

志を同じくする仲間が
全国にいるという喜び
法テラス本部 国際室室長
冨田さとこ弁護士(57期)
※所属事務所は、インタビュー当時のものです。
司法過疎地や都市型の事務所を経たのち海外に行きました。
私は法テラスのスタッフ弁護士1期生です。法テラス設立時にスタッフ弁護士となり、司法過疎地である佐渡島に25才のときに赴任しました。その後沖縄への赴任を経て、2012年に一度法テラスを退職しました。そして、2013年にアメリカボストンに留学し、2015年JICA長期専門家・裁判所能力強化プロジェクトのチーフアドバイザーとしてネパールに赴任し、法テラスに戻ってきたのは2018年です。
法テラスのスタッフ弁護士になったのは、もともと司法過疎地で働きたかったからです。司法過疎地に派遣される弁護士は、都市部の弁護士に比べると、とても多くの案件を担当します。私が目指していたのは、身近な人の事件をなんでも解決できる、力のある弁護士だったので、司法過疎地でたくさんの事件数を担当すれば早く力がつくのではないかと思い、日弁連の「ひまわり基金法律事務所」に赴任しようと思いました。弁護士登録後、同事務所への赴任を目指して学び、また司法過疎地の実に触れる中で、弁護士は社会インフラの一つであることを強く感じ、そして、裁判官や検察官と同じように公的に派遣する必要があるのではないか、と感じ始めました。ちょうどその時に、公的機関として法テラスが設立されることを知り、法テラスのスタッフ弁護士となりました。
私は1期生ということもあって、たくさん恩恵を受けました。法テラスが設立され、その1期生として若い女性弁護士が司法過疎地である佐渡島に赴任するというのは、見出しにした時にキャッチ―ですよね。たくさんの取材を受け、新聞やテレビでも紹介していただきました。駆け出しの時に、こうして顔が売れることは大きなメリットだと思います。佐渡島内の人はもちろん、それ以外の方や、違う分野の方など、たくさんの方とつながりを作ることもできました。自分がやったこと以上に評価された面もあると思います。法テラス退職後も、そのときの恩返しをしたいという思いを持っていました。
また、いつのまにか「司法アクセス」は、私にとってライフワークになっていたので、いつかは法テラスに戻ろうと思っていました。そこで、一度は法テラスを辞めて留学をして、JICAの長期専門家をしていたのですが、JICAの任期を終えたあとに法テラスに戻ってきました。
外国人支援は難しいパズルを解くようなもの、そこがおもしろい。
私は現在、国際室の室長として外国人支援に携わっています。外国人からの相談は、法律問題と在留資格の問題が絡んでいることが多いんです。在留資格は見通しがつきにくい側面もあり、何を先にやるかによって、結果が大きく変わることがあります。当事者の母国の法律が絡んでくることも。この絡まり合った問題を考えるのは、まるで難しいパズルを解いているように感じます。弁護士の実力が問われる、難しいパズル。誤解を恐れずに言えば、だからこそ、すごく面白いし、パズルが解けたときには快感ですよね。
私たちが支援する外国人の方々は、勉強や就労、あるいは結婚のために日本に来て、たまたま法律的な問題を抱えてしまった方々です。高い能力や意欲を持つ方も多いですし、DV被害者など、相談者には非がないのに辛い目に遭って生活基盤を根こそぎ失いそうになっている方もいます。こうした方々が、法律問題のために在留資格まで失うことなく、法律問題を解決した上で、日本で安心して、それぞれが望む勉強や仕事、生活を続けられるよう、私もさらに知識を蓄え、尽力していきたいと思っています。
価値観を共有できる仲間が、全国に200人いるということ
法テラスのスタッフ弁護士になることの一番のメリットは、採算を気にせず、本当に困っている人の事件に全力で携われることだと思います。もちろん公的な資金を使っているわけですから、効率や費用対効果は考えなくてはなりません。たとえば1時間で済む仕事を5時間かけてやるのは論外です。ですが、一般の法律事務所で、依頼者がお金のない人ばかりでは、運営が大変です。その大変さを乗り越えて、貧困問題に取り組んできた先輩弁護士も知っているし、尊敬しています。だからこそ、事務所経営を気にせず、お金のない人の事件を精一杯できることは本当にありがたいことだと思います。
私がスタッフ弁護士になったときにはスタッフ弁護士の数は25人でした。現在は200人を超えるスタッフ弁護士が全国で頑張っています。4桁の内線で他の弁護士や業務支援室ともつながっており、いつでも相談することが可能ですし、実際にお互いによく相談しています。スタッフ弁護士は「困っている人の力になりたい」という志を同じくする仲間だからこそ、助け合うことができ、いつでも相談できる土壌があるのだと思います。
私は今、どちらかというと若い弁護士たちから相談を受ける立場になっていますが、外国人の相談者が地方にいる場合、その地方で働くスタッフ弁護士に「あなたの近くに困っている外国人がいるから助けてあげて」と依頼することがあります。こういう依頼をするのは、他に引き受け手が見つからないような、複雑だったり、手間がかかったりするケースであることが大半なのですが、電話の先のスタッフ弁護士は、大抵二つ返事で引き受けてくれます。こういう時、仲間が全国にいる強みを感じます。
人の役に立つためには力のある弁護士になる必要があります。その力をつけるために、スタッフ弁護士はとても良い修業の場だと思います。ぜひ私たちの仲間になり、一緒に悩み、時には苦しさや喜びも分かち合いながら仕事をしませんか。