っており、全国各地の入口・出口支援の実践内容について情報収集と情報共有を行っています。
これらの情報を全国のスタッフ弁護士に共有することで、各地の実情に合わせた入口・出口支援の拡充に貢献したいと考えています。
 

最後に

弁護士は、基本的に過去に発生した犯罪行為について、事後的に関わることしかできません。
しかし、更生のための「機会」に巡り合うための活動をすることは、将来、犯罪をする人、被害に遭ってしまう人を一人でも少なくすることに貢献できるのではないかと考えます。
もっとも、一人では、やれる内容も、関われる人数も限られてしまいます。
しかし、全国各地に赴任しているPTメンバーや弁護士会の先生方と一緒に活動することで、活動内容の質や、関われる方の数を大きく向上させることができるという実感が湧いています。
日頃から、更生支援の分野では、PTのメンバーや各地の弁護士会の先生方の取組に、大きな学びと刺激をいただいています。
この場を借りて、皆様に心よりの感謝を申し上げます。

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