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51号 外国人と法律

更新日:2021年3月15日

外国人と法律

共生社会を目指して

 日本に住んでいる外国人はグラフ1のように毎年増え続けており、2019年12月末には過去最多の約293万人になりました。新型コロナウイルス感染症の影響により、旅行などで訪日する外国人の数は大きく減少していますが、2020年6月時点で、約288万人の外国人が日本で暮らしています。
 また、2019年の「入管法※改正」により新たな在留資格がつくられ、将来的に日本で働く在留外国人は更に増えていくかもしれません。
 日本に暮らす外国人と日本人が安心して安全に暮らせる共生社会の実現を目指し、2020年7月、国は『外国人在留支援センター(FRESC)』を設立しました(詳しくはP8-9へ)。また、各地方公共団体にも相談窓口(ワンストップセンター)を整備するべく、国はその支援も始めています。
※出入国管理及び難民認定法

在留外国人の推移のグラフ

多言語による相談窓口に寄せられる問合せ

  法テラスでは、法テラスの職員と外国語で話すことができる通訳サービス「多言語情報提供サービス」を行っています。多様な外国語を話す利用者に対応するため、英語や中国語をはじめとする9言語に加えて、2021年1月からはインドネシア語の対応も開始しました(利用方法など詳しくはP4へ)。グラフ2のように、多言語情報提供サービスへの問合せ件数はサービス開始から増え続けており、グラフ3のように様々な法的なトラブルに関するお問合せが寄せられています。

 

 国籍を問わず、誰にでも法的なトラブルは起こり得ますが、「在留資格」など、外国人の方ならではの問題もあります。次のページから、2つのケースを見てみましょう。

ケースでみる外国人と法律

ケース1 離婚

Q  私は5年前に母国で知り合った日本人男性と結婚し、4年前から夫とともに日本で暮らしています。子供はいません。在留資格は「日本人の配偶者等」です。1年ほど前から、夫とちょっとしたことで口論になることが多く、話し合った末に、離婚して別々に暮らそうということになりました。私はいま仕事もありますし、離婚後も日本で生活したいと思っています。どのような手続をとればいいでしょうか。

A
 外国人同士、あるいは日本人と外国人の夫婦が離婚する場合、まず、どこの国の法律に従って離婚をすることになるかを考える必要があります。これは「準拠法」と言い、法の適用に関する通則法(通則法)に、定めがあります。夫婦の一方が「日本に常居所のある日本人」であるときは、日本法によって離婚をすることになるので(通則法第27条)、あなたの場合は日本の民法に従って離婚できるかを考えることになります。
 日本の民法では、当事者が離婚について合意した上で戸籍法上の届出をすれば離婚が成立します(協議離婚)。
 ただし、離婚は裁判所など公的な機関を通じてしか手続できない国も多いということに注意が必要です。あなたの母国で協議離婚が認められていない場合、日本で成立した離婚の効力が認められず、再婚できなくなってしまう可能性があります。このような場合には、当事者同士が離婚に合意していても、弁護士に相談するなどして必要な手続を選択したほうがいいでしょう。
 次に、あなたの在留資格について考えましょう。あなたの場合、「日本人の配偶者等」という在留資格、つまり日本人と結婚生活を営むことを目的とする在留資格に基づいて日本に滞在しているため、離婚により、その前提が失われることになります。日本に滞在し続けるためには、別の在留資格に変更することが必要です。
 また、離婚成立前であっても、別居によって在留資格該当性が失われたと判断された場合、在留資格が取り消されてしまう可能性もあります。
 離婚が成立した場合、14日以内にそのことを出入国在留管理局に届け出ることが必要です。離婚を届け出ても、在留期間が残っていれば、すぐに在留資格が失われる訳ではありません。ただし、夫婦生活の実態が失われてから6か月以上経ってしまうと、「日本人の配偶者等」という在留資格の取消事由に該当し、在留資格を失うことがあるので、それまでに変更できるように準備を始めた方がいいでしょう。
 一定の条件がありますが、3年程度以上日本で実体のある夫婦生活を送っていたのであれば、「離婚定住」と呼ばれる定住資格への変更申請が考えられます。また、あなたの経歴や勤務先が必要な条件を満たせば、就労に基づく在留資格への変更も可能でしょう。
 なお、本件とは異なりますが、日本人配偶者に勝手に協議離婚届を出されてしまい、思いもよらないタイミングで在留資格を失い、大変な状況に置かれているという外国人配偶者のケースが報告されています。一度受理された離婚届は裁判で争うほかありませんが、これを予防するには離婚届不受理申出制度という制度があります。市区町村役場で手続が可能です。

ハートの割れたイラスト


ケース2 就業

Q  私は日本の大学に通う留学生で、もうすぐ卒業します。内定先の企業から、入社前の研修に参加するように言われました。何か気を付けることはありますか?

A
 外国人が日本に滞在する場合、その目的に合わせて在留許可を得る必要があります。あなたが「留学」の在留資格で滞在している場合、大学卒業に伴い在留資格を変更する必要があります。スムーズに仕事を始められるように、内定先と相談して在留資格変更許可申請を進めてください。
 この際、税金等の未納があると在留資格変更が許可されない場合があります。特に、国民年金保険料の未納に注意してください。日本に住民登録をしている20歳以上かつ60歳未満の人は、外国籍であっても、原則として公的年金に加入し保険料を納付する義務があります。年金保険料は経済状態によって免除の申請をすることができ、学生の場合には卒業まで支払を猶予する制度(学生納付特例)があります。猶予ないし免除はいずれも自動的に認められるものではなく申請が必要ですが、手続さえしておけば、在留資格変更の際に不利益に扱われることはありません。
 なお、「将来年金を受け取ることができないから」と年金保険料を支払わない方もいるようですが、日本の公的年金に加入したのち帰国した外国籍の方は、加入期間に応じた脱退一時金を受け取ることができます。詳しくは日本年金機構にお尋ねください。
 次に、卒業前に参加する内定者研修は「留学」の在留資格で参加することになりますが、この資格は、原則として日本で仕事をすることができません。資格外活動許可を得れば週に28時間の就労が可能ですが、参加した時間分の手当てが支給される場合は、内定者研修も「仕事をしている」とみなされます。研修が資格外活動の時間を超えないよう注意が必要です。春休みなどの長期休暇の場合、週に40時間の就労が認められるので、このタイミングに合わせることが考えられます。

 

日本語が不安だけど、困っていることを聞いてみたい。ひとりで悩まず、まずは法テラスへ電話してください。

法テラスの「多言語情報提供サービス」

0570-078377(おなやみないない)
平日9時00分から17時00分(祝日・年末年始を除く)

「0570-078377(おなやみナイナイ)」に入ったお電話を、利用者、通訳業者、法テラス職員の3者間で繋ぎ、お問合せの内容に応じて、お困りごとの解決に役立つ日本の法制度や適切な相談窓口についての情報を外国語でご案内しています。
 英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語、ネパール語、タイ語、NEW!インドネシア語 でお電話できます。

知ってる?やさしい日本語

「やさしい日本語」とは?

 相手に配慮した、外国人にもわかりやすい日本語のことです。
 例えば、「弁護士」を「法律に詳しい人」といいかえるなど、難しい言葉をわかりやすく伝えようとするものです。
 日常的な日本語であれば理解できる外国人の方も多く、様々な外国語での情報提供のほかに、やさしい日本語も、あらゆる機関で活用され始めています。2020年8月には、出入国在留管理庁と文化庁が、共同で「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を出しています。
 法テラスでも、誰にでもわかりやすい情報発信を目指し、取り組んでいます。

コラム 「やさしい日本語」は日本語の練習  法テラスの外国人支援の現場から 国際室長 冨田 さとこ

 「つまり『高所に迅速に避難してください』を『高いところに急いで逃げてください』と言い換えるのです」。ある県の外国人支援の取組について話を聞く中で、初めて耳にした「やさしい日本語」を咄嗟に理解できずにいた私に、担当者が、すぐに言葉を繋いで教えてくれました。これが私と「やさしい日本語」の出会いです。
 調べてみると、阪神・淡路大震災で必要な情報から取り残されてしまった外国人が多数いたことへの反省に始まった取組でした。その後の外国人人口の増加やインバウンド需要の高まりに押され、災害に関する情報だけでなく、平時の生活情報等についても誰にでも分かる日本語で発信しようという動きに広がっています。
 思い出すのは、アメリカに留学していた時の出来事です。周囲はアメリカ人学生ばかりのゼミで、教授が講義に慣用句を使ったことがありました。私が意味を問うと、どうも虫の居所の悪かったらしい教授は、それを更に別の慣用句で説明し、私はその場で意味を理解することを諦める他ありませんでした(例えるなら、「一挙両得」の意味を聞いて「一石二鳥だよ」と返答されたようなものです)。
 あの時に感じた疎外感を思いながら、早速、窓口で外国人利用者の方々に接する際に、「やさしい日本語」で話すように心がけることを始めました。また、法テラスの業務説明のうち外国人利用者が接することの多いものから、「やさしい日本語」に変換しホームページに掲載することを検討しています。
 「やさしい日本語」では、文章の構成をできるだけ単純にして(受け身を避ける等)、意味を変えずに、より平易な言葉に言い換えることが必要です。簡単そうに見えて案外難しく、何度も話し合いながら作業を進めています。
 日本語から英語に翻訳するときにも感じることですが、文章の意味を変えずに変換する作業は、自分がその文章を正しく説明・理解できているかということに向き合う過程でもあります。「やさしい日本語」は、結果として得られるものの多い「日本語の練習」といえるのかもしれません。

「やさしい日本語」による、令和2年7月豪雨の支援情報

ここでは、やさしい日本語を使って「令和2年7月豪雨で被災された方に向けた支援情報」を紹介しています。※日本人の方でも使える制度です。

令和2年7月豪雨※で被害にあった人へ ※令和2年(2020年)7月に、たくさん雨が降ったことです。
法テラスでは、被害にあった人に、(1)と(2)のことをしています。
(1)令和2年7月豪雨で被害にあったことで困っている人に、役に立つ日本の法律の制度や相談するところを教えます。
0120-078309 (令和2年7月豪雨で被害にあった人が使える番号です。通訳のサービスはありません。お金はいりません。)
(2)令和2年7月豪雨で被害にあった人の中で、国が決めた場所に住んでいたり、そこで働いていたりした人は、弁護士(法律に詳しい人)などに相談ができます。お金はいりません。外国人の方は、在留資格があり、今日本に住所があることが必要です。

令和2年7月豪雨特設ページ(令和3年7月2日で公開を終了しました。)
 

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