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54号 多様化する働き方

更新日:2022年3月9日

働き方改革で変わった?変わらない?

多様化する働き方

 日本では、出生数の減少に伴って少子高齢化が進み、2008年をピークに人口が減少に転じました。労働人口も減少の一途をたどっており、長時間労働や過労死などの問題も起きています。
 そのため、労働生産性を上げることや働き手の確保、多様な人材を受容するダイバーシティの推進などが社会的な課題となっています。それらの課題を解決するための鍵を握るのが「働き方改革」です。
 近年では、フリーランスのように雇用によらない働き方をする人も増え、ライフスタイルに合わせて働き方が多様化しています。特に、昨今のコロナ禍でテレワークや在宅勤務が一気に普及したこともあり、多様化の流れはより一層加速し、企業においてもその対応が求められています。

労働力人口の推移

※令和3年版厚生労働白書「労働力人口の推移」のグラフを元に作成
※資料:2000年、2020年は総務省統計局「労働力調査」、2025年、2040年はJILPT(独)労働政策研究・研修機構「平成30年労働力需給の推計」

多様な働き方を選択できる社会へ

 労働人口の減少や働き方の多様化などの課題に対応すべく、いわゆる「働き方改革関連法」による改正後の労働基準法等が令和元年4月から順次施行されています。
 働き方改革とは、「働く人々がそれぞれの事情に合わせて多様な働き方を選択できるような社会にするための改革」のこと。一人ひとりの就業機会を拡大し、意欲や能力を十分に発揮できる環境を作り、よりよい将来の展望を持てるようにすることの実現を目指しています。

働き方改革の主なポイント

働き方改革は次の3つが主となっています。

  1. 労働時間の是正/働きすぎを防ぐため、時間外労働の上限や勤務間インターバル制度を設けてワークライフバランスを実現する
  2. 正規・非正規間の格差解消/公正な待遇を確保するため、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差をなくす
  3. 多様で柔軟な働き方の実現/労働者が自分の能力を発揮しながら望みどおりに働ける環境を整備する

 では、具体的にどのような取組がなされているのでしょうか。また、対応が進む中でトラブルが生じる可能性もありますが、どのようなトラブルが発生し得るのでしょうか。

会議の様子

Q残業時間の上限ってあるの?

労働時間の適正管理

 下記に違反した場合には、罰則が適用される可能性があります。

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月100時間未満(休日労働を含む)

 残業時間の上限は、勤務場所を問わないため、在宅勤務についても同様です。
 また、近年は過労死が社会問題になっています。

【過労死等の定義】

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

 厚生労働省では『週40時間を超える時間外労働、休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど』、業務と病気の発症との関連性が徐々に強まるとしています。
このことから、時間外労働については、

  • 発症前1か月間におおむね100時間
  • 発症前2~6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間

というラインを超えると過労死等につながりかねないという意味で、一般に「過労死ライン」と呼ばれます。
 2021年9月には脳・心臓疾患の労災認定基準が約20年ぶりに改正され、「過労死ライン」の見直しが行われました。
 残業時間の長さが過労死ラインを越えなくても、短期間の過重業務・異常な出来事として、発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合等については、「業務と病気の発症との関連性が強い」と評価できるとされています。

Q有給休暇って、どんな条件で取れるの?

次有給休暇の取得

左記の2点を満たしていれば、年次有給休暇を取得することができます。

  • 雇入れの日から起算して6か月間継続勤務している
  • 全労働日の8割以上出勤している

 さらに、使用者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対し、その有給休暇の日数のうち5日については、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、取得時季を指定するなどして確実に取得させなければなりません。
 右記2つの条件を満たせば、パートやアルバイト等の方も取得できます。

Q非正規社員にだけ通勤手当や扶養手当が無いのですが・・・

雇用形態における差別・格差

 同一企業内において正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。実際の裁判では、Qにあるような手当が非正規社員にも認められたケースがあります。
 事業主は、正社員と非正規社員の働き方の違いに応じて、均衡・均等な待遇の確保を図るための措置を講じなければなりません。
 また、非正規社員から正社員との待遇の差やその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければなりません。

育児・介護

子どもを病院に連れて行くために、2時間の休暇の申請をしたところ拒否されました。

 事業主側は、原則として、子の看護休暇の申出を拒否することはできません。その申出又は取得をしたことを契機として、不利益な取扱いを行った場合、原則として、法律違反となります。違反すると、事業主側の企業名や違反内容を公表されることもあります。
 従来、けがや病気の子どもの世話、予防接種や健康診断に付き添うための「子の看護休暇」は、1日もしくは半日単位でしか取得できませんでした。しかし、令和3年12月17日施行の改正育児・介護休業法によって、1時間単位での取得も可能になりました。
 しかし、改正育児・介護休業法では、就業時間の途中で抜けて再び戻ってくる、いわゆる「中抜け」までは認められていないものの、就業規則などで認めるよう事業主側で配慮することが呼びかけられています。
 時間単位で休暇を取得する場合、休暇を取得した時間の合計が1日の所定労働時間に達すると、1日分の休暇を取得したものとみなされます。子育て中の方はこの休暇を上手に利用したいですね。

副業・兼業

今、話題になっている副業や兼業ですが、会社に報告せずにやったらどうなりますか?

 平成29年3月28日に発表された働き方改革実行計画で、柔軟な働き方ができる環境整備の一環として、副業や兼業を普及促進することが明記されました。また、企業向けに副業・兼業の促進に関するガイドラインも策定されています。副業・兼業は、スキルアップや自己実現の追求ができるメリットがある一方、留意しなければならないこともあります。
 副業・兼業を始める前に、まずは在籍している会社の就業規則や服務規程を確認しましょう。副業・兼業が禁止されている場合は、会社に無断で始めると処分の対象となることも。許可されていても、届出や都度相談をする必要があったり、条件が決められていたりすることもあるでしょう。また、長時間労働につながり労働者の健康に影響がないか、労働時間管理は本業先と副業・兼業先のどちらが行うのかなど、解決すべき課題もあります。
 労働者には、会社の秘密を守る義務(秘密保持義務)や勤務先と競合する業務をしない義務(競業避止義務)、誠実に行動する義務(誠実義務)などもあります。そのため、特に規則等で副業・兼業が禁止されていなくても、あとでトラブルにならないよう前もって上司や人事部に相談しておいたほうがよいでしょう。

働き方で困ったときは・・・

次の場所に連絡等することができます。

公益通報

  1. 社内の通報窓口へ通報(内部通報)
  2. 権限を有する行政機関(労働基準監督署等または省庁等)へ通報
  3. 報道機関・消費者団体・労働組合等へ通報

 労働者が公益のために右記のような方法で通報した場合、そのことを理由として不利益な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかというルールが整備されています(公益通報者保護制度)。これは組織内の自浄作用を促進する制度でもあります。
なお、「公益通報者保護制度相談ダイヤル(03)3507ー9262※」では、通報方法や保護要件等にお答えしたり、通報に関する不適切な対応等に関するご相談を受け付けています。
 詳しくは、「消費者庁のウェブサイト(公益通報者保護法制度)」で検索してみてください。
※個別の通報の受付はしていません。

法テラス・サポートダイヤル

 法テラス・サポートダイヤルでは、お問合せに対し、適切な法制度や相談窓口等を案内しています。「0570ー078374(おなやみなし)」までお電話ください(通話料がかかります)。

障がいがあっても働ける機会をつくるために

障がい者雇用を取り巻く状況とは

  障がいがあっても働く機会を得て自立した生活を送りたい。その後押しをするために、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などの法整備、就労支援や雇用維持のための援助(支援)なども進んでいます。
 厚生労働省の「令和2年度 障がい者雇用状況の集計結果」によれば、雇用障がい者数・実雇用率※1ともに過去最高を更新しました。しかし、法定雇用率※2を達成している民間企業の割合は48・6%にとどまり、実雇用率は2・15%と法定雇用率を下回っており、まだ道半ばといえそうです。
※1 職員数に占める雇用障がい者数の割合(国:2.83%、都道府県:2.73%、市町村:2.41%、教育委員会:2.05%、独立行政法人など:2.64%)
※2 令和3年3月1日以降の法定雇用率(民間企業:2・3% 国・地方公共団体:2・6% 都道府県等の教育委員会:2・5%)

障がいのある労働者を支援する取組み

 障がい者雇用がなかなか進まない原因として、「障がい者を雇用したことがないので、職場環境の整備や障がい特性の理解、サポートなど必要な対応等が分からない。」といった背景があると言われています。
 そこで、国ではトライアル雇用やジョブコーチ支援などの制度を設けています。また、就労支援センターなどの支援機関が障がい者と企業との間に入って採用前から支援し、採用後もフォローを続けているケースもあります
 障がいの種類や程度は十人十色であり、一人ひとりに合ったオーダーメイド型の支援が望まれています。障がいがあっても、最大限にスキルや能力を発揮しながら社会参画できるような世の中を目指して、企業や支援機関が相互に連携・協力する方法を模索しています。

 

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