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Vol.27 イッセー尾形さん

更新日:2014年1月15日

芝居と、はたらくこと。

テレビや映画、舞台で活躍しながら一人芝居というジャンルを築き上げたイッセー尾形さん。様々な職業を演じてこられた尾形さんに「働く」という事、「働くひとを演じる」という事について伺いました。

「家族をなんとかしなきゃ」無職になって思った。

ー尾形さんは役者になる前は何をされていましたか?

尾形
18歳から色々なアルバイトをしてきましたね。ウェイター、ビル掃除、機内食の皿洗い。自分の事を根っからの演劇青年だと思って演劇学校に通っていたので、アルバイトはあくまでも仮の姿だと思いながら働いてました。20代前半に結婚して子どもが生まれて、そんな中で一週間無職のときがあったんです。そのときにハッと「家族をなんとかしなきゃいけない」って初めて責任感が生まれました。アルバイトなんて俺はいってられない!と思って、社員になったんです。しかも物凄くハードな肉体労働。外壁をパネルで建てる仕事なんですが、ある日頭に鉄パイプが落ちてきたこともあった。それに、雨の日の感電なんて日常茶飯事でしたね。それで、「よーし、今日はおしまい!」なんてやってました。

ーかなりハードですね・・・!役者としてデビューされるまでその仕事をされていたんですか?

尾形
20代後半に、『お笑いスター誕生』で勝ち抜いて、ドラマの仕事がきて・・・となるまでは、役者と肉体労働を半分半分でやっていました。あの頃からネタを作るときは、お医者さんや先生とか、職業別で考えて、それぞれの仕事で感じるであろうストレスや感情を表現していました。仕事っていうのはその人自身という捉え方でしたから、「はたらくこと」というテーマは僕にとっては演じるネタそのもの、とも言えます。

どんな仕事にだって主体性がある。

ー色々な職業の方を演じる中で、共通点などはあるんですか?

尾形
僕はどんな仕事にだって「主体性」があると思ってます。例えば建設現場でライトを振って交通整理をする仕事は「これをやりなさい」って教わった通りの事をするんですが、そこに主体性はないのか?というと、そこにもちゃんと主体性があるんですよね。球際に。

ー球際ですか?

尾形
はい、野球選手がゴロを捕るときのような、自分が決断して行動しなければいけない、絶対に失敗出来ない瞬間の事です。交通整理の仕事だとしたら、あの車を今ストップさせるか、行かせるか、結局自分の意志で判断しなきゃいけない。そこに主体性があるんです。また例えば、どんなに主体性なしに見えるゴマスリ男も、実はそこにこそ主体性を見いだしている。そんな風にネタを創ってきたと思います。

ーなるほど。「主体性がない」と今の時代よく言われますけど、どんな人にだって主体性は元々あるものなんだと意識すると、肯定感に繋がりますよね。

言葉になる前の悩みこそ、話せたらいい。

ーところで、法テラスという機関はご存知でしたか?

尾形
知らなかったです。そもそも、法自体が我々の日常世界から遠いということもありますが。たとえば問題が起きたときって、僕は原因を自分のせいにしたり、自分の人格が劣っているから、と思う事が多いんです。そういう人は悩むほど自分の内に入ってしまうから、法律という外の世界からのアドバイスには、なかなか辿り着かないですよね。今はそういう単純な回路ではないという歳になりまして、問題を解決するためには「法のもとに照らし合わせよう!」というような、法特有の、抽象的で客観的な視点こそ必要だと思うんです。だからもっと法が日常と身近になるような架け橋があればいいのにと思います。

ーもっと気軽に相談出来たりしたらいいですよね?

尾形
そうですね。言葉にならない段階の悩みだって相談できたらと思います。たとえば「パワハラ」や「セクハラ」は既に有名な言葉ですが、「言語化される前の悩み」もたくさんあると思うんです。「いじめ」とまでは言えなくても「ちょっと嫌われてるように感じる」という段階とか。そういった「気のせい」と背中合わせのモヤモヤした悩みこそ話せて「それは法的にはこうですよ」って弁護士さんに言ってもらえたり、コミュニケーション出来る場があったら良いと思うんです。そんな機会を作るのが法テラスだといいなと思いますね。

ー言語化出来ない日常の悩みと、法を繋げる架け橋になれたら良いと心から思います。本日はありがとうございました。

プロフィール

ゲスト:俳優 イッセー尾形さん

俳優
イッセー尾形さん

1952年福岡県生まれ。1971年演出家・森田雄三と演劇活動をはじめる。1981年に「お笑いスター誕生」で金賞を受賞。サラリーマンの悲哀など老若男女の様々なキャラクターを演じ「一人芝居」で独自の地位を築く。映画やドラマ、CMで活躍しながら年間120ステージに出演。また海外公演も積極的に行い、国内外で数々の賞を受賞。高い評価を得ている。現在フリーとして活動中。

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