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46号 災害と法律

更新日:2019年9月6日

災害と法律

 
 2018年は、大阪府北部地震や平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、北海道胆振東部地震など数多くの大きな災害に見舞われた1年でした。被害もこれまで私たちが経験したことのない規模のものが多くなってきているように感じます。
 実際に災害にあうと、何をどうしたらよいか、何から手をつけたらよいか、わからないものです。そんなときのため、今回の特集では災害時に起こりやすいトラブルをもとに、皆さんの支えとなる法律はどうなっているのかをご紹介します。

災害をテーマにしたイラスト

地震で、住んでいる賃貸マンションにヒビ割れ。大家に言っても不動産屋に言っても修繕してくれません。自費で直して後で請求したら、払ってもらえるのでしょうか。

 災害が発生するたび、よく耳にするトラブルです。でも実際に自分が当事者になってみると、どうしていいかわからないものです。
 民法の606条では「賃貸物の修繕」に「賃貸人は、賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」とあります。ヒビ割れの部位や程度、修繕にかかる費用等にもよりますが、基本的には貸主に修繕を行う義務があります。

 それでも修繕に応じてもらえない場合は、使用できない割合に応じて家賃の全部または一部の支払を拒むことができます。借主が自費で修繕して、その修繕費を貸主に請求する事もできます。貸主が修繕費を支払わない場合は、修繕費と家賃を相殺することもできます。ただし、修繕の原因や必要性などは、修繕してからでは分からなくなりトラブルになる可能性があるので、自分だけで判断せず、まずは弁護士などの専門家に相談しましょう。

 また、災害救助法という法律に、修繕費を支給してもらえる応急修理制度があります。大家が修繕に応じない場合には、借主も利用できる制度です。利用可能な要件や損傷の程度がありますので、詳しくは市役所などの行政機関に相談してみてください。

明日から旅行会社のツアーを予定しているのですが、目的地では豪雨被害が出始めており、キャンセルしようと思います。キャンセル料はかかるのでしょうか。

 国土交通省の「標準旅行業約款」では、「旅行者は、天災地変が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいときには、旅行開始前に取消料を支払うことなく契約を解除することができる」と定めています。
 多くの旅行会社では、基本的にこの「標準旅行業約款」に従い、おのおのの会社の約款を定めています。具体的には予想される災害の内容やその時の交通状況によって、その判断は異なりますので、申し込む際に必ず確認しておいたほうがよいでしょう。連絡や確認をせずに自分の判断のみで旅行に参加しなかった場合には、キャンセル料や違約金を請求される可能性がありますので、注意してください。
 また、近年のデジタル化により、旅行の申込方法は多様化しており、ツアー会社を通さずに自身で宿泊施設や交通機関の予約をする場合もあります。自分がどのようなツールで予約をし、その連絡先はどこなのか、また、どのような契約なのか、申し込む前にしっかりと確認することも大切です。

自宅に土砂が流入してきました。自分で片づけなければならないのでしょうか。また、その費用はどうなるのでしょうか。

 災害からの復旧の第一歩を踏み出すにあたり、災害によって発生するがれきや土砂の撤去が障害となることがあります。近時の災害では、ボランティアの方々による支援も一層広がりを見せていますが、そもそも、撤去に関する責任は誰にあるのでしょうか。
 私有地の土砂の撤去は、流入先の所有者は、流入元の所有者に対して撤去を求めることができます。ただし、どこの土地から流入したのかわからない場合には、自己の費用で撤去するしかありません。災害に関する土砂やがれきの撤去は、国からおおまかな指針は示されていますが、運用の細部は、各市町村が決めています。
 昨年の西日本豪雨では、多くの地方公共団体が私有地の土砂についても地方公共団体による撤去を実施しました。ただ「人力では撤去が困難なもの」といった利用の要件がある場合があります。また、自費で撤去を行った場合の費用の支援(補償)制度もありました。
 近年の災害の多発を受けて、災害支援も一層柔軟で細やかに運用されるようになっています。お住いの地方公共団体からのお知らせをよく確認し、利用できる制度があるか確認してください。

被災した住宅には災害支援金がもらえると聞きました。でもどう見ても家は全壊なのに、判定は半壊でした。審査のやり直しや異議申立てはできますか。

 私たちが生活する上で必要不可欠な、住宅。災害で被害を受けると、その再建はとてもお金がかかるものです。国は様々な支援策を設けていますが、その際に重要になるのが被害の程度を証明する「罹災証明書」です。
 罹災証明書は、誰が、どこで、どの程度被災したのかを証明するための書類で、調査員による調査が行われ、判定となります。その内容は、「全壊」「大規模半壊」「床上浸水」など被災の程度により変わり、それによって受けられる支援や減免制度が異なります。
 その判定に納得がいかない場合には、市町村に不服申立て(再調査依頼)ができます。罹災証明を前提とする被災者生活再建支援法による支援金の支払いなどを定めた決定に対して不服申立てをするなどの方法が考えられます。実際に判定に納得できないケースも多く、平成28年の熊本地震では6000件を超える不服の申立てがあったそうです。できれば納得した判定となるよう、自分でも不動鑑定士や建築家などの専門家に相談したり、資料などを用意しておくとよいでしょう。

家の中はようやく片づいたけど、修繕費や建築費用がかかり二重ローンでお金が大変。なにか利用できる支援制度はありませんか。

 家も再建し、やっと普段の生活を取り戻せたと思っても、今度は住宅ローンなどが重なって困ることがあります。
 そこで国は、被災者生活再建支援法を定め、自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた方に、生活の安定のため支援金の支給を行っています。住宅の被害程度に応じて支給する「基礎支援金」と、住宅の再建方法に応じて支給する「加算支援金」があり、最大で3 0 0 万円の支援が受けられます。申請窓口は市町村です。
 二重ローンの改善策として、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という制度もあります。これは、災害により債務の支払いが困難と見込まれるなどの一定の要件を満たす場合に利用できる、債務整理の方法です。住宅ローンだけでなくクレジットローンや自動車ローンでも利用が可能です。
 この制度は弁護士などの「登録支援専門家」による手続支援を依頼する必要があります。登録支援専門家の費用は無料です。ただし、このガイドラインの利用にあたっては特定調停の申立てをすることが必要ですが、特定調停手続の利用に関する費用は原則自己負担となります。

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