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Vol.37 為末 大さん

更新日:2016年7月29日

常識からはみ出すことをむしろ歓迎して議論を重ね、新たなルールを作っていく。今の日本に必要なんじゃない?

現役時代、練習に打ち込む姿から「侍ハードラー」の異名を取った為末大さん。
引退後、「スポーツで社会問題を解決する」ことを目指してアスリートのセカンドキャリア支援や企業向けの健康事業など多様な活動をしている為末さんに、スポーツや社会のルールについてうかがいました。

モラルを逸したことが出てきたら、議論して新たなルールを作る

為末大
「僕は身長が170センチメートルとハードル選手としては小さいので、ハードルの高さは身長に合わせるというルールがあったらよかったですね(笑)」

 現役時代に理不尽だと感じたルールがあるかをたずねると、為末さんから冗談めかしてそんな答えが返ってきました。確かに、そのほうが公平かもしれません。しかし、ハードルの高さはルールで決められています。

為末大
「スポーツは一定のルールがあり、そこに参加する全員が守ることを前提として行われる競争です。ひとつのルールの下で争わないと、ゲームは成立しません」

 このルールの内側には暗黙のルール、「モラル」もあります。

為末大
「日本のスポーツはモラルを重んじます。とても大切だけど、一方でモラルの外からやってくる奇策や奇手に負けてしまうこともあります」

 元プロ野球選手の松井秀喜さんは、高校時代の甲子園のある試合で5打席とも敬遠され、チームは試合に負けてしまったことがありました。

為末大
「これはルール上は問題ないけど、モラル上どうなんだと騒動になり、高野連は『正面から勝負してほしかった』とコメントしましたが、様々な考え方がありますよね。僕は、高校球児たちに議論をさせたかったですね」

 為末さんは、モラルや常識から外れたことが出てきたとき、拒絶ではなく歓迎して議論を重ね、新しいルールが決まっていくことが大切だと考えています。これは、一般社会にも当てはまること。モラルの中は円滑だけど、新しい発想が出てこないために社会は萎縮し、グローバルな視点で見ると国は衰退していくと言います。

為末大
「高齢化社会の中で、イノベーションを起こす種を摘んでしまったら、死活問題ですからね。モラルを守るという日本人のいいところは持ちつつも、もう少し柔軟に新しいことをやって、議論し、新たなルールを作っていく必要があると思います」

ずっと悩み続けずに、頭の中に余白を持つことが大切

 日本人には、他人に迷惑をかけたくないという意識も強く働きます。

為末大
「何でも自分で解決しようとする特性は、日本人のすばらしいところ。でも、そのことが自分を追い詰め、さらに大きな問題を引き寄せている気がします。自分ではどうにもならないことは、他の人を頼るのがいいと思います」

 為末さんも、現役時代にスランプで悩み続けたことがあったそうですが、友人と話をしたことで、「スランプだ、スランプだ」と思い込んで、そこから逃げられない自分になっていたことに気付いたのだとか。そんな為末さんの人生の教訓は、「一拍置かずに解決できる問題はない」というもの。

為末大
「悩んでいる最中には解決策は出てこないものです。人に話を聞いてもらったり、専門家に意見を求めてみたり、頭の中で連続している悩みごとに一拍おいて、余白を作って、客観的になる。悩んでいると難しいかもしれませんが、法テラスのような支援機関を上手に活用できたらいいですね」

プロフィール

ゲスト:浜野謙太さん

元プロ陸上競技選手/為末大さん

ためすえ だい/ 1978年生まれ、広島県出身。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年6月現在)であり、スプリント競技における日本人初の世界大会メダリスト。シドニー、アテネ、北京オリンピックに出場。2012年引退。現在は、スポーツや社会、教育などに関する活動を幅広く行っている。

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