賃貸アパートに住んでいます。大家さんから、「震災をきっかけに建物の耐震性を調べたところ、非常に危険な状態であることがわかり、区からもそのような指摘を受けている。」として、1年半以内に立ち退くよう言われたのですが、その後、今すぐに立ち退くよう要求されています。大家さんからは、引越費用や賃料に関して、できるだけのことはすると言われていますが、まだ具体的な提示はありません。すぐに立ち退くのは難しい状況ですが、どうしたらよいでしょうか。
更新日:2018年6月28日
直ちに立ち退きの要求に応じる必要はないと思われますが、建物の状態によっては、賃貸人による更新拒絶ないし解約が認められる可能性があります。
- 賃貸人が、期間の定めのある賃貸借契約の更新拒絶や、期間の定めのない賃貸借契約(または、契約上賃貸人に中途解約が認められている契約)の解約をするためには、正当事由が必要です。また、更新拒絶の場合は、期間満了の1年前から6か月前の間に通知をする必要があり、解約の場合は、6か月前に通知をする必要があります。ですから、いずれの場合でも、少なくとも6か月の間は退去する必要はありません。
- 正当事由の存否の判断にあたっては、賃貸人による自己使用の必要性、立退料の支払の申出等の事情を総合的に考慮することになります。安全のための建物の建て替えの必要性も判断の一要素となります。建物の危険性が非常に高いような場合には、立退料の支払がなくても正当事由が認められる場合もありますし、それほど危険性が高くない場合には、相当程度の立退料の提示がなければ正当事由が認められないということになるでしょう。
- 立ち退きに応じるかどうかは、そもそも建物がどの程度危険なのか賃貸人が具体的にどれだけの立退料を出すのかがわからなければ判断できませんので、賃貸人に対し、これらを明らかにするよう求めるべきでしょう。正当事由の有無、具体的な条件の妥当性等については、弁護士等の専門家に相談したほうがよいでしょう。
- なお、賃貸借契約を終了させた上での立ち退きではなく、必要な耐震補強工事を行うために一時的に部屋を空けることを賃貸人から要求された場合は、応じなくてはなりません。工事中の仮住まいの費用は一般的には自己負担となりますが、工事期間中、もともとの部屋の賃料は発生しませんので、賃料を二重に支払うことにはなりません。